谷崎潤一郎「おしゃべり」

『谷崎潤一郎讀本』という本をパラパラとめくっていると
「なんだかコレ面白そうだぞ」「ぜひとも読んでみたい」
と思った作品がある。

それがこの「おしゃべり」である。

この「おしゃべり」はなんといっても
話の筋が面白い。

『谷崎潤一郎讀本』に掲載されていたあらすじを下に引用する。

「欧米人はまわりにほかの人がいても平気で人妻を口説く。
どこまで真剣なのか冗談なのかわからない。
大晦日の夜ホテルに泊まったとき、
家族同士でつきあっているアレンが部屋まで送ってきて、
キスしてくれと言うが拒んだ。
同じホテルで知り合ったハスケルが、
夫と泊まっている名古屋のホテルに電話をかけてきて、
一緒に見物に行かないかと誘うが断ると、
一人でもよいから来てくれと言うので
出かけて行くとやたらにキスをする。
こんなことは好ましくないと言う。
別れたあとくやしくなるが、
夫はいい経験になっただろうと言う。」
(五味渕 典嗣、日高 佳紀 2016『谷崎潤一郎讀本』 翰林書房)

単純に、人妻が夫でない男とキスする展開が
すでに面白い。

さらに外国人のハスケルが、
主人公である人妻の
体じゅうにキスをしまくる展開が
面白さにさらに拍車をかける。

本当はキスしまくるハスケル当人や
話の筋自体がヤバいんだけど、
「おしゃべり」を読んでいる我々にも
ヤバいという感情がこみ上げてくる。

まるで私たちがハスケルになって
人妻の体のあちこちに
キスしているみたいに……

こみ上げてくるヤバさを
背中で感じるのもまた面白い。
読書を通して、我々は
合法的にヤバい世界を覗くことができる。

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