見出し画像

事業撤退、チーム解散から2年。ゼロからの事業で2.9億円を調達した話

初めまして、株式会社ukkaで代表をしている谷川 佳といいます。

2022年11月15日、プレシリーズAファイナンスとして総額2.9億円調達したことを発表しました。この機会に少しでも多くの方にukkaの存在を知っていただき、また、ゼロからスタートした今回の挑戦を振り返ることで誰かの背中を押せたらいいなと思い、初めてnoteを書くことにしました。

ukkaは食品製造プラットフォーム 「FOOVEST」という事業を展開しています。国内30兆円ある食品加工市場に軸足を置き、加工原料の受発注、小売向けの商品開発などを支援するプラットフォームで、主に大手スーパーマーケットなどの食品小売や食品メーカーが顧客でありパートナーです。

今でこそ成長フェーズに入りつつある事業を展開し資金調達もできたわけですが、今日に至るまで決して順調に進んだわけでなく、むしろ挫折の連続でした。

ukkaの沿革を簡単にまとめるとこんな感じです。

2015年12月:個人でオーナー制度プラットフォーム「OWNERS」を開始
2017年9月 :ukkaを創業(共同代表制でスタート)
2019年4月:エンジェル投資家などから資金調達
2019年4月:preシリーズAでベンチャーキャピタル等から資金調達(当時メンバーは業務委託含めて12人程度まで拡大)
2020年3月:サービスをクローズ、事業から完全撤退。共同代表退任
2020年4月:残った2人の社員と共に再スタート。受託事業で黒字化
2020年10月:受託事業と並行して、新規事業検証開始
2021年3月:食品製造プラットフォーム「FOOVEST」リリース

「OWNERS」の立ち上げからサービス終了まで

初期事業であるオーナー制度プラットフォーム「OWNERS」は、誰でも簡単に農産物などの食材のオーナーになれるサービスで、【消費者ではなく、当事者をふやす】というコンセプトで新しい食の体験を通して、農産物流通に一石を投じようと決意し始めた事業でした。

2015年12月リリース時のTOPページ(懐かしい、、)

私自身、元々のキャリアとしてもベンチャーとは離れた業界にいたこともあり、「スタートアップとは」「PMFとは」「ファイナンスとは」なんて全く知らず、お金もない中で始めた事業でした。しかしながら当時はリリース後から大変多くの反響をいただき、毎月何かの取材が入り、ユーザーはその都度自然に伸び、手探りながら手応えも感じながら何とかやっていました。

一年半ほど一人に近い状態で運営していたサービスでしたが、当時OWNERSのユーザーでもあった、とある上場企業のCTOと出会って意気投合。農業に対する思いが同じであったことから共同代表として創業することになりました。その後は2人でOWNERSをさらに拡大させようと採用を強化し、VCからの資金調達も完了。しかし、いよいよここからだ! という中で、事業はなかなか伸びない。。。結果が出ない日々が続くと組織的な課題も増えてくるもの。あらゆる事で悪循環が続いていきました。

結果的に資金調達してから半年も満たない2021年年始め、サービス終了の判断をすることとなります。

振り返れば失敗の原因は明確となっていますが、つまるところ自身の強みを活かしきれない領域で、プロダクトアウトなサービス(一次産業の生産者への想いが強いが、ユーザーの課題解決が弱い)となり、事業が伸びない焦りであれこもこれも本質的ではない目先の結果を作るためにリソースを使っていました。
共同代表制により意思決定が曖昧になることが多く、お互い考えが異なり強みも発揮できていなかったことが多くの課題を生み出しました。最終的にはメンバー間での衝突の仲裁のための1on1などで多くのリソースを使い事業に向き合えていない状況が続いたことが挙げられます。その時は必死でしたがもはや冷静な判断もできない状況でした。

当時のメンバー、株主の方々、そしてOWNERSに関わってくれた生産者さん、ユーザーの皆さんの期待に応えられなかったことは今でも本当に悔しく、情けなく。事業の撤退により周囲から期待されなくなった実感と、各所各人との軋轢などもあり、何度も自分を追い詰めた時期がありました。私だけでなく共同代表も同じように辛い時期を過ごしていたと思います。

