変容ノ前夜
仙台市泉区出身の、仙台フィル首席チェロ奏者である吉岡知広さんがコーディネーターとして、毎回ひとりの作曲家の、室内楽を主とした作品の片鱗と生涯にスポットライトを当てていくコンサートシリーズ『イズミノオト』。
私は前回公演である第7回の、ドビュッシー特集にあたる『月ノ光』をきっかけに『イズミノオト』を知ったのですが、先日公演のリヒャルト・シュトラウス特集『変容ノ前夜』の主役である「リヒャルト・シュトラウス」は、吉岡知広さんがオープニングトークにて「最も好きな作曲家」と形容されていました。
リヒャルト・シュトラウスといえば、スタンリー・キューブリックの不朽の名作『2001年宇宙の旅』において、交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』の、人口に膾炙したであろう導入部が使われており、私もそちらの印象が強い作曲家だったのですが、今回の公演では、前半部はシュトラウスが17歳の時分に作曲したピアノ曲『五つの小品』と、24歳の時分に作曲した『ヴァイオリン・ソナタ』、後半部は70代の時分に発表したオペラ『カプリッチョ』の弦楽六重奏による前奏曲、そして公演を締めくくるは、最晩年である、第二次世界大戦末期の母国ドイツを背景に80代の時分に発表した『メタモルフォーゼン』という公演内容となっておりました。
今回の公演では『メタモルフォーゼン』は、ルドルフ・レオポルトによる七重奏版および弦楽器の演奏者方により演奏されていましたが、オリジナルの楽器編成は「23の独奏弦楽器による習作」という副題の通り、実にヴァイオリン10、ヴィオラ5、チェロ5、コントラバス3による編成です。
今回の『イズミノオト』では、仙台フィル副主席コントラバス奏者の名和俊さんも『メタモルフォーゼン』において出演されていました。
私としては名和俊さんというコントラバス奏者をコントラバス奏者として認識したのは、去年の年末に仙台フィルによる『第九』の特別演奏会を聴きに行った際に、最前列右側のコントラバス演奏陣に向かい合った時で、その演奏はとても印象に残りました。
その時、首席コントラバス奏者である助川龍さんと名和俊さんが、コントラバス奏者どうしの「快活でさわやかな笑み」を交わしながら、筋肉質にゴリゴリに『第九』のコントラバスパートを弾くすがたに感動して帰った想い出があるからです(規制退場の際に、助川さんが観客席へ向かって声高に「ありがとう!」と手を振られる様もとても印象的でした)。
今回は、そんな名和さんのアフタートークから派生し、次回の『イズミノオト』は、「ベートーヴェン特集」を匂わせるトークとなりました。次回の『イズミノオト』も、とても楽しみです。
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