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#クリスマスアドベントカレンダーをつくろう   小さな鈴の音   

 寒い。 
 冬の夜の冷たい風の中を一人で歩いている。

 頬も耳も冷え切って痛みを感じている。
 きっと真っ赤に染まっているに違いない。

 それでも心が温かいのはポケットの中にある小さな缶のおかげ。

 薄い楕円の小さな缶にちっちゃな粒のミント味のドロップがぎっしりと詰まっていて確かな重みでここにある。

 大切な人からさっきもらったプレゼント。
 さりげなく渡された可愛らしくてささやかなもの。
 嬉しかった。
 自分でも驚いてしまうほど私はこの小さな缶に救われて満たされている。

 
 きのう、不意にLINEがきた。
 アプリを開いて驚いた。
 
 今まで一度も向こうから連絡をくれなかった人から「明日会おう」っていうメッセージが届けられていたから。

 どんな顔で会えばいいのかわからなくて緊張してしまった。
 心が揺れて止まらなくなってしまった。

 服を選ぶ時も、迷ってなかなか決められなくて、結局いつもとそう変わらない服を選んで着てきてしまった。



 ポケットの中の小さな缶。
 その中のミント。
 爽やかでささやかな彼からの贈り物。


 一つだけ口に含んでみる。

 

 つめたい風の中でひんやりとしたミントの感覚が口の中にひろがっていくのを心から楽しんで今の時間を味わっている。

 頬の上を北風が吹き抜けて火照った心をさましていく。


 12月24日。
 サンタクロースがやって来る夜。


 真っ赤な服を着て白いひげを生やしているふっくらとした体格のちょっと陽気なおじいさん。

 おじいさんなのに一晩で世界中を回るなんて、ありえないって思う。
 だけど小さな子どもたちは心待ちにしている。
 一年に一度だけやってくるその人を。


 『サンタさんが来てくれるよ』

 それを信じて良い子でいる。
 早い時間にベッドに入ってプレゼントを待っている。



  鈴の音が聞こえた気がした。
  遠くて高い大きな空に。


  見上げると小さな星が夜空でそっと光っている。


  まわりの家々の灯りが煌々としているからこんな時間も外を歩ける。
  だから星たちは夜の空の中でおとなしくそれを見下ろしている。


 小さな光に見えてる星も本当は大きな光。
 沢山の何かが燃えて爆発をして長い時間をかけてここまでささやかな光を届けて私に見せている。



 ありがとう。

 誰にともなくことばが零れる。


 生きている。
 そう実感できる今、自然に感謝の思いが溢れて湧き出して止まらない。


 涙が小さくにじんで零れ落ちた。


 ありがとう。
 ありがとう。
 ありがとう。
 ありがとう。



 小さな光。
 小さな私。


 ポケットの中にあるミントの入った小さな缶は私の大切な光。
 小さな小さなお守りなの。


 そのお守りに助けられている今の自分にちょっとだけ微笑みを。
 
 ありがとうのことばをそっと届けたい。



 鈴の音は、今どこに?


 冬の星座が並んだ空はどこまでも広がっていて街も人も何もかもを包み込んでいる。


 この空のどこかで今トナカイの引くそりに乗ってサンタクロースが忙しく走り回っているんだと想像したら、なんだか愉快になってしまって困ってしまった。


 冬のこと少しだけ好きになってしまいそう。
 
 苦手だったんだけどな。





 百瀬七海さん、皆さん、ありがとうございます。
 素敵な12月をお過ごしください。



 

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ありがとうございます。 嬉しいです。 みなさまにもいいことがたくさんたくさんありますように。