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見えない言葉

「あんただったらさ、死にたい、って言う人に何て声かける?」
「…久々に会った親友と盛り上がる議題ではなくない?」
「まぁまぁ、こんなん浅ーい仲の人とは話題にすらできないじゃん。あたしとあんたの仲なんだし」
「んーまぁそうだね…」

彼女が突拍子もないことを言い出したり行動に移すのは今に始まったことではないが、こういう類いの質問は今までなかったので少し驚いた。


「一緒にいてくれてありがとう、かな」
「あー、感謝の気持ちを伝えるパターンか」
「そうだね。私だったら今抱いてる気持ちを否定されたくない、が一番にくるから」
「ふーん…」
「逆にどうなの?なんて声かける?」
「それがぜんっぜん思い付かなくて。今後の参考にするわ!ありがと!」
「なんかずるくない?」

彼女はへへっと笑いながら今日買いたいというスカートの写真を見せてきた。いつもどおりの彼女だ。


高校を出てから電話したりすることはあったけど、会うのは本当に久々。なんで私と友達なんだろうって思うくらいに性格も容姿も真逆。太陽みたいに笑う彼女に何度救われたか。そんな彼女になんだか急に会いたくなって、私から連絡した。「あんたが会いたいって言うなんて初めてじゃない?」って驚きながら、彼女はスケジュールを空けてくれた。

プラプラとお店を見ながら学生時代の話をしたり、カフェに入って他愛もない話で盛り上がった。見た目はちょっと大人っぽくなったけど、中身は変わらず大好きな彼女のままで、すごく安心した。


「ねぇ」
別れ際、彼女はふいに私を抱きしめた。

「一緒にいてくれてありがとう」、って言いながら。

「なにそれ。私死にたいなんて言ってないよ」
私は笑いながら答えた。

「でもあたしはそれで終わりにしない。あんたと行きたいところまだまだたくさんあるし、もし結婚したらお互いが証人になるって約束したでしょう」

「だから、死にたいなんて」

「こんなあたしでも、力になれることはあると思う。お願いだから頼ってよ。もう少し、一緒にいてよ」

強く抱きしめるから顔が見えない。私は返す言葉が出てこなかった。

「あたしがあんたの作り笑顔を見逃すとでも思った?何年親友やってると思ってんの」

確かにそうだ。私の変化に誰よりも早く気づいて声をかけてくれたのはいつも彼女だった。なんで見逃してもらえると思ったんだろう。会いたい気持ちが先走ってそこまで頭が回らなかったな。なんだか面白くて笑ってしまった。顔を赤くして涙をこぼす彼女と目が合って、二人して笑った。そして強く抱きしめた。


「さ、何から話そうか。とりあえずコンビニ行く?朝までコースでしょ?あたしん家でいい?」
私の頬に流れた涙を指で拭いながら、矢継ぎ早にそう言った。やっぱり敵わないなぁ。


「ねぇ、ほんと私のこと好きだよね」
「はぁ?お互い様でしょ」
「…たしかに」

ねぇ、一緒に生きてくれて、ありがとう。
恥ずかしいから、心の中で呟いた。



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