400字の部屋 ♯14 「水 1」

 ハワイ島ヒロ。ダウンタウンのドミトリーに先月から滞在しているAfloは、早朝のランニングを日課にしている。コースは気ままで、今日は「虹がかかる滝」と呼ばれるレインボーフォールズまでの往復にしようと走る。不純物の無い朝日の中のランニングは最高で、じんわりと汗をかいた頃に虹の滝に着くと、その名の通り、滝から舞い上がる水飛沫が朝日を反射して、滝を囲むように七色の虹が顕れていた。Afloは足を止めて、美しい滝と虹を眺め、深く深呼吸をした。水飛沫の清涼な匂いと、周囲に無数にある巨大なマンゴーの樹から放たれる香気が体内を満たし、Afloは直ぐにドミトリーに引返すのを止めて、暫しここにいる事にした。月の女神であるヒナが住むとされる楽園の滝。滝の音。飛沫の軌跡。空間に浮かぶ虹は、ヒナを讃えているようにも見えた。大海とは異なる滝が魅せる水の素晴らしさを、Afloはじっと感じていた。

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