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二木島ラボ〜食味最高の魚しかいない漁村で魚食生活〜

 ほぼ連投です。前回の取れ高がなさ過ぎて放置し続け溜め込んだ結果こうなりました。大変申し訳ありません。TANIです。今回は2022/10/15〜10/16に行われた自然環境リテラシー×漁業回についてお話していきたいと思います。

!自然環境リテラシーとは!

 今まで、自然環境リテラシーは海岸からカヤックを漕ぎ出して浜に戻ってキャンプをするというパターンでした。しかし、今回の漁業回では自然環境リテラシーが漁業の中でどのように活かされているのか?漁業ってそもそもどんな感じなのか?このようなことを実体験を通して学ぶという目的で熊野市にある株式会社Gate二木島ラボの方にお邪魔して、1泊2日の短い期間ではありましたが「漁村」の暮らしを体験することができました。
 今回は「漁業」の自然環境リテラシーを中心に紹介しつつ、人間にとって最も根源的である「食」の最前線に位置する漁業の現状について、素人が2日間見ただけの感想になりますがお話することが出来ればなぁ、と思います。

!株式会社Gateとは?!

1日目〜本格的漁村〜

 僕にとって三重県南部というのはほぼ未踏の地といっても過言ではありませんでした。前回の尾鷲回(的矢湾に変更)でも少し触れたように、母の実家が県内にある関係で、毎年夏に志摩に海水浴に行っていて、横浜出身の人間にしては三重県とは繋がりがありましたが、伊勢より南の地域は小学生の時に一度尾鷲に行っただけで本当に未知の領域でした。そこで、「行き帰りも旅行として楽しみたい!」という気持ちが高まり、なんと奮発して特急南紀に乗ってしまいました。TANIのプランとしては尾鷲駅で途中下車して、前回夕食時に話題になった湯浅京己投手の実家である「ぶたふく」で惣菜を購入して昼食にしようという目論見でしたが、生憎の臨時休業。それもそのはず、湯浅投手の所属する阪神タイガースは丁度クライマックスシリーズを戦っている時期でした。特に1stステージでの横浜スタジアムでのピッチングは圧巻でした。横浜ファンのTANIは絶望を与えられました…

!前回の的矢湾の話題!

 前置きが長くなりすぎましたね。予定は変わりましたが無事に二木島駅に到着しました。この辺りは電車がすごい海沿いを走っていて、リアス海岸特有の山と海のコントラストが秋の陽射しに照らされてとても素晴らしい景色の連続でした。

二木島

 駅舎以外に何も無い二木島駅に軽く衝撃を受けつつ、今回の活動拠点である「Gate二木島ラボ」を目指します。駅から徒歩2分、近い!
 荷物を置いて早速ミーティングが始まります。今回僕たちが体験する漁は定置網。すでに仕掛けてある超小型のものを1日目夕方、2日目早朝、2日目朝の3組に分かれて引き上げて、獲れた魚をラボの調理場で捌いてみんなで料理して食べるという流れです。流れの説明と班分けが終わったところでGateの田中りみさんから定置網の仕組みについてレクチャーを受けました。りみさんは二木島出身で、女性だけの漁師チームを率いて二木島で漁業をされている方です。女性が参入すしやすい形を作ることが人材不足解消につながるのではないか、新たに漁業を始める人がやってくることで地域が活性化するのではないか、など漁師として働く傍ら漁業や地域の活性化のための活動もされていて、僕自身が二木島での2日間で感じたこと、考えたことが少しでも活性化につながるヒントになれば嬉しい。そんなことを思いました。

!田中りみさんについて!

