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能登から認知症の父がやってきた(25)

父帰る。

母の鼠径ヘルニアの手術も無事終わり、父が19日間のショートステイから帰ってきた。「帰ってくる頃には桜が見れるねぇ」と言っていたのだが、朝は大荒れで母の術後の病院に行けるかどうかの方が心配だった。母と私は悪天候でひどいめにあったのだが、午後はすっかり晴れて、あたたかい陽気の中、父は涼しい顔で帰宅した。

少し痩せた気もするが、開口一番、「敵をやっつけんと!」と、拳をあげる。敵は何か分からないが元気そうだった。玄関で車椅子の車輪を拭いていると「こんな仕事やめたいやろ?」
え?施設で色々とお世話になってそう感じていたのだろうか?「はい。すぐにでもやめたいです」と応えると、「たいへんな仕事や」だと!(笑)

ショートステイ中は、便秘に難儀していたそうだが、帰る当日には普通にちゃんと出たそうだ。しかも翌日は何事もなかったかのように、思いっきり二度も出た。何も言わないし、どこに居るのかも分かっていないようで、場所が変わって緊張していたのかもしれない。体は正直だ。
母の予後のためもあり、長期間本当に助かったのだが、帰ってきた父は「うんこしたい」とも言わず、オムツの中で排便していた。足腰も少し衰えてトイレやオムツ替えが難儀になっていた。うちではやれない手厚い介護だったのだろう。施設に入ってしまうと、次第に起きれなくなくなってしまうのかなぁ。かわいそうな気もするが、在宅介護にも限界がある。本人の意思も分からないし、意思疎通もできない。本当に困った病気だ。

悩みはつきないが、満開の桜を両親に見せてあげることができないまま、能登に戻る日がやってきた。


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