そうして、2020年3月にサービスをクローズ。メンバーの多くが辞め、共同代表も同時に退任。僕自身は二人目の子供が生まれたばかりでしたが、借金をして共同代表の株式の大半を買い取りました。

退任した共同代表も悔しい思いがあったはずですが、連日連夜、株主にも入っていただき今後を話し合う日々。折り合いがつかず紛糾する場面も多々ありましたが、最終的にお互いが納得いく整理ができたと思っています。

このとき僕の中では一貫して、必ず再起してもう一度表舞台で勝負する。そうでなければ死んでも死にきれない。と覚悟を決めていました。当時、特に関係が深かったメンバーに「もう一度一緒に戦ってほしい」と頭を下げ、残ってくれた2人と僕の3人で再スタートを切りました。

サービス終了からリスタートまで

サービスクローズ時に会社にはキャッシュがまだ一定ありました。ですが、すぐにまた新しいサービスを立ち上げることはせずに、

「まずは、今できる最大限の価値提供で利益を得ることで、もう一度チームとして自信を取り戻そう」

「市場の解像度を上げ、課題を見つけ、チームの強みとukkaのこれまでのアセットが活かされる領域で再挑戦しよう」

この2軸での方針を決めました。

そう決めてからは、とにかく案件を獲得すべく営業をしました。これまでお世話になった方、過去に連絡をくれた方に今のukkaの状況を説明し、とにかく仕事をくださいと一人で無我夢中で営業をしました。残ってくれたメンバー2人には必ず僕が案件を取ってくるので見ていてくれと話していたからです。

同じ時期にとある会社から「OWNERS」の商標が欲しいという相談がありました。少しでも次の資金になればということと、もう過去は振り返らない意味でも手放そうと決めてOWNERSの商標を売却しました。200万円ほどになりました。自分で決めたことでしたが、まるで大事な我が子を捨てるような感覚で契約書にハンコを押す時には自然と涙が出ていました。

そうして必死の営業とメンバーの頑張りが功を奏し、結果的に食品領域やプラットフォーム系の会社からコンサルティングやコンテンツ開発などの案件いただくことができ、リスタートした初月で目標売上・利益に達することができました。

当時何より嬉しかったのは「OWNERSがすごく素敵なサービスだったから、それを作っていたチームと仕事がしたい」という言葉をもらったことや、「案件は決まっていないが、とりあえず毎月この額は支払います。応援させてください」と声を掛けられたこと。本当に涙が出るほど嬉しく、僕もメンバーも自信を取り戻しながら徐々に前に進んでいきました。このときに手を差し伸べてくれたクライアントの皆さんには、本当に感謝しかありません。

こうして、ようやく今の事業である「FOOVEST」に近づいてきます。

自信を持って立ち上げた、新規事業「FOOVEST」

受託案件の中に、某有名食品メーカーのコンサル案件で「生産者まで特定できる産地の原料を使用した商品開発がしたい」という相談があり、これがきっかけで食品メーカーが抱える原料調達の課題に気づき、具体的に仮説を持つようになりました。

ご存じの方もいるかもしれませんが、食品サプライチェーンはプレイヤーが多く、多重引受構造な上に、情報滞留が激しいため各プレイヤー同士は上手く機能・連携できない構造にあります。

こうした課題解決をすることが、食品加工市場の普遍的なマーケット課題に対するアプローチとなり、旧態依然とした産業構造に一石を投じることになるのではないか、という考えが深まってきたのです。

そしてこれが、食品メーカーだけでなく、食品小売企業や一次加工メーカーなど、食品サプライチェーンのプレイヤーが持つ様々な課題に着目するきっかけになりました。市場リサーチや、直接のヒアリングなど、可能な限りを尽くした結果、事業アイデアが複数でてきました。いける、これはいける!

