見出し画像

【Mリーグ】役満の価値を考える

こんばんは。
場末雀荘出身の田ノ倉です。

今回はとくにMリーグにおける「役満」の話です。

なぜこのタイミングで役満の話なんてするのか。

これは本当になんとなくですね、
強いて言うなら、先週のMリーグで松本プロがダマ出アガり倍満のツモスーをダマテンにして、
魚谷プロからダマ倍を直撃しているのを見て、です。

「伝説効率」から考える

「伝説効率」という言葉がありますね。
麻雀業界を追っている方ならご存知かと思いますので、細かい説明は省きます。

伝説効率を考慮する場合、特にMリーグのような大きな舞台において、
役満の価値はケタ違いに上昇します。
ネット麻雀や一般的なフリー雀荘、その他大会やセット打ち等でも、伝説効率が考慮される場合、
わりとほとんどの場合で役満を狙うことがその他の価値を上回ります。

逆に収支重視のフリーガチ勢やマンション麻雀なんかでは、
伝説効率なんてクソ喰らえ、って感じです。

レア役による伝説効率

出現率が低いとされる役満の中でもさらに出現率が低いレア役を狙える場合、和了できると伝説になるので伝説効率的に期待値が爆上がりします。
Mリーグの舞台で和了できた日には、ヤフーニュースに載る可能性すらあります。

ここで言うレア役というと、
・天和(狙う狙わないの問題ではないけど)
・地和
・四槓子
・緑一色
・九蓮宝燈
とかでしょうか。
小四喜とか大四喜、字一色や清老頭なんかは、伝説効率的には微妙です。
四暗刻や国士無双、大三元なんかは問題外という感じ。

上記のレア役を狙える場合は、それを狙ったほうが伝説効率的には期待値が高い、ということになります。

例えば北家で配牌時点でテンパイしており、
ピンフ赤赤の両面待ち。
ここに親からいきなり和了牌が打たれる。

仮に人和を8翻役だとすると、
それで三倍満和了となりますが、伝説効率的には見逃して地和を狙うほうが期待値が高い、というわけです。
それくらい役満にかかる伝説効率というのは強いのです。

「言ってる意味がまったくわからねえぜ」
という人にはとことん意味不明な話かもしれませんが、
そういうものなのです。
ちなみにMリーグに人和はありません。
例としてどうなんでしょう?とはちょっと思います。

シチュエーション的な伝説効率

レア役をアガるという場合以外だと、
シチュエーション的なものからも伝説効率が考慮されます。

・箱を割っているオーラスに、スッタン直撃でトップ逆転する
・同じ役満を同じ半荘で二回和了する
・条件戦のオーラスを役満和了によって条件クリアする

上記のような限定的なシチュエーションにおいて、
伝説効率的に役満を狙うことは期待値フルマックスにまで上昇します。

特にMリーグや麻雀最強戦などの大きな舞台でこれを成し遂げると、
しばらく擦り続けてもらえるということもあり、
さらに期待値超絶ウルトラフルマックスとなります。

麻雀最強戦2023で役満条件の二人が役満テンパイ、
さらに鈴木たろうプロはきっちりアガり切って見せるという劇画のような結末を迎えました。
これは伝説効率の観点から見ると最高すぎる結果となったわけですが、
なぜか捲られた村上プロのほうがスポットを浴びるというまさかの結果となりました。
伝説効率とはいえ過信は禁物です。

というか条件戦のオーラスが役満条件なら役満を狙うしかねーじゃん。伝説効率もクソもねーだろ、
そう思う方もいると思います。
ただ役満条件となった雀士の中には、がむしゃらに役満を狙わず、配牌オリを決め込んで場を乱さないように打つことを選択する人もいるのです。
そういう雀士を支持する人もいるので、ファンを持つプロとして間違った選択とは思いません。
ただ伝説効率を考えるなら、役満狙い一択と。
そういう話です。

「チーム戦である」という問題

いつだったか、Mリーグの舞台で魚谷プロがそこそこの手から九蓮宝燈狙いでテンパイ外しをしたとかで、
賛否意見が巻き起こった事例がありました。

狙う役満が九蓮宝燈なら、伝説効率的に考えるなら九蓮宝燈狙い一択なのですが、
そもそも役満という打点が必要な状況でなかったり、
あとで説明しますが役満で得られる点数自体はMリーグのルール上、
他の舞台より価値が低いこと、
さらに「Mリーグはチーム戦である」ということが問題としてあがってきました。

伝説効率を追って仮に達成した際にもたらされるメリットの多くは、基本的にその半荘を打っている人のみにかかってくるものです。
まあ、もし万が一Mリーグの最終戦、優勝を決める場面で、
倍満条件の魚谷プロが九蓮宝燈をアガって逆転したら、
「セガサミーフェニックスは九蓮宝燈で優勝した」
となり、チーム全体に利益がもたらされるかもしれません。
が、そういうケースは非常に限定的です。

