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「ラム」。アイスランドの映画がおもしろい。

以前「湿地」というアイスランドのミステリ映画をみて、それはとてもおもしろかった。たぶん人口はそんなに多くない国だ。その国で、監督、撮影、脚本、音楽、俳優、編集まで取り揃えてこれだけのレベルの映画がつくれるのか、とおどろいた記憶がある。日本でいえば県単位ではない。市町村単位のコミュニティで映画をつくっているスケールだと思う。(人口を調べたら37万人ほど。日本でいえば高崎市とか長野市あたりと同じ人口だ。)
そして今回みたのが「ラム」。これも背景の自然は「湿地」でもでてきたが、ほんとうに雄大な景色であった。アイスランドは映画にとって風景がとても使える国なのだ。広大な草原のなかにポツンと建つ飾り気のない一軒家、というイメージがアイスランド映画に共通する特性だろう。
「ラム」については自然の中でたくましく生活しはたらく若い夫婦の物語になる。これはいったいどういう終わり方をするのだろう、と途中からかんがえていたが、予想外の展開となった。
アダという子供が異民族のメタファーだとかんがえると、いまヨーロッパをくるしめている難民の問題をえがいた映画なのか、とも思えるが、それはあまりにもまっとうな解釈だろうか。

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難民をテーマにしたとかんがえると、ヨーロッパが文化的な同化を強制して子供をヨーロッパ人にしようとする。しかしそれは同化をのぞまない親たちの激しい抵抗にあい、最後、ヨーロッパになじんだ子供たちは文化的なアイデンティティを奪われることになる。

「湿地」ではサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」がとても効果的に使われていたが、「ラム」ではヘンデルの「サラバンド」がエンドロールで流れてきた。観客が何が起きたのかと混乱しているときに、あの荘重で悲劇的なメロディが「まあ落ち着いて」となだめてくれるわけだ。


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