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実践編!ChatGPTと共に歩むプロダクトマネジメント

この記事では、ChatGPTを活用してプロダクトマネジメントを実践した事例を紹介します。簡単なWEBアプリの要件定義フェーズを実践することで、PM業務におけるAI活用の可能性について模索しました。

はじめに

革新的なAIサービスが次々とリリースされている今日この頃、私自身も毎日のようにAIツールを活用して作業をするようになりました。今後、あらゆる業務がAIに置き換わっていくことは間違いないでしょう。

そこで今回は、私の本職でもあるプロダクトマネジメントの業務をAIでどこまで置き換えできるかを試してみました。プロダクトマネジメントの業務は多岐に渡ります。今回は、AIを活用したWEBサービスを企画し、プロダクトバックログ(機能リスト)を構築するまでの手順を、AIに助けてもらいながら実施してみました。AIにはChat GPTを利用します。

AIから適切な回答を得るために、何度か試行錯誤を行なっています。この記事では、その過程の説明は省略して、最終的な入出力の内容を紹介しています。

開発したプロダクト

今回作成するプロダクトは、「AIを活用してプロダクトマネージャーの業務を効率化する」ことをコンセプトとしました。後述するフローで検討を行った結果、「プロダクトの仕様書からFAQを自動的に生成するWEBサービス」が完成しました。

以下は、アプリの完成イメージです。プロダクト仕様を入力すると、GhatGPT APIを通じてFAQを生成してくれます。

作成したWEBアプリ

このくらいならChatGPTを直接使ったほうが早いですが、今回は検証のためにシンプルなアプリにしました。

この記事では、このプロダクトを実装するためのプロダクトバックログの構築までを説明します。

作業手順

新規のプロダクトを企画するまでの手順はさまざまなパターンがありますが、今回は以下のような手順を採用しました。

  1. 👨‍💻ユーザー課題の仮説とコア技術を考える

  2. ✨ユーザーインタビューの質問内容を考える

  3. 👨‍💻ユーザーインタビューを実施する

  4. ✨ビジネスモデルキャンバスを作る

  5. ✨機能リストを作る

  6. 👨‍💻PRDを作成する

  7. ✨プロダクトバックログを作る

👨‍💻は人間が、✨はAIが主に担当します。なお、AIにはChatGPT3.5を利用しました。(ややこしいですが、Chat GPT APIを活用したプロダクトを作るために、ChatGPTに支援してもらいます。)


コア技術と仮説の設定

まずは、どんな課題を解決したいのかを人間が考えます。ここはPMの腕の見せ所でもあるので、AIには頼らずに自分で考えることにしました。
AIを活用したプロダクトを作ってみたかったので、今回は以下のような課題設定を行いました。このあと実施するインタビューに自分で回答するために、ターゲットユーザーはジュニアプロダクトマネージャーとしています。

課題と仮説

・コア技術:ChatGPTのような生成AIを活用する
ターゲットユーザー:toC向けSaaSを担当しているジュニアプロダクトマネージャー
仮説:ユーザーは、新機能リリースの際のFAQページの内容作成に工数がかかるという課題を抱えている

今回は実験的なプロダクトのため、この仮説が合っていて、解く価値のある課題だという前提で開発を進めます。

AIはリアルな世界に生きてはいないため、このような仮説立案をAIに丸投げしても、良い仮説は得られないと思います。そのため、仮説の立案能力は今後もPMに求められるんじゃないでしょうか?

ユーザーインタビュー

次に、仮説を検証するためのユーザーインタビューを行います。インタビューの内容は集合知がありそうなので、質問内容の検討はAIに依頼してみました。

インタビュー内容の立案

以下のようなプロンプトで、インタビュー内容の案をたくさん書き出してもらいました。

プロンプト

あなたはプロのプロダクトマネージャーです。chatGPTを活用して、ジュニアプロダクトマネージャーの業務上の課題を解決するプロダクトを開発したいと考えています。 あなたは、以下の仮説を持っています。  

  仮説:プロダクトマネージャーは、これからリリースするプロダクトのFAQを作成することに工数がかかるため、改善したいと思っている。

今回、あなたは何人かのプロダクトマネージャーにインタビューを実施して、この仮説を検証することにしました。インタビュー内容の案を回答してください。

ChatGPTの回答

以下は、プロダクトマネージャーに対するインタビューの質問の例です。これらの質問は、仮説を検証するために役立つ情報を収集するのに役立ちます。

1. プロダクトのFAQを作成することについて、どのくらいの時間を費やしていますか?それは、プロダクトリリースのために必要な準備の中で、どの程度重要だと考えていますか?
2. FAQを作成することについて、どのような課題がありますか?その課題に対して、どのように対処していますか?
3. FAQを作成するプロセスで、どのようなツールやリソースを使用していますか?
4. FAQを作成するプロセスで、最も時間がかかる部分は何ですか?それは、どのように改善できると考えていますか?
5. FAQを作成するプロセスで、最も重要な部分は何だと考えていますか?どのようにその部分を改善できると考えていますか?
6. FAQを作成するプロセスで、自分が最も価値を提供していると思う部分は何だと考えていますか?それは、どのようにして他のプロダクトマネージャーに共有できると思いますか?
7. FAQを作成するために、利用するコンテンツの種類に制限はありますか?制限がある場合、それはどのようなものですか?
8. FAQを作成することについて、今後改善したいと思っている点はありますか?それは、どのように改善するつもりですか?