となると、多くの場合、伝説効率を重視する際は、
いったんチームのことは置いておいて、自分のことを最優先で考える、
ということになってしまうわけです。

この感じが、あくまでもチームというものを大事にし続けるMリーグという舞台において、
受け入れられにくいのではないかと、肌感として、そういう気がします。

これは、下記にて説明するように、Mリーグのルールだと、他のルールと比較して、役満の価値が相対的に低く見積もられることにも起因しています。

Mリーグのルールから考える


いきなりですが、東1局に北家が12000点を南家から出和了したという想定で、
東2局に南家が四暗刻をツモったとします。

持ち点は、
東家:△3000点
南家:57,000点
西家:29,000点
北家:17,000点
となります。

雀魂や天鳳なら

東家がマイナスになるので、トビ終了ということで、
この時点で半荘終了。

一般的なフリー雀荘なら

東家がマイナスになるので、トビ終了。
もしくは、南家が57,000点となり、コールドゲームで終了。
さらに役満ご祝儀というものがあるので、素点換算で合計5万点以上の収入となるケースが多い。おそらく効用は最高。
※一般的にフリー雀荘で25,000点持ちスタートの四人打ちの場合、誰かが持ち点〇〇点を超えたらその時点でゲーム終了、
という、店側がゲームの回転率を上げるためだけのふざけたルールが浸透してます。その基準点は、だいたい55,000点か60,000点です。

最強戦予選なら

トビ終了もコールドゲームもないので普通に続行しますが、
そもそも2着までが次に進める形式なので、役満和了をした人を除いた3名での戦いになりやすい。
また、赤牌もないので打点がMリーグに比べて低く、捲られにくい。

Mリーグルールなら

トビ終了もコールドゲームもないので普通に続行します。
赤牌が3枚あるので打点が高く、2着目が29,000点持ちということを考えると、トップ安泰とは言えない状況。
トップの価値が異常に高いので、まだまだ加点が必要。

「コールドゲーム」の有無が特に重要

このように見ていくと、Mリーグにおいて役満をアガるというのは、
単純に点棒状況的な着順の期待値を考えると、
他のルールに比べて価値が下がるように見えます。

これは、とくに「トビ終了」や「◯◯点到達終了」といったような「コールドゲーム」が存在するかどうかというのがかなり大きく関わってきます。

一般的なフリー雀荘でしか打たない人は、
感覚的には「役満アガればトップ確定」くらいの認識があると思います。
その原因は、だいたい役満を直撃すれば誰かがトンで終了しますし、
直撃でなくても持ち点が多くなり、規定の点数を満たすことが多くなることで、
コールドゲームとなるケースが多いからです。

勝負の世界では「圧倒的有利」と「確定した勝利」の間には厚すぎる壁があります。
コールドゲームが存在するルールだと役満和了時点で確定した勝利を得る可能性がかなり高まるので、必然的に役満の価値が高まります。

マンガン5回分よりも価値がある場合も

「1半荘でマンガンを5回必ず和了れる権利」と、
「1半荘で役満を1回必ず和了れる権利」
があったとします。
純粋な点数としてはマンガン5回分のほうが大きいですが、
コールドゲームがあるルールにおいては、一撃で「勝ち」を確定させる可能性のある役満を1回和了れるほうの価値が重くなりそうです。
それほど、「有利である」ことと「勝ち」には差があります。
逆に言うと、コールドゲームがないルールであれば、
評価は逆になります。純粋にもらえる素点が多いほうが偉い。

Mリーグルールにおける役満の価値まとめ

コールドゲームが一切ないことや、
赤牌が3枚あり打点が高いこと、
さらにトップの恩恵が高いオカウマ設定になっていることで、
・役満をアガってもトップ確定とならない
・高打点が出やすく捲られやすい
・トップを狙える状況だと3着リスクを負ってでもトップを狙いたくなるポイント設定になっている
といった条件が揃うわけです。

ですので、Mリーグルールにおける役満というのは、
・トップ確定ではなく有利に進められるだけ
・点棒の優位性も他のルールに比べて弱い
ということになります。

60%くらいの確率で和了れるマンガンと、5%くらいの確率で和了れそうな役満であれば、
Mリーグルールの場ではマンガンを狙うのが良いわけです。

セミファイナルやファイナル等の特殊な条件戦を除き、
単純に素点期待値で選択するほうが偉く、
役満というものに特別な意味は見出しづらいルール設定となっています。

今後の「擦られ度」から考える

ルール上はあまり価値がないと思われるとはいえ、
やはり麻雀の中で役満というのは特別な存在です。

そのため、Mリーグというコンテンツ内において、
役満絡みの事案は今後の「擦られ度」の面で期待値が高まります。
伝説効率とは違って、これはあくまでも「擦られ」です。

今や超人気実況者となった日吉プロは間違いなく「擦りグセ」があるので、
日吉プロにハマれば半永久的と思われるほど擦ってもらえるわけで、
それは間違いなくそのプロの知名度上昇に寄与するでしょう。
ファンとの交流においても、「お決まりのネタ」があるとファンとしては取っ付きやすい印象になります。

