意見は腐るほどある。それら全てに全全全肯定だ。『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション前章/後章』
感想
前章を見た時の感想は、「すごいものを見た」だった。そう思わせる程の強度がこの作品にはあった。
浅野いにお作品をちゃんと通っていない自分は『デデデデ』が映画化される際になぜ今これが映画化されるのかと疑問に思ったのだが、いざ見てみると納得。9.11、3.11を彷彿させる日付の大事件、放射脳、陰謀論といった今日の世界とかなり地続きなテーマが散りばめられていた。
中でも最も印象的なのは、宇宙人が飛来してきているにもかかわらず、3年が過ぎるとそれが当たり前となり何も変わらない日常が送られるようになっていること。それは我々にとっては新型コロナウイルスのパンデミックに置き換えることができる。しかもこちらもちょうど3年という時間が脅威を当たり前のものにしてしまった。
この作品の世界観だけでもつかみは十分過ぎるほどなのに、メインキャラクターがこれまた素晴らしい。キャラクターについては別に言及させて欲しい。
前章で散りばめられた伏線と衝撃的なラストを引っ提げての後章。どんな結末を迎えるのかと期待と不安が入り混じった感情を抱きながらの鑑賞、そして納得の結末。ついカタルシスに浸ってしまった。
漫画版とは異なるエンディングらしいので是非とも原作漫画も読んでみたい。
原作者の性格の悪さがプンプン
先にも述べたがこの作品には現実にも起こっているようなことを取り上げている。キャラクターには過度にA線と呼ばれる放射線に反応する母親やネットの情報を鵜呑みにしておかしくなった陰謀論者の同級生がいる。
現実にもそういった人々は少なからず存在する。とくに、Xや YouTubeのコメント欄ではそういった人々は嘲笑の対象にされているために、あえてキャラクターとして登場させるのは原作者の性格の悪さが滲み出ているように感じた。
Xの投稿でレーザー兵器の名前が天皇の名前をモチーフにしてるというのに関しては大分ギリギリのライン攻めてるなと笑ってしまった。
キャラ造形がヤバい
キャスティングにおいてもダブルヒロインにanoと幾田りらの起用にはあまりのハマり具合に驚かされた。幾田りらに関しては『竜とそばかすの姫』で出演していたこともあり安定感があると感じたのだが、anoの演技は元々のキャラクターが僕っ子で電波なキャラであるという本人との共通点以上に見事な演技だった。
そして1番の功労者と言っても過言ではないお兄ちゃん。頭脳明晰のエリートでイケメンだったのにもかかわらず現在ではデブでネットに張り付きアフィリエイトで収入を得ているという、なんとも言えない高学歴プアである。しかしこのお兄ちゃん、誰よりも妹であるおんたんを愛し、おんたんを導き、東京が崩壊する瞬間にもおんたんを思い続けたとてつもなくカッコいいお兄ちゃんなのである。
オマージュ元が多くてワラ
この作品にはたくさんのオマージュが盛り込まれている。わざわざ言うまでもないが「イソベやん」は明らかにドラえもんのオマージュである。「デベ子」や「ナイショ道具」、絵柄のタッチも考えるともはやパロディなのだが。
物語の終盤、おんたんは門出が死ぬ未来を回避するためにタイムリープした存在であることが明らかになる。気弱な性格にもかかわらず門出を救うためにわざと明るくぶっ飛んだキャラになったおんたんに『STEINS;GATE』の鳳凰院凶真を思い出してしまった。
さらに地球人対侵略者の決着がつくその瞬間に現れる上位者の演出は『エヴァンゲリオン』のサードインパクト時の空と酷似している。また、人類と異星人の対立に上位存在が干渉するという構造はSF小説『三体』にも通づるところがある。
まとめ
終末に直面した世界でも変わらない日常と青春を送るおんたんらの姿に逞しさを感じつつも、世界の終わりは案外そんなものなのかもしれないと勝手にセンチな気持ちになってしまうこの作品。
ざっくりと言ってしまえばガールミーツガールのセカイ系。とは言いつつも一人のために世界全てを犠牲にするのではなく、東京の崩壊、家族や友人の死で痛み分けと言うオチの付け方はなんだか現代的な印象を受けた。
間違いなく今年を代表するアニメ映画であるので、ネタバレ全開なこの記事を読んでいながら見ていない人は是非映画館へ足を運んで欲しい。今は前後章一挙上映も行われているところもあるらしい。
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