 さて、次は定置網について紹介したいと思います。定置網は大きく分けて4つの網に分かれていて、まずひとつ目の「かき網」に回遊する魚がぶつかり、ぶつかった魚はかき網に沿って泳いで、「運動場」に入ります。そこから「のぼり網」に向かって泳いでいった魚が「おとし網」に入り、おとし網に入った魚を獲えます。

左手前:かき網、右手前:運動場、右中:のぼり網、1番奥:おとし網

 りみさん達はこの定置網を超小型にすることで、小型の船で少人数で、また、女性や子供、経験のない人でも扱えるようにしています。やはり誰でも出来るような形にするというのは重要ですね。「誰でもできる」というのは一次産業の課題を扱う授業で折々触れられてきたテーマでした。しかし、それらの授業で触れられて具体例はICT技術を活用したものが中心で既存の道具を改良する形のものに触れることができたのは新鮮な体験でした。

 さて、レクチャーがひと通り済んだところで漁港へ移動し、船に乗り込んで魚の水揚げに向かいます。

ウミノミズ、メチャクチャキレイ

 漁場に到着すると、のぼり網の上辺りに船を止めておとし網を引き上げます。しかし網が水を吸っていたり藻が生えたりしていて重い!網の重さや網側に人が集まっていて船が傾いたりしていたので転覆しないか不安になりながら網を引き上げていました。班の誰よりもスムーズに網を引き上げてきたのは他でも無いりみさん。経験者だけが知っている身体の使い方がありますね。腕力に頼るのではなく、体重を船に預けて体全体で網を引くのがコツかなぁなんて後の祭りながら思いました。時すでにお寿司🍣…

 皆さんは例えば、鯵と聞いてどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?スーパーでプラスチックのトレーに乗って売られている姿でしょうか?漁港で籠一杯に入っている姿でしょうか?海の中を群れをなして泳いでいるたくさんの鯵でしょうか?
 定置網ではマアジを獲ることができました。しかし、網いっぱいに入っていたわけでは無く、キビナゴがいて、サバがいて、シオ(カンパチ)がいて、アイゴがいて、キタマクラがいて、アカエイがいて、マダラトビエイとかいうわけわからんのもいて…、本来海の中ってそうなってるんですよね。色んな魚が入り乱れて暮らしている。TANIは釣りも少しするのですが食用として流通している魚1尾釣り上げるまでに何尾もの「外道」を釣り上げます。それはつまり、食卓に並んだアジの塩焼き1尾のために無関係に水揚げされて捨てられて命を落とす魚が存在しているというコト。海洋生物資源学科所属のメンバーたちがエイを食べようとしていて、棘が危ないから逃がすべきだと心の中で思っていましたが、人間が勝手に捕らえた魚に責任を持つという意味では当然のことだったのかもしれません。30分くらいの漁だったと思いますが、とても大切なことに気がつくことができた気がしました。

マダラトビエイ


色んな魚

 ラボに戻って今度は魚を調理します。海洋所属の人たちが大物のボラやアイゴ、アカエイをスムーズに解体していく中でTANIは3枚おろしに悪戦苦闘…今まで釣ってきた魚はハゼ、シロギス、メバル…締めてワタを出すだけで十分だったので意外とやった事がない、それでも学生スタッフの方や海洋所属の人にアドバイスをもらいながらなんとか3枚におろすことができました。ご指導ありがとうございました。「包丁の刃を背骨に当てながら身を剥がす」感覚が掴めた気がします。

まな板の上のエイ


なんとか、3枚

 さて、ここからはひたすら魚を食べます。ボラやシオは新鮮なうちに刺身でいただきました。ボラは用水路や河口で泳いでいるイメージで勝手に臭いかなとか思っていたらクセのない白身で美味。続いては塩焼き。アジやサバを中心に様々な魚が炭焼きになりました。キビナゴは煮物と素揚げで食べました。火を通した魚でも鮮度が高い方が魚の味がしっかりして美味しい。そんな気がしたひとときでした。

サバ(多分)の塩焼き
キビナゴは素揚げに
味噌煮や照り焼きにも

 夜は釣竿を持参していた海洋所属の人の釣りの様子を眺めていました。熊野の海ではどのような魚が釣れるのか?ワクワクしながら見ていましたが、ネンブツダイが入れ食い状態…余っていた竿を貸してもらってネンブツダイを泳がせてみましたが、アタリがあった後に根掛かりしてしまい仕掛けをロスト…ごめんなさい🙏
 あと、夜は鹿の鳴き声が凄かったです。悲鳴のような声でちょっと怖かった…