実務を通して出た仮説を、既存の食品メーカー、商社、卸、小売など様々なプレイヤーに数十社にヒアリングする中で、いよいよその課題とポテンシャルがクリアになり、具体的に事業開発のプロセスに入りました。

そうして、2021年3月。OWNERSのクローズから約一年後。食品製造プラットフォーム「FOOVEST」をリリースしました。

当初は食品メーカー向けの加工原料受発注サービスから開始しましたが、その後にスタートした食品小売企業向けの商品開発のポテンシャルが大きく、現在はここに注力しています。今年3月には、食品小売企業の商品開発支援を行う「FOOVEST リテールパートナーシップ」をリリースしました。

国内スーパーマーケット市場においては、土地土地に根づいた多くのリージョナルチェーンやローカルチェーンが各地に分散しています。リージョナルと言っても規模は大きく、2〜3県で100店舗規模のスーパーであれば、売上は3000~4000億ほどあります。

生活者ニーズが多様で変化の激しい今の時代において、競合企業・サービスとの売場やサービスの同質化・均質化が課題となっており、PB商品や留型商品など「このお店にしかない商品」を提供する必要性が益々高まっているのが市場の大きな流れです。

スーパーの売り場イメージ

一方で、国内スーパーマーケットにおけるPB商品の売上高構成比は約40%の企業が5%未満と、一部の大手グループ企業を除いて依然低い状況で、PB商品の売上高構成比が50%を超える企業もある欧米と比較すると、国内におけるポテンシャルはまだまだ大きいといえます。

このように食品小売企業が自社で「企画・製造・小売」を一気通貫で行う取り組みは「食のSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)」と呼ばれ、今後の小売の生き残り戦略には欠かせない方向性となっています。

そんな市場の波がある領域において、全国の産地や食品メーカーをファブレスに繋ぎ、独自の仕組みで商品企画を連続的に立ち上げワンストップ開発しているのが今の「FOOVEST」です。小売企業の「商品開発」と「魅力的な売り場づくり」の実現を加速させる役割を担っています。

これまで多くの産地の生産者や食品メーカーの方々を見てきて、最も重要なことは「安定的な出口」があることだと実感してきました。これはtoCからto Bになるとより一層で。

FOOVEST事業においてもまずは小売企業との取引が拡大することで、その上流にいる川上のプレイヤー(原料メーカーや原料産地)が抱える課題にも、より有効な形でアプローチができると考えています。

2.9億円の資金調達と、これから目指すこと

今回、ここまでの事業トラクションと今後のポテンシャルを評価いただき、preAラウンドとして2.9億円の調達をすることができました。

ファイナンスは想像以上に苦労した部分もありましたが、前サービスのクローズから約2年半。長かったですが、ようやくスタート地点に戻ってきた気持ちです。ここからが本当の勝負です。

現在私を入れてメンバーは7名。昨年10月から開始した小売向けの商品開発事業は急成長しており、先月10月の受注額は2億円を超えました。

ビジョンは 「食産業の希望となり、未来を導く」

9月には鎌倉日帰り合宿でビジョン・ミッション・バリューを策定しました。ここで決めたビジョンは今後のukkaの指針です。

食産業において、ukkaがいるから、FOOVESTがあるから「自社や食産業に希望が持てる」や「新しい可能性を見出せる」という状況を必ず作っていきたいと思います。

起業家としてもいよいよ未知な領域に入り、組織づくりが重要なフェーズとなってきましたが、頼もしいメンバーの力も借りながら、ここから良いチームを作っていきたいと思っています。

鎌倉合宿の様子(会場よかった!)

ukkaでは、新しい仲間を募集しています! 

ここからが本当に大事な話なのですが、、(前置き長くすみません)
ukkaでは新しい仲間を募集しています。自身の強み・経験を最大限に活かして、大きな市場、大きな課題にチャレンジしていける最高の舞台です。

新規プロダクトを開発するエンジニアや、サプライヤーマネジメント、パートナーサクセスなど、絶賛募集していますが、募集がないポジションでも我こそはという方のご連絡こそお待ちしています。

ukkaの採用についてはこちらをご確認ください!

現在メンバーは僕を入れて7名。10人未満で伸び代のあるスタートアップで勝負したい方にとっては、ぴったりなフェーズだと思います。TwitterでDMをいただくでも大丈夫です。まずはカジュアルにお話しましょう。

拙い文章でしたが、最後までお読みいただきありがとうございました。少しでも誰かに響いていると嬉しいです。

それでは、今後ともukkaをどうぞ宜しくお願いします!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?