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読書メモ『BOOK 日本食文化ナビ - 食で地域を元気にする本 』

読んだ。
『BOOK 日本食文化ナビ - 食で地域を元気にする本 』 農林水産省大臣官房政策課食ビジョン推進室

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【視点別実践ヒント集】

 ■ 視点0 地域食文化の特徴や魅力に気づく
CHECK1 「食文化を活用して地域を活性化しようと考えたきっかけは何ですか?」
CHECK2 「地域で眠っている魅力探しをしてどんな食文化を見つけましたか?」
CHECK3 「見つけた食文化をどのように活性化につなげようと思いましたか?初期段階の企画やアイデアは?」
CHECK4 「活性化につなげるためにどのような地元関係者と気づきや狙いを共有しましたか?」

 ■ 視点1 「食」の循環を見渡す(生産、調達、加工、調理など)
CHECK5 「地域の食材の来歴・由来を知っていますか?」
CHECK6 「地産地消が意識されたり、行われていますか?」
CHECK7 「在来の品種を活用していますか?」
CHECK8 「地域の食材を地域で加工していますか? (地域内での付加価値化・6次産業化)」
CHECK9 「原材料の生産から加工までの過程を見える化する工夫をしていますか?(食の安全・安心。消費者ニーズへの対応)」

 ■ 視点2 地域食文化を創造的にデザインする
CHECK10 「伝統的な地域の食文化に工夫を加え、新たな魅力を創造していますか?」
CHECK11 「地域の自然や景観、環境の価値を見出し、それをどのように引き出そうとしていますか?」
CHECK12 「食にかかわる地域の祭や行事などの価値を見出し、どのように活性化につなげようとしていますか?」

 ■ 視点3 「食」をキーワードに価値創造する ~イーティングデザイン
CHECK13 「日本食文化の特長である『おもてなし』をどのように取り入れていますか?」
CHECK14 「食の伝統的作法や地元の歴史的風習などをどのように生かしていますか?」
CHECK15 「『食器』やその他の伝統工芸品と『食べ物』をどのように連携させていますか?」
CHECK16 「食の『空間』や『しつらい』をどのように工夫し、活用していますか?」

 ■ 視点4 国内外のマーケットへ発信しブランド力を高める
CHECK17 「国内の他地域(又は消費地・消費者)に対して情報発信をするとともに、評価を受けるための工夫をしていますか?」
CHECK18 「観光業界や流通業界等と連携するなど、地域の食文化を日本全国に広げるための工夫をしていますか?」
CHECK19 「海外に対する情報発信や海外拠点の整備など、地域の食文化を海外に広げるための工夫をしていますか?」
CHECK20 「外国人観光客や外国人の評価を受けるために工夫をしていますか?」

 ■ 視点5 地域全体で育み、次の世代にも伝えるための仕組みづくりをする
CHECK21 「地域に食文化が根付き、それが誇りとなるよう、気づいた食文化の価値を地域内でどのように共有していますか?」
CHECK22 「食文化を通じて地域や家族の絆を深める工夫はありますか?」
CHECK23 「学校などの教育現場や地元店舗(レストラン・直売所等)と連携し、食文化の継承を目的とした仕組みがありますか?」
CHECK24 「食文化の継承に向けて、伝える側の人を育てる仕組みはありますか?」
CHECK25 「食文化の継承に向けて、受け継ぐ側の人を育てる(次世代の舌づくり)仕組みはありますか?」
CHECK26_ 「『食文化の継承』を人づくりの一環と捉え、食育に生かしていますか?」

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【座談会】

「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録された。80億人が生きる宇宙船地球号の食のOSとして引き出せるものが日本食にはたくさんあり、重要なのはその宝を、実は地域の伝統食が持っていること。一方で、私たちの食生活から日本食のOSというのが消えつつある。いまここで私たちが日本人の食生活を再構築していくという作業をしない限り、20年後30年後の日本人と日本社会のサステナビリティはさらに大きく壊れていくことになるのではないかという危惧がある。
この「日本食文化ナビ」とはそういう危機意識も踏まえながら、もう一度、地域の食生活を再構築していこう、その宝を再発見しそれを未来、次世代につなげていく大きなムーブメントを起こしていく目的で作られた。

・和食が持つ特徴
①健康に良い。
②コミュニケーション。
③高い加工技術力と、それによって生じる大衆性。
④地域食文化が豊かで多様化あり、産業が発達している。
⑤自然環境の豊かさ。
⑥文化継承の歴史。
⑦新しい食材や調理法を取り込む力の高さ。