日吉プロの擦りグセを「しつこい」と嫌う人もいますが、
どんな形であれ話の「とっかかり」となるものを各人に付与しているようなものなので、
今の形で活動をしているMリーガーの方々にとっては、色々な意味でメリットをもたらすと思いますので、個人的にはアリです。

「西」単騎の例に見る擦られ

役満絡みの擦られ王といえば、西単騎のスッタンに放銃した内川プロでしょう。

正直四暗刻単騎というのは役満の中ではそこまで珍しいものでもないですし、特別ドラマチックな展開で発生した役満というわけでもありません。

ただ、色々な要素が重なって、しまいにはネタ化し、
その後も擦られ続けることで、
「西」=内川プロ
みたいな構図が浸透してしまいました。

この「持ちネタ」ができたことで一気に「絡みやすい」存在となり、
メディア露出においても、ファンとの交流においても、
「西」の存在で一気にプラスに働いたと言われている、かもしれない。

ちなみにこれ役満アガった人でなくて放銃した人の例ですけど。

「擦られ度」はとても運が絡む

いくら擦りグセがある日吉プロとはいえ、何でもかんでも擦っていくわけにはいきません。

例えば2022-23シーズンで二階堂亜樹プロが魚谷プロからスッタンをアガりました。
このとき、二階堂亜樹プロの和了牌は山にはなく、
暗刻で持っていた9萬を魚谷プロが落としたことで和了が生まれました。

これは、よく日吉プロが実況で繰り広げる
「山に和了牌が残っていなくても和了れることがあるのが麻雀の面白いところだ」
論の具体例として擦り続けてもいい
ものではあるのですが、
たまに挙げることはあるものの、「擦っている」という感じではありません。

このスッタン放銃当時、セガサミーフェニックスはチームとして、特に魚谷プロが不調に見舞われており、
そんな中でやっと快調にアガリを重ねてトップ目となっていたときにこの悲劇が起こりました。
フェニックスサポーターからするとそれこそ悪夢のような、
天国から地獄へ突き落とされるような和了だったはずです。

このへんの空気感はもちろん日吉プロも感じられていると考えられ、
これを必要以上に擦るようなことはしません。

つまり、一定の「擦られ条件」を満たしていたとしても、
他チームの状況等、さらに他の要因によって、
せっかくの擦られ期待値がゼロに近くなってしまうことがよくあるのです。

特に役満放銃ということになると、流れ的にもツキを失っているチームが担うことになるケースが多くなると考えられ、
そんな和了が擦られ続ける可能性はどのくらいあるのか?
ということになります。

結論:期待値はイマイチ

Mリーグという今や麻雀業界で最も大きい舞台といっていいところで、
今後の擦られネタを作れるというのは非常に価値のあることです。

しかし、ただでさえ運要素が極めて強い役満成就に加え、
特定のおもしろポイントを有し、
さらにマイナス感情も抱かれにくい状況
という要素を満たしていないと長きに渡る「擦られ事案」とはなりません。

これはもうかなり期待値としては低く、
たまたま役満をアガれた、おまけで「擦られネタ」もついてきた。

このくらいの感覚で留めておくべきなのかもしれません。
わざわざ擦られを期待しての役満狙い全ツは暴牌と言えそうです。

結局のところどうなのか?

麻雀の華であり、特別な存在である役満。
現時点で日本最大のコンテンツであるMリーグにおいて、
役満を成就させるというのは単に満貫4回分の点数を得る以上のものが得られるでしょう。
伝説効率で考えると打点マックスといえます。

ただし、伝説効率を求めること自体が個人主義の考え方となり、
「チーム戦」であることを強く打ち出すMリーグとは相性が悪いのが事実です。
個人を重視してもよいとされるのは、年間MVPを決める際など、
特定のストーリーに基づく場合に限定されます。

また、コールドゲームが存在しないため役満をアガってもトップが確定せず、
赤牌3枚入りという平均打点の高さやトップの順位点が極めて大きい、
といったMリーグのルールという観点から見ても、
他のルールと比較して役満和了の価値は相対的に低く見積もられます。


プロのガチ対局であるという触れ込みでありつつも、
エンタメでもあるMリーグ。
やはり役満チャンスが舞い込めば、実況も熱が入ります。
盛り上げます。

ただMリーグのルール等を深く考えていく中で、
あの熱い実況、盛り上がりに見合うほどの価値が役満和了にあるのか。
かなり微妙なところです。


「ああ!四暗刻狙わない!あっさり見切った!」
みたいなこともままありますが、
実際問題あがりにくい役満を狙うよりも、
満貫4回和了を狙う、
というほうが現実的で、「チームのためになる」選択なのかもしれません。


ちなみに個人的には、例の件は九蓮宝燈狙いを支持します。
だって四暗刻でも大三元でもなくて九蓮宝燈だし。
メンチンになっちゃって意味不明のわけわからん多面待ちになってしまうも、ノータイムで打牌、迷わずメンチンツモアガリ。さすがプロ。
みたいな別ルートも期待して。

以上。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?