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日本語学校で効果実証済み!「ひらがなあたっく」「カタカナアタック」のご紹介

子どもの言語能力を伸ばす楽しい国語の授業を実践して50年、今も現役教員の卯月啓子です。

私のもう一つの仕事は、日本語学校で外国人に日本語指導をしています。年目になります。ヴェトナム、モンゴル、中国、フィリピン、ウズベキスタン、中国、タイなどの人たちに「生活の中ですぐ役立つ日本語」を教えて6年目になりました。

この記事では、日本語学校で効果のあった「ひらがなあたっく」「カタカナアタック」という学習法をご紹介します。(★最下部に、PDFファイルを有料公開しています。記事を読んで使ってみたいと思われた方は、ぜひご検討ください)

ひらがな・カタカナの読み書きの「速さ」の大切さ

日本語学校では、会話や文法習得と並行して、まず、ひらがなの読み書きを教えます。次に、カタカナの読み書きに進みます。日本語学校でもそんなに時間はかけられませんから10時間程度で終了してしまいます。次には漢字指導が始まり、ひらがなカタカナに戻ることはほとんどありません。

それで身につく学生はよいのですが、そうでない学生もたくさんいます。ひらがな・カタカナが一見できているように見えても、「がんばって時間をかけて読み書きしている」というレベルの生徒が多いのです。そういう学生が多くいるクラスでは、文型指導や作文の授業がはかどりません。

根本的な「ひらがな・カタカナの読み書き速度」が一定以上でないと、授業を理解するのに生徒が大変苦労して、脱落していってしまうのです。この感覚は、ひらがなカタカナがあまりにも当然にできる日本人教師にとって、共感しにくいため、見落としている人が少なくないように私は感じました。

そんな時に、同僚の日本語学校の教師が編み出したのが「ひらがなタイムアタック」「カタカナタイムアタック」です。これは1枚の用紙にひらがな五十音、裏にカタカナ五十音が書けるような表が書いてありところどころに文字が書いてあるものです。時間を区切って書かせ、終わったら文字を直しておしまいです。最初は裏表を書くのに20分間かかっていた学生たちが、毎日4か月続けたらほとんど全員が1分かからずに書けるようになりました。(よく考えると、ひらがなカタカナ50音を書くのに20分もかかる相手に、漢字や作文の指導をしていた、という恐ろしい状態だったことがわかります)

字形や文字の間違いは時々ありますが、それでもひらがな、カタカナはほとんど全員が習得してしまいました。教師の負担は用紙を印刷して毎日やらせることだけです。直すのも今ではほとんどありませんので、時間はそんなにかかりません。

ひらがな、カタカナの習得率が上がってくるとともに、なんと、学習そのものの理解が速くなり、音読ができるようになって、その聞き取りも書けるようになり、漢字の習得率も少しずつ上がってきたのです。

日本の小学校の、外国人転入生向けへの活用

日本の小学校にもたくさんの外国人の子どもが入ってきています。その子たちの日本語習得状況もバラバラで、保護者も千差万別です。なかなか日本語習得の段階的カリキュラムを作ることは難しいのですが、少なくともその学級担任の努力に任せるのではなくなってほしいと思います。

ある先生は、パキスタン人の男の子が6年に転入してきて、どのように指導していいのか本当に困ったという話をしてくれました。会話も辞書を引いたり翻訳アプリを使ったりして意思疎通を図りましたが、日本語の読み書きはどうやって教えたらよいか全くお手上げ状態だったとのことです。日本語指導の教師が週1いらしてくれたが、毎日の学習で実際に困っている子に教える手立てがほしいとつくづく嘆いていました。

学年があがればあがるほど、目先の授業の指導に目がいき、その子に何を教えたらよいかというカリキュラムが学校全体で共有されていないことが問題です。

そんな時に、日本語学校のカリキュラムを応用すればいいのだと思います。日本に来た外国人の子どもたちが全く日本語の読み書きができない状態ならば、どの学年でも、ひらがな・カタカナの読み書き学習をするとよいです。学年にかかわらず、読み書きの速度は何よりもまず習得すべき地盤のようなものです。