これらのインタビューを通じて、プロダクトマネージャーがFAQ作成にどのような取り組みをしているか、どのような課題に直面しているか、そしてどのような改善が可能かについて、貴重な洞察を得ることができます。これに基づいて、より効率的かつ生産的なFAQ作成プロセスを開発することができます。

結構使えそうな案が出てきました!もちろん人間が精査する必要はありますが、ゼロから書き出していくよりも効率的ですね。

インタビューの実施

今回はいくつかのインタビュー内容をチョイスして、自分自身でインタビューの回答を作成しました。その結果は、この後の工程でインプットとして使います。

自分で回答したインタビュー結果

1. プロダクトのFAQを作成することについて、どのくらいの時間を費やしていますか?
     回答:一つの機能に対して、2~10件程度のFAQを作成しています。1件あたり5分程度かかります。

2. それは、プロダクトリリースのために必要な準備の中で、どの程度重要だと考えていますか?
     回答:必要ではあるものの、優先度は高くないと考えています。FAQがなくてもリリース自体は完了できるからです。しかし、FAQがないと問い合わせの対応ができないため、作成は必須です。

3. FAQを作成することについて、どのような課題がありますか?その課題に対して、どのように対処していますか?
     回答:自分でFAQの項目を考えると、抜け漏れが発生する可能性があります。他のメンバーにレビューしてもらうことで、それを防いでいます。

(以下略)

ビジネスモデルキャンバス

次に、ビジネスモデルキャンバスを作成します。事業モデル、収益モデル、マーケティング戦略などを明確にし、ビジネスの方向性を決定するために使われるフレームワークです。

実は、もう少し段階を踏んだ後に作成するつもりだったのですが、AIに依頼したら一足飛びでこれを出力してくれました。

まず、以下のようにしてユーザーインタビューの結果をChatGPTに伝えて、バリュープロポジションキャンバスの作成を依頼しました。{}内は先ほど作成したインタビュー結果に置き換えます。

プロンプト

あなたは、インタビューで以下のような回答を得ました。この回答から、バリュープロポジションキャンバスを作成してください。
{インタビュー結果をここに記載します}

すると、良さそうな出力が得られましたが、これがビジネスモデルキャンバスに該当するものでした。書いてある内容としてはかなり正確ですね。

ChatGPTの回答

バリュープロポジションキャンバスは以下のようになります。
【顧客セグメント】 プロダクトマネージャー
【顧客の課題】 プロダクトリリースの準備において、FAQ作成に時間をかける必要があり、その工数削減が望まれる。
【顧客の要求】 FAQ作成の課題を解決するため、時間の短縮や、自動生成ツールの提供を希望する。
【製品・サービス】 FAQ自動生成ツール
・プロダクト機能の概要からFAQ項目を自動生成
・複数人でのレビュー機能
・Googleスプレッドシートと連携して管理
【価値提供】
・FAQ作成にかかる時間を削減
・ユーザーからの問い合わせの減少
・製品リリースに伴うストレスの軽減
【競合優位性】
・自動生成ツールにより、従来よりも短時間でのFAQ作成が可能
・Googleスプレッドシートと連携した管理により、共同作業がスムーズになる
【収益モデル】
サブスクリプションモデルによる月額課金
【顧客獲得チャネル】
・SNS広告
・プロダクトマネージャー向けのコミュニティでの宣伝
【顧客関係】
・FAQ自動生成ツールの利用に関するヘルプデスク
・フィードバックの収集による改善
【主要リソース】
・開発チーム
・Googleスプレッドシート
・FAQ自動生成アルゴリズム
【主要パートナー】
・Google
・SNS広告プロバイダー
【コスト構造】
・開発チームの給与費
・サーバー費用
・SNS広告費用

この整理により、FAQを自動生成するプロダクトを開発することで、ユーザー課題の解決に寄与しそうなことがわかりました。また、上質なFAQの作成に寄与することで、問い合わせ数の削減という価値をもたらすこともアピールできそうです。

このフレームワークは自分で書くと結構な時間がかかりますが、AIに頼めば一瞬でした。このように、事前情報を分析して情報をまとめ直す作業はAIが特に得意だと言えそうです。

