『社会的処方』西智弘
読んだ。『社会的処方』
・WHOの健康の定義は「健康とは、完全に、身体、精神、及び社会的によい状態であることを意味し、単に病気ではないとか、虚弱でないということではない」。日本は社会参加の頻度や人との付き合いが先進諸国の中でも低く、この状態が続くと「社会的孤立」は国内において大きな問題となって浮上してくるだろう。
・孤立と孤独は、研究上では区別されている。社会的孤立とは「家族やコミュニティとほとんど接触がないということ」という客観的状態で、孤独は主観的状態を表す「仲間づきあいの欠如あるいは喪失による好ましからず感じをもつこと」という異なる概念である。
・イギリスでは社会的孤立が国家経済に与える影響が年間で約5兆円に上り、2018年に孤独担当大臣のポストが新設された。また、「社会的処方」という、” 患者の非医療的ニーズに目を向けて、地域における多様な活動や文化サークルなどとマッチングさせることにより、患者が自律的に生きていけるよう支援するとともにケアの持続性を高める仕組み ” が注目されている。
・社会的処方は「人々が健康的に過ごすための5つの方法」を助けることが目的である。
①Give:人から施されるだけではなく、自らが支援する側にも立てる
②Connect:ほかの人たちとつながることができる
③Keep Leaning:学び続けるものを持っている
④Be Active:身体的・精神的に活動的である
⑤Take Notice:周囲で起きていることに注目している
・健康というものはそもそも人が幸せに生きていく手段であって、それが目的になるものではない。「身体的・精神的に完全に健康な状態」ではなくても、その人が幸せに生きる方法はある。人が持つデコボコをありのままに生かし、生きがいに注目し幸せを追求していくためのアプローチが社会的処方だ。
・イギリスで社会的処方は医師だけではなく、看護師やソーシャルワーカー・薬剤師などが行うこともあるが、地域にある処方先の情報を彼らが持っているとは限らない。そこで「リンクワーカー」が活躍する。地域によって「コミュニティ ナビゲーター」や「ケアナビゲーター」などとも呼ばれる、社会的処方をしたい医療者からの依頼を受けて患者や家族に面会し、地域活動とマッチングさせるのが彼らの仕事。
・リンクワーカーは地域資源ありきで患者と地域活動をつなげるのではなく、ヒアリングで関係性を作り個々の患者が持つ価値に注目して、患者の地域活動へのモチベーションを高めた上で、最終的につなげている。日本では、子どもへのリンクワーカーである「コミュニティ ユース ワーカー」の育成が進んでいる。
・リンクワーカーらしさは「人と地域に好奇心を持ち続けること」。
リンクワーカーの4つのスキル
①聴く:「おばちゃん力」で入り込む
②経験を宝にする:どんな経験もだれかの「オモロ」になる
③笑わせる:嬉しい・楽しい・ふるえる
④おせっかいは大切に
・リンクワーカーの地域拠点は以下の4つを満たす場所
①Ownership:当事者意識を持っていること
②Accessibility:来やすさ(物理的に、精神的に)
③Customer Service:顧客への尽力、サポート
④Range of products and service:サービスや商品の幅広さ
基本思想はABCD(Asset Based Community Development)。地域を「解決手段のための資源に溢れたエリア」と捉え、住民が主体となって課題に取り組む参加型プロセスのこと。
・まちの中で暮らしている一人ひとりの存在そのものが価値であり宝であり、障碍や病気があってもなくても一人ひとりがやりたい小さなことを気軽に口に出すことができ、それを「いいね!」と応援してくれる人たちがいる環境が大切。孤立の問題は一つの解決策だけでスパッと解決するような単純な問題ではないが、大切なことは「世界を一歩でも先に進めること」だ。
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