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ハン・ガン「そっと静かに」を読んでいる。まだ2/3を読み終えたくらい。

作家にとって、音楽を足がかりに記憶の一端を引き出すことが「守られているような時間だった」ように、私にとっても彼女の作品を読んでいる時間はかけがえのない救いを与えてくれる。

joan baezによるlet it beに関しての一節が忘れられない。もうこの曲を聴いているだけで涙が出てくる。

誰かがやっとのことで息をしているような姿が、こうして深く胸を打つのはどうしてなんだろうか。



真似をしたくなって、自分にとっての大切な音楽はなんだろうと考えていたのだが…

近頃浴槽に浸かりながら聴くのにしっくりくる音楽を探していて、青葉市子の音楽がとても合うと気が付いた。

先日も浴室に反響する彼女の声を聴いていると、ふと家族が手術を受けたときのことが思い出された。当時は起きていることに対処するしかできなかったが、ひとまず今はもう落ち着いたのだと安堵している。もう手術からしばらく経つが、そうして立ち返ることすらできていなかった。もちろん大変だったのは本人であって、自分が感じていたものなどごく穏やかなものに過ぎないが…

嵐の去ったあとの荒廃をならすために必要な小さな勇気を齎す声。ひそかな許しを与える音楽。

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