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【創作】 「ベストスキン」("v"est skin)

この世界では、生命の誕生とともに一生の衣服が与えられる。
ここは地球と似た、人類に似た人々が暮らす星。
花のつぼみがまだ小さい季節、アヴァロンがこの世に生を受けた。
彼の手には、まだ産まれたばかりの「衣服」が握られた。
この衣服もまた、産まれたてで未熟であり、辛うじて体にとまっている状態だ。
だが問題はない。持ち主の成長に合わせて、衣服もまた成長するのだから。

幾年かが過ぎ去った。太陽も木々もより輝きを増す季節。
ようやく歩き始めた少年は、好奇心旺盛で、日々冒険だった。
それは彼にとっても、この衣服にとっても、試練の日々であった。
木に登り、川を渡り、そして時には衣服が破れることもある。
最初のうちは、衣服自身の修繕もぎこちなかった。
なんとか一晩で修繕出来るようになった頃には、服が破れることも希になった。

思春期に入ると、アヴァロンの取り巻く世界も一変した。
彼は世界に対して斜に構え、個性を周囲に主張し始めた。
この影響を受けた衣服も、それに倣おうとパンクスタイルに変化する。
鮮やかな色、奇抜なデザインで心を表現するのだ。
流石にこれにはアヴァロンもたじろいだ。
結局、この変化はそれほど長く続かなかったようだ。

そこから幾年か流れた。
アヴァロンはすっかり落ち着き、悠々とした日々を過ごしていた。
ある晴れた夏である。公園で魅力的な人を見かけた。
話しかけようにもその勇気が出ない。迷っていると、衣服がそれに答えた。
しっかりとした身なりに変身して勇気づけ、新しい人生の幕開けをお手伝いする。
長年の深い絆が見せる粋な計らいである。

更に年月が流れた。僅かな風でも木々が枯れ葉を落とす季節。
アヴァロンも衣服もすっかり年老いていた。
彼のシワと同じくらい、服にも取れないシワが刻まれている。
彼らの旅もそろそろ終わりに近づいているようだ。
アヴァロンがこの世を去るとき、衣服は彼を一番に抱き締めていた。
二人は長い間過ごした記憶と共に、静かに自然に還っていく。
彼らの物語は終わりを告げたが、それは誰かと誰かの新しい始まりでもある。

何処か遠くの産声に答えるように、衣服の芽はウインクした。


余談

Claude 3とやりとりをしている最中に、産まれたアイデアベースです。
今から50年後のアーティストとして振る舞うように言った際に、

環境問題への意識の高まりから、サステナブルで自然に還る素材を用いたアートも注目を集めています。花や木々、土など自然物で身体を覆ったり、共生をテーマにした作品が生まれています。

Claude 3

という返答から、この着想へと至りました。思いがけないアイデアに繋がるのは良いものですね。

見出し画像は、ChatGPT-4のDALL-E 3です。
この物語を読ませて、イメージできたそれを画像にして、と言ってできたものです。

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