見出し画像

【対談企画】タンク村上とライバルに色々質問してみた(第1回)

ライバル2人はどんな関係?本音を探る27の質問スタート

――これは知念さんと村上さんのおもな対戦記録をまとめた表です。高校1年の前半は、村上さんが高校総体1位、国体2位と抜群の成績を収めていますが、このとき知念さんはまだ出場されていないんですよね?

知念 そうですね。まだ重量挙げを始めて何ヶ月とかです。

――それなのに、高校1年の3月の全日本ジュニアでは、知念さんが2位、村上さんが4位といきなり村上さんを超える成績をとられています。

知念 はい。(表を見て思い出しながら)ほんとだ。

村上 自分は全日本ジュニアで一度も知念に勝てたことないんですよね。

――知念さんはこのあと全日本ジュニアを四連覇されるわけですが、この10年間を振り返ると、知念さんが勝った試合もあれば、村上さんが勝った試合もあり、本当に激しい戦いを繰り広げてこられたことがわかります。今回はあらかじめ準備した27の質問に答えていただきながら、重量挙げの超級をリードしてきたお二人が、実際はどんな関係性なのか、人柄や素顔がみえるような対談にしていきたいと思います。

【1】お互いの最初の印象はどんなもの?

――それでは早速ですが、最初の質問から。「お互いの最初の印象はどんなものでしたか?」

村上 最初どうだったかな。あんまり覚えてないですね。

知念 自分は1年の高校総体は先輩のセコンドで付いていったんですが、そこで英士朗が優勝しているのを見た、というのが最初の記憶ですね。「あ、強い選手がいるんだな」と。そのとき自分の恩師からは「あいつを来年超えるぞ」という話をされました。

村上 自分は3月の全日本ジュニアで知念が出てきたとき、沖縄から急にすごいモンスターが現れたな、と思いました。自分は3年生の先輩とか倒していましたから、まさか、同学年の子にやられるなんて、と。「これから卒業するまでは、戦い続けることになるんだろう」と感じました。

――最初に喋ったときのことは覚えていますか?

村上 喋ったっけ?笑

知念 最初に会話をしたのは、高校1年の3月の全日本ジュニアか高校選抜のとき。ちょっとだけ会話したと思う。内容はあんまり覚えていないけど。

村上 そうやった。「中学校からやっていたのか?」と聞いたら、そうじゃないって。

――知念さんは中学校のときは何か運動をされていたんですか?

知念 何もやっていないです。小学校のときに1年くらいバスケをやっていましたが、それだけです。高校を決める段階で、たまたま高校の恩師に誘ってもらって、それで入学してから練習を始めました。

――恩師とはどんな出会いだったんですか?

知念 中学校3年の1月くらいに、地元の道を歩いていたときに、柔道関係者から「柔道をやらないか」と声をかけられたことがあって。そのときに、自分は重量挙げをしたいです、と伝えたところ、その日のうちに、のちの高校の恩師がやってきて、「うちの高校に来ないか」と誘ってくれて、それで行くことになった感じですね。

――どうして重量挙げをやりたいと答えたんですか?

知念 中学1年のときの担任の先生が、のちの高校の恩師の教え子で、重量挙げの選手でした。担任の先生から重量挙げの話を聞いて、自分も中学1年から重量挙げを始めようと思ったんですが、学校の許可が下りなくて。その後、中学2年のときに、たまたま自分の家の近くで高校総体をやっていたのを中学1年の担任の先生と見にいって、実際にこの目で見て、いいなあ、やりたいなあと思いました。

【2】忘れられない二人の名勝負はどれ?

――なるほど、そういう出会いがあったんですね。それでは次の質問に進みます。「忘れられない二人の名勝負はどれ?」

知念 自分は高校3年の最後の試合(全日本ジュニア)ですかね。二人ともC&ジャークではじめて200kgを超えたとき。

村上 最後、知念はC&ジャーク、何キロだっけ?

