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記憶

銀色の細い魚が指の間をすり抜けてどこかに行ってしまった。

するりと抜けていった時に触れた小さな鱗の感触がまだ指先に残っている。

冷たいからだ。
冷たい水の中を泳いでどこに向かって行ってしまうの?

水は青く、空は高く、風はすごい速度でなにもかもをどこか遠くに運んでいってしまう。

魚はきっとこの先も泳ぎ続けてどこかに行って自分自身を生きていくんだ。

まわりの何にもとらわれずそのままで、そのままに。

魚の鱗に触れた指。
言葉にできない感触がどうしても消えなくて掌を見つめている。

その記憶がいつまで残り、いつまで消えないでいるのか。
そんなことわからない。

けれども確かにさらりと触れた。
この指で。
指先で。

魚の行方はわからないど指先の記憶は残る。

銀色の魚の鱗。
その感触が残る指先。

冷たい水の中で、
青い空の下で、
風に吹かれながら。

魚の記憶。
鱗の手触り。

さらりとすり抜けていった細身の魚。

魚の行方は誰も知らない。

ありがとうございます。 嬉しいです。 みなさまにもいいことがたくさんたくさんありますように。