入れ食い()

2日目〜二木島の風景、未来の景色〜

 2日目に漁に出る班が早朝に眠い目をこすりながら起きていたのもつゆ知らず、明るくなってから余裕のある起床。どうも少し雨が降ったのか漁に履いていった長靴が濡れています。コイツいつも降られてんな

 朝食は早朝組が獲ってきた魚を塩焼きにしたり、キビナゴを素揚げにして食べました。そして何より美味かったのは2日目から始まったあら汁。塩焼きの残骸が投入されて色々な魚から出汁が出てこれがとても美味しい。何杯でも食べられそうでした。

「至高の」あら汁

 朝食を食べた後は二木島の町を散策。川沿いを登っていくとすぐに砂防ダムに辿り着くことができました。やっぱり山と海が近い。それからは再び町に降りて今度は廃校を探検。といっても校舎内に入るのは勿論無理で渡り廊下や校庭を回りました。遊具は錆びれていましたが、プールは健在。しかし、後でりみさんから聞いた話によると、二木島の子供達は小さい頃からみんな海で泳ぐので水泳の授業やプールは不要とのこと。さすが漁師町の子供達。やはり水泳は1番原始的な海のリテラシーと言えるかもしれません。TANI自身が海で遠泳をしていることもあり、逞しい二木島の子供達に素晴らしさを感じました。

砂防ダム
「上」からの景色
廃校
校庭
ブランコ


 ラボに戻り昼食にあら汁を再び食べた後はディスカッション。持続可能な漁業、漁村の実現へ向けた課題についてグループに分かれて話し合いました。僕の班はTANI以外のメンバーが海洋所属であったこともあり、挙がった意見をまとめる担当にまわりました。挙がった意見を紹介させていただきますと、都会の人は二木島で獲れた魚を食べたとしても二木島の風景は思い浮かべることはできない、漁業が辛い仕事であるという認識は持っていてもどのように辛いかは分かっていない。りみさんが一度漁師になる夢を諦めることになった「女性を船に乗せてはいけない」という地域の慣習は元々は女性を守るためにあったはずで、それが目的を見失ってしまっている。漁業の面白さを発信して開かれた漁村をつくる。などの意見が出ました。一方、僕が出した意見はと言いますと、漁業の面白さを伝える方法として、廃校のプールを用いて、定置網の仕組みを自分たちが捕まってみることで体験を通して学ぶというような案を勝手に考えてみたところ、りみさんから東京海洋大学の学生達が海に入って定置網の中を泳いでいたという話を聞いてびっくり仰天。世の中どこまでいっても上には上がいます。

纏めた意見を発表する

まとめ

 さて、そろそろまとめに入っていきたいと思います。今回は自然環境リテラシーが漁業という場でどのように活用されているのか、そもそも漁業とは?といったことを漁村での生活体験を通じて知ることが目的でした。漁業におけるリテラシーでは網を引き上げるときの体の使い方や、二木島の小学生たちが皆、海で泳ぐことができるというところから、道具の改良が進められているとはいえ、経験を重ねること、子供の頃から触れていることの強みを改めて感じることができました。一方、漁業に触れて感じたこととしてはやはり、自然相手であるということが1番だと思います。漁に出る時間、網に入っている魚、全て自然の都合で動いています。最後に活性化についてですが、やはり人を呼ぶことが今すぐ自分でもできることなのかなと。プールなども活用した漁業体験プログラムができたとしても、人が持続して来なかったら整備した意味がなくなってしまう。来てもらった人に何かを感じてもらって他の人に勧めてまた別の人がやってくる。そんな小さな循環を続けることが大切かと思いました。やりたい事とやれる事の問題がある中でふわっとした感じになってしまいますが以上を今回の私の考えとしたいと思います。この記事を読んでいただいた方が1人でも、二木島に行ってみたい。行ってみたとなってくれればこれ以上の幸せはありません。以上、お付き合い頂きありがとうございました。

最後に、今回の素敵な漁業体験を用意して下さった株式会社Gate様に深くお礼申し上げます。ありがとうございました。

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