知念 200を成功させた後、205をやってさせなかった(挙げられなかった)。

村上 自分も同じ試合ですね。知念に負けたんですけど。高校3年の1年間は、毎試合、お互いに高校記録を塗り替えあっていて、どれも面白い勝負になっていたと自分でも思います。その中で、最後の高校記録をどちらが残すか、というのは、みんな気になっていたところで。自分は最後の試合、負けちゃったんですけど、二人とも200kg以上させたし(挙げられたし)、全力出せたから悔いは残ってなくて、いい試合だったと思いますよ。

知念 高校最後の試合ということで、めちゃくちゃ気合が入っていたのと、高校生で200kgを公式試合で取るっていうのが目標としてありました。

村上 自分は200kgをつねに意識して練習していて、C&ジャークだけでも挙げようと思って、200kgのラックジャークを何回も練習したり、200kgのプルをしたり。知念と話していたんですよね、200kgは高校生のうちにいきたいよねって。それで最後の最後に二人ともできたという試合で。だから、負けちゃったんですけど、楽しかったなあと。

――その当時、普段からLINEで連絡を取り合うとか、そういうつながりはあったんですか?

村上 どうなんだっけ?

知念 高校2年くらいから、国際試合に一緒に行くようになって、その中でけっこう、連絡は取っていたのかなあと。でも覚えてないなあ。

村上 そうだね、ちょっとくらいは。

知念 とっていたと思う。

村上 高校2年のアジアユースは、自分が2位、知念が3位で。これはタイだっけ?

知念 いや、ミャンマー。

村上 ミャンマーだ。それで、二人が2位と3位で、国際試合で一緒の表彰台に乗れたっていうのがけっこう感動しましたね。審判や役員の人にも、日の丸が二つ上がっているのは初めて見た、と言われて。これから二人で国際試合を勝って、たくさん日の丸を上げたいなと思いましたね。ひとりじゃなくて、日本チームとして勝ちたいなという気持ちを持ちました。

【3】村上選手が今までで一番気に入っている試技は?

――なるほどですね。では次に行きます。「知念さんが当ててください。村上さんが、今までで一番気に入っている試技はどれ?」

知念 一番重たい重量をとった今回の全日本じゃないかと思いますね。あのときのとった後の表情とか、一番気持ち良さそうでした。

村上 笑

――村上さん、正解は?

村上 意外とそうじゃないんですよね笑 高校記録をはじめて国内でとったときの試合が一番うれしかったです。

知念 へえー。

村上 高校2年のときの高校総体。たぶん知念に勝っていると思うんですけど、あのときは嬉しすぎて涙が出ました。

――あのときの勝敗はどうですかね。記録をみてみると……。

村上 あれ?負けてますね笑

――トータルで1キロ差で知念さんが優勝されていますね。

村上 そうだ。スナッチで高校新をとって、C&ジャークで守りに入ったら、知念が大会記録を出したんですよ。

知念 自分はあのとき9kgの自己新で、たまたま逆転ジャークができたと思うんですけど。

村上 この試合から、高校の恩師の佐藤先生と、保守的な試合はやめようということになったんです。こうやって守りに入ると負けるから。

知念 笑

村上 今年の全日本も、去年の全日本も、どちらもスナッチの2本目を落としているんですけど、それでも3本目で重量を増やしていくっていう、ありえない重量選択をして勝っています。あの知念に負けた試合のおかげですね笑

【4】知念選手が今までで一番気に入っている試技は?

――そうだったんですね笑 では次に行きます。「村上さんが当ててください。知念さんが、今までで一番気に入っている試技はどれ?」

村上 はじめて高校で優勝したときの試技なんじゃないかなと思います。いつだろ?

知念 高校2年の高校総体。

村上 それじゃないかと。じゃないとすると…。

――二つはダメですよ笑 でも参考までにどうぞ。

村上 笑 社会人になってから国体で優勝したときの試技じゃないでしょうか。

――どっちでいきます?

村上 ここ最近でベストの記録を出したという意味で国体ですかね。

――令和元年の国体ということですね。知念さん、正解は?

知念 惜しかったです笑 高校2年の初優勝(高校総体)のときです。

村上 あ、やっぱり!

