夏の約束 第十章 愛のメロディー
愛のメロディー
その夜の帰り道、私たちは静かに手をつないで歩いていた。胸の奥で高鳴る鼓動が抑えきれず、えりの手のぬくもりがその鼓動をさらに強める。心の中で様々な感情が渦巻いていた。えりとの未来への期待、不安、そして今この瞬間の幸せ。
公園の出口に差し掛かった時、私は立ち止まり、えりの方を見つめた。えりも立ち止まり、私の目をじっと見つめ返した。私たちの間には言葉が要らなかった。互いの心が通じ合っているのを感じた。
ゆっくりとえりに近づき、彼女の顔が近づくのを感じながら、私はその瞬間に全てを委ねた。心の中で湧き上がるドキドキ感と期待感。えりも同じように感じているのだろうか。
「えり…」小さな声で彼女の名前を呼びながら、私はそっと唇を重ねた。えりの唇は柔らかく、暖かかった。その瞬間、全ての不安が消え去り、ただ純粋な愛と喜びだけが私たちを包み込んでいた。
キスの余韻に浸りながら、私たちは再び手をつないで歩き出した。えりの笑顔は、夕暮れの中で一層輝いて見えた。その笑顔を見て、私は確信した。この瞬間、この感情、この愛は永遠に続くものだと。
約束の果てに
しかし、その約束が果たされることはなかった。運命のいたずらか、私たちの道はやがて別々の方向へと進んでいった。その別れは、渋谷駅の東横線ホームで訪れた。夕暮れ時、駅の雑踏の中で、私たちは最後の時を迎えた。
「えり、また会えるよね。」私の声は震えていた。
「そうだね。でも、未来はどうなるかわからないから、今この瞬間を大切にしましょう。」えりは微笑みながらそう言ったが、その目には涙が浮かんでいた。
終電が近づき、駅の雑踏が少しずつ静まっていく中で、私たちは最後のキスを交わした。えりの唇の温もりが心に深く刻まれ、その瞬間が永遠に続いて欲しいと願った。しかし、電車が到着すると、えりは静かに私の手を離し、乗り込んでいった。
「さよなら、えり。」心の中でつぶやきながら、私はその背中を見送った。
えりとの約束は、遠い記憶の中で色褪せることなく残り続けた。あの時、えりと交わした夏の約束は、私にとって今もなお特別な意味を持っている。どれだけ時間が経っても、あの時の気持ちや景色、そしてえりの笑顔は私の心の中で生き続けている。
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