私は日本語学校で即効的に学習できた「ひらがなタイムアタック」「カタカナタイムアタック」の考え方を取り入れて、小学生の子がさらにわかりやすく簡単にできるようにした「ひらがなあたっく」「カタカナアタック」の表を作りました。日本語の習得が不十分な外国人の転入生向けとして想定していますが、ひらがな・カタカナが不得意な日本人の子にも同様に効果はあると思います。


1.「ひらがなあたっく」

五十音表です。1マスが4つの部屋に分かれているマス目にします。これは、どこに書いたらよいか目安がつきやすいマス目です。国語でしたら縦書きですが、外国人にとっては縦書き文化はありません。それよりも何よりも緊急に読み書きできる方が大切なのであえて横書きにします。こうすることによって、外国人の生徒は慣れている横方向の目の動きで学習ができます。

行と列にはローマ字を書きます。例えば、か行はk、列にはa、i、u、e、oと書いておきます。「か」は「k」と「a」のようにすると、英語圏の外国人や英語が分かる外国人には、発音が理解できます。

用紙はA4判で作りましたが、慣れてくるにつれてだんだん用紙を小さくしていきます。その方が小さく書くこともできて、授業についてくることもできるようになります。

用紙の数は、子どもの様子によって増やしたり減らしたりしてください。この段階ができていないと思われたときはその枚数を増やすなどしてください。

具体的に示します。

「ひらがなあたっく①なぞりがき」

実際に取り組んだプリント1

行と列のローマ字を使って「読み」を教えます。それからなぞりがきをさせます。このときは先生は一字一字書き順を教えてから書かせます。
先生は最初だけ、時間をかけて読み方、書き方を教えますが、そのあとは子ども自身で何度も練習させることができます。何枚も同じ用紙をいんさつしておけばよいのです。1時間に3枚はしてもよいです。

「ひらがなあたっく②うつしがき+かきじゅん」

実際に取り組んだプリント2

始筆の場所に書く順番を数字で示してあります。なぞりがきのあとは数字の場所をもとにひらがなを書いていきます。

「ひらがなあたっく③うつしがき」

実際に取り組んだプリント3

4つの部屋に分かれたマス目に書かせます。ひらがなはマスごとに小さく書いておきます。それを見て書くことができます。

「ひらがなあたっく④かきじゅん」

実際に取り組んだプリント4

書く順が数字で示されています。書き順だけではなく始筆が示されていることで字形も整います。

「ひらがなあたっく⑤じぶんでかく」

実際に取り組んだプリント5

この練習に入るころには、何も示していなくても自分できちんと書くことができるようになっていますので、用紙も小さくしていき、小さい字が書けるようにしていきましょう。文字の大小がバランスよく学べます。小さい文字が書けなければノートをとるときに役に立ちません。


2.「カタカナアタック」

「ひらがなあたっく」と同じようにカタカナの表も作ります。

カタカナアタックに取り組んでいる様子

カタカナができると、漢字はできてきます。漢字のパーツにはカタカナが入っているので、漢字習得に有効です。例えば、「にんべん」はカタカナの「イ」です。「友」はカタカナの「ナ」と「ヌ」でできています。
ですから、カタカナの習得は漢字習得の前段階としてとても重要なのです。


終わりに

外国人の子どものための日本語習得の方法ですが、学習についてこられない子にも役立った例があります。ひらがな、カタカナの習得がおぼつかないうちに次から次へと勉強が進んでしまい、その後の勉強に追いついてこられなかったということです。文字の習得が十分でなかった子には特別プログラムとして、この学習方法が役立ちます。


【有料】ひらがなあたっく・カタカナアタックPDFデータ

今回、「ひらがなあたっく」「カタカナアタック」のPDFデータを、noteの有料記事として公開します。同じような状況でお困りの方は、ぜひ使ってみてください。★もし使ってみて役に立った・効果があったという方はコメントいただけると大変励みになりますので、よろしくお願いいたします。

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