知念 2番をあげるとすると、あの国体かなあと思います。高校2年の高校総体は、その1年前に監督と「優勝するぞ」と決めて取り組んだ目標を達成できたのが大きかったですね。自分は高校に入るまでスポーツをやってなくて、高校1年のときは、ただやっているという感覚だったんです。やれば伸びたんですが、周りのレベルも知らないし。スポーツがどういうものか、やっと理解し始めたのが高校2年からで、そういう中で優勝することができて。目標を達成できると、周りも喜んでくれることもわかって、いろんな嬉しさがあって、このときが一番の試技という思いがありますね。

――偶然にも、二人とも同じ試合ということになりますね。

知念 そうですね。

村上 たしかに。

――本当に二人にとって初期の頃のこの試合が一番なんですね。

村上 自分が負けている試合なのに一番という笑

【5】村上選手が選手として一番自信があるのはどんな点?

――たしかに笑 では次にいきますね。「知念さんが当ててください。村上さんが、選手として一番自信があるのはどんな点?」

知念 やっぱり闘争心です。気合。負けん気。英士朗はメンタルが弱いとか言っているんですけど、競技をやる上での気持ちが強いと思っています。どんな調子が悪い状況でも気持ちを入れて挙げてきます。英士朗は調子が良くても、気持ちが入ってないときは落とすんで笑

――なるほど笑。村上さん、正解は?

村上 当たっていますね。そう思います。僕の中では試合に強いという点ですね。気合、闘争心があるから…うーん、闘争心というのかな?ビビリですけども、試合には強いという自信があるので。

【6】知念選手が選手として一番自信があるのはどんな点?

――ああ、そういう感覚なんですね!では次に行きます。「村上さんが当ててください。知念さんが、選手として一番自信があるのはどんな点?」

村上 それはわかりますよ。敏感に自分の身体の違いとかがわかる点だと思います。それに基づく調整力があるのかあと。ここがこう悪いから変えよう、というとき、相当に繊細なところまで自分のことを理解している。身体の柔軟性もあって、調整の技術があるんですよね。

――知念さん、正解は?

知念 言っているとおりだと思います。自分は身体にいろいろ出やすいので、今、どこが良くて、どこが悪いかっていうのをすごく意識していますね。もともと力が強いタイプじゃないので、力がなくても挙げられるように、ということを考えています。

――当たりということですね。

知念 はい。自分は馬力がないというんですかね、補強種目の筋力トレーニングの数値とか、あまり強くないので、そういう中で、自分がどうやったら重い重量を挙げられるのか、というのを取り組んでいます。競技を始めて最初の頃は、なんとなくうまく挙げられていたりしたんですが、のちのち社会人になってから、なんか調子が悪いとなったときに、何が悪いんだろうと。一番は一昨年くらいから、身体が固くなってきて、自分のいい部分がなくなってきて、去年ぐらいから、それまでは感覚でやっていたことを見直して、どこをどうすれば良くなるというのを考え始めたんです。そうしたら、調整したことが綺麗に身体に出てくるので、いろいろ勉強していった、という感じですね。

――「知念式ストレッチ」としてtwitterで展開されているメソッドですよね?

知念 そうですね。

村上 客観的に、自分からみると、高校のときからもう調整力の高さはあった気がします。自分の身体の感覚のちょっと違うな、というのを僕なんかより全然わかっていたと思います。自分は高校のときから気合があれば挙がるという感じでしたし、二人のそれぞれの方向性は昔から変わってない感じがしますね。

知念 それはあるね!
(第2回に続く)



PROFILE
知念光亮さん
Kosuke Chinen

生年月日 1996年1月6日
出身地 沖縄県
身長体重 185cm、154kg
経歴 豊見城高校→沖縄国際大学→いちご。
重量挙げ超級選手。高校から重量挙げを始め、高校2年でインターハイ、全日本ジュニア、全国高校選抜優勝。大学1年で全日本2位、大学4年で全日本優勝。社会人以降は2019年国体優勝、2020年全日本優勝。自己ベストはスナッチ186kg、C&ジャーク226kg、トータル411kg。


タイトル画 タンク村上
司会・構成 ブリッジワークス

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?