根幹には、料理は米に合わせ、きちんと出汁をとり、そして大皿料理というよりは細かく分け、季節の食材を活かし、というようにいくつかの基本OSがある。また、元来日本人は、外から入ってきた目新しいものが好き。しかしそれを異分子として眺めるままにせず、自分たち流に取り込み、絶妙に作り変えてしまう力を持っている。
逆に言うと、慎重さや保守性、頑固に伝統を守るといった思想が、食に関しては意外と弱いのではないか。でグローバル化が進み、食が工場で生産され、化学合成品が次々と生まれてくる時代にあっては、異分子を受け入れて巧みに育て直す姿勢が、逆に風土とマッチしていた文化をあっという間に崩壊させてしまう因子になってしまっている

四季に恵まれていて、いい風土だとか、これが日本食を育んでいるという反面、実は日本の風土、国土は扱いづらい荒ぶる自然だった。地形は急峻過ぎて、降る雨は多いけれども洪水と渇水を繰り返す。そこをうまく灌漑し水田を作り、水の豊かな国に変えてきたのは人の力ですし、決して豊かとは言えない食材から旨味を引き出して豊かな食へと価値を引き出してきたのも人の力です。地元にいい産品がある、だからこれをただ出そうというだけで終わるのは日本食ではないというメッセージにもつながってく。
器の産業があり、昔のちゃぶ台や食の場にふさわしいいろんな家具を作る産業、葉っぱを拾って飾る産業もある。風土に合わせてしつらえをするところも含めて文化になり、土地土地の自然条件が違うのでしつらえが微妙に違うからこれが非常に味わい深い。組み合わせで考えることで価値が引き出せる。

今の地域の特産品とか売り物になっているような食材あるいは料理文化というのは大体江戸期に、なにもないところから創出したものが多い。だから、その当時ではクリエイティビティの塊であった。食べる側のリテラシーも同じように日本の食文化を支えてきた。作り手ばかりでなくて、参加性ということでいえば食べる側と作る側というのはそれほど分離していない。その辺は現代でどうかというと、危惧される部分がある。

自由競争の中でもこの一線は守ったほうがいいですよ、と示すことに意味がある。むしろ、在来野菜を高く売っていく、付加価値化するということをもっと真面目に追求すべき。安全・安心は、不安と危険の裏返しなのですが、根本はつながりが断たれたことにある。食品偽装事件などはその象徴の一端。生産と消費の断絶がただのモノと金の流れだけになって、両者だけでなく社会そのものを貧しく、不幸にさせている。
でも「私は私の食=健康を守る」ことから始めることはできる。それは作り手たちとつながること。それこそが最初の一歩となる。

人気のレシピだからといって、全国どの場所でも同じ料理の手法でいいのかといったらそうではない。地元に行ってでないと食べられない一番おいしいものを残しておく文化も大切にしなければいけない。
忙しいと大事なものが他人任せになる。そしてお金でしか得られなくなってしまう。私たちはいつの間にか生きる力をどっかに置いてきてしまった。里山にある金銭換算できないものにも価値がある。地域の食文化を担う担い手として、福祉施設と学校は重要。調理場で若い人とおばあちゃんが一緒に働いていれば、伝統の味を若者が受け継ぐ場にもなる。

食を通じての地域おこしの何が成功の基準になるのか?風土に根ざした、必然性のある地域おこしであることが大事。外来のものを持ってきてもいいが、「あまりに合ったので、100年後に来ても続いていた」というのが、あるべきかたち。核となる食材だの人材だの、屋台骨となるものはアウトソーシングしない、ということも大事。生産する人間、売る人間、食べる人間、それぞれに長期的にいいものが最終的には大切になる。
その時間と手間、経済の二重苦をいかに乗り越えるかということが課題。文化でも、地域おこしでも、結局のところは個人の選択の集合が結果を生む。地域食文化を守ることに明らかな意味があると多くの個人が思うこと。その力が集って文化になる。都会に売り込むためでなく、都会の人を呼び込む源泉として見つめ直して編集してみる。それぞれに地域の特性を活かしたオンリーワンの美しい村づくり競争が生まれたら、若者たちは必ずやってくる。

地域おこしのゴールを、何を基準にするかと言うと、それをやることでこの地域に自分の子どもが結婚した後で子育てをしたいと思ってくれるか、ここにUターンやIターンで次世代の子育て家族がやってくるか。
地域の景観も食と決して切り離せない。。日本の景観や風土は米を軸とした食と農が作ってきた景観でもある。コメ作りを基本にして水も調律してきたし、里山も調律してきたし、やっぱり食というのは国土も変えうる。環境、景観と食をはセットで考えなければならない。

世界を対象にした広い視野で自分たちの小さな地域の食文化を考えていく。視点とシェアの二つが、その人の中で新しく花開くといいなと思っている。、地域の食文化を再発見し発展させることの先にこそ、本当に息の長い地域振興がある。世界からの参加も拒まず、しかし自分ごとでやっていきたい。


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