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『コントが始まる』第7話 選ぶものと選ばれるもの

第7話、冒頭のコントは「無人島」。コントの中でマクベスは「無人島に何を持っていくか」を選んでいた。それが重要なものだとは気づかずに。第7話は「選択」をめぐる物語だ。瞬太(神木隆之介)が選んだ国語辞典で「選択」を引いてみよう。

せん‐たく【選択】 多くのものの中から、よいもの、目的にかなうものなどを選ぶこと

登場人物たちは多くのものの中から選ばれる存在だ。ネタ見せ、就職、跡継。いつだって「選ぶのは先方」で、年齢や経歴、時には「本気かどうか」なんて抽象的な基準で、選ばれたり選ばれなかったりする。それでも時に、自ら選択することもある。ソファの色(黒かオレンジか)、付き合う相手(年上か年下か)、おにぎりと一緒に飲む飲み物。私たちは日常の中で、様々なものを選択する。後からそれが、重要なことだったと気づく。

「私たちにできるのは道を示してあげることだけよ。それぞれのやり方でね」

雀荘・赤まむしで、中浜さん(有村架純)がバイトするファミレスの恩田店長(明日海りお)が言う。進むべき道を選択するときに、地図はあてにならない。エジプトでカルロスの地図は巨大なハゲタカに持ち去られてしまった。群馬の山奥で見た地図に描かれたガソリンスタンドのマークは、行ってみるとコンビニだった。何が正しいか分からない世の中で、自分が選んだ道を信じて進むしかない。出来ることは潤平(仲野太賀)のように祈ることぐらいだ。その祈りが山びこのようにリフレインする。

中浜さんが見上げる夜空にのぼった月は、マクベスと出会った夜の三日月とは違って、満ちている。ナンバーが「24-24(ぷよぷよ)」の瞬太の車に、マクベスと中浜さんが乗る。ぷよぷよが4つ揃うと消えるように、彼らが抱えていた葛藤は消え始め、欠落が埋まっていくように見える。進む道を選んだ潤平と奈津美(芳根京子)は、中浜さんに転職エージェントを紹介した。

「これまで引っ張ってきてもらった分、ここは私が頑張らなきゃと思って必死で歩いたわ」

店長がカルロスにそうしたように、中浜さんも「前に進むと決めた」。ドラマの中で、瞬太が車にガソリンを入れると、中浜さんがお茶を飲む。中古車として売られる瞬太の車と、中浜さんの姿が重ねられていく(ちょっと、それはどうなんだ、とも思うが…)。どこかにいるマニアに選ばれるのを待つ28万円の車と、先方に選んでもらうのを待つ28歳の中浜さん。選ばれたことに責任を負い過ぎてしまう中浜さんの性格を知っている奈津美は中浜さんにこう言った。

「受かったら入らなきゃいけないなんて考えなくて良いですから」「こっちからも選んでやるって気持ちでいいと思うんですよ」

最終回までに、中浜さんが選択するのは、どんな道だろうか。春斗(菅田将暉)が瞬太の車を指して言った「4人目のマクベス」が中浜さんのことでもあること、第1話の中浜さんと春斗が重ねたモノローグ「あれが、私たちの始まりだったとは思いませんでした」などから、様々な道を想像してしまう。どんな道であったとしても、本人がこう思ってくれることを祈る。

「わが選択に一点の狂いなし!クリティカルチョイス!」


さて、ここからは余談です。第1話の感想文で復活を願ったラジオ「真空ジェシカのラジオ父ちゃん」がTBSラジオのポッドキャストで復活しました!さらに、第7話のエンドクレジットには「ゲーム(ぷよぷよ)監修」で真空ジェシカのボケ・川北の名前が!ここまでくると、第5話の劇中コント「カラオケボックス」で潤平が発したセリフ「痩せちゃう!」がツッコミ・ガクのギャグであることも、声を大にして言っていきたいです。

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