おまけ:ペルソナ

ちなみに、同じインタビュー結果を使って、ペルソナも作ってくれました。(ChatGPTに「○○できますか?」と聞いた時の「もちろんです!」の返しが好きです)

ペルソナの出力例

機能リスト

作成するプロダクトのイメージができてきたので、次はもう少し詳細な「機能リスト」の作成をAIに依頼します。

プロンプト

このプロダクトを実現するための機能リストを表形式で作成してください。

以下のような機能リストを出力してくれました。何も言わずとも優先度も書いてくれていてありがたいですね。

ChatGPTの回答

機能リスト

これくらいであれば誰でも書けるとは思いますが、AIを使えば一瞬で、なおかつヌケモレなく書き出してくれるのはとても便利です。

PRD

ここで久しぶりに人間の出番となります!初期リリース時に実装する機能を検討し、PRDを作ります。実装すべき機能は、開発リソースやリリーススケジュールなどにも左右されるため、PMが実施した方が良いでしょう。

今回はChatGPT APIを用いる最小限の機能を実装したかったので、以下のような機能構成としました。非常に簡易なPRDのイメージで記載します。Howの部分だけ書いています。

作成したPRD

機能
・ユーザーは、新機能の仕様に関する情報をテキストエリアに入力できる。 ・ユーザーが「FAQを作成」ボタンを押すと、Chat GPT APIを利用して、新機能のFAQを作成する。
・作成したFAQを画面上に表示する。ユーザーがコピーボタンを押すとそのテキストをコピーできる。

基本仕様
・WEBアプリとして提供する。ユーザー認証機能は実装しない。 ・入出力したデータはローカルストレージに保存する。

プロダクトバックログ

PRDをもとに、開発アイテムを優先度順に並べたプロダクトバックログを作成します。これに基づいてエンジニアが開発を進めることになります。

以下のようなプロンプトを入力して、実用的なプロダクトバックログを作ってもらいました。

プロンプト

これを実装するためのプロダクトバックログアイテムを表形式で出力してください。ID、タイトル、実装工数(1時間単位)、実装箇所、実装内容の詳細を含めてください。実装順にソートしてください。

ChatGPTの回答

プロダクトバックログ


実装工数が若干多めな気もしますが、相対的な工数比率は違和感が無いように感じます。過去の実績工数を与えることで、もっと正確な見積もりができるかもしれません。

あとは、このバックログを見ながら実装していけばよさそうです。(実装フェーズは別の記事で紹介するかもしれません。)

これで、最初の仮説からスタートして、実装可能な状態まで整理することができました!AIはプロダクトマネジメントの作業にかなり活用できそうです!


PMとAIの共創

最後に、今後はPMとAIがどのように仕事を分担することになるかを考察してみます。
今回の作業でPMが主体的に実施した作業は、以下の3点でした。

  • 👨‍💻ユーザー課題の仮説とコア技術を考える

  • 👨‍💻ユーザーインタビューを実施する

  • 👨‍💻PRDを作成する

まず、ユーザー課題の仮説は自身の経験などに基づいて、自分で設定しました。本当に解くべき課題はリアルな世界でアンテナを貼っていることで見つけられるものであり、今後もPMが実施する業務となるのではないでしょうか?

ユーザーインタビューについては、もしかすると今後はAIが勝手に実施してくれるかもしれません。チャット形式でAIが人間に質問するようなイメージです。そうすると、人間が実施するのはターゲットユーザーの選定や、インタビュー項目の精査などになるでしょうか。

PRDの作成(ここでは、実装する機能の選択)は、今後も人間の仕事になりそうです。何をいつ実装するかということは、現場の状況やユーザー課題の大きさに応じて、PMが意思決定する必要があるからです。

以上のことから、プロダクトマネジメントでAIを活用することで、「課題の理解」と「意思決定」という重要な仕事にPMは注力できるようになりそうです。そのために必要な手順の提案や、情報の整理はAIが担ってくれるでしょう。

おわりに

今回は、AIを活用しながら、WEBアプリケーションのプロダクトマネジメントを実施しました。具体的には、ユーザー課題の仮説設定、ユーザーインタビュー項目の作成、プロダクトバックログの作成をなどの作業を、AIを活用して行いました。

今回作成したのは非常にシンプルなプロダクトですが、PMの業務において、AIは様々な場面で活用できることがわかりました。特に、事前情報の整理や機能リストの作成など、PMが集めたり考えたりした情報を集約する作業においては、AIが大きな助けになりそうです!

しかし、AIで代替することが難しい「課題の理解」と「意思決定」という仕事を担うために、PMの役割は今後も重要であると考えられます。AIを上手く使いこなし、より高度なプロダクトマネジメントを実践していけると良いですね!

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