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小田急電鉄(鉄道)×サイボウズ(IT)「フリースクール」事業を通して子どもの未来を考える(後編)

前回は異業種からフリースクール事業への参入に取組み中の当事者三名が意見交換した模様の後半部分をご紹介します。

参加者
 小田急電鉄(株) 別所 尭俊(べっしょ たかとし)さん
 (海老名乗務所 運転士 兼 デジタル事業創造部 事務員)
 サイボウズ(株)前田小百合さん
 司会進行:サイボウズ(株)中村龍太
 (執行役員ソーシャルデザインラボ所長)


サイボウズの楽校で使われているツールとは?

前田:では、今回は私たちの「サイボウズの楽校」で利用しているkintoneについてご紹介します。
①授業日報
前田:こちらが授業日報になります。当初は、日々の活動記録をスタッフ間で共有する目的で利用していましたが、保護者との信頼関係づくりに活用できそうと考え、公開するようになりました。保護者の方に安心していただけるように写真を多めに添付しています。文字だけでは伝えきれない雰囲気などは写真を提供することで補える部分もあると考えています。保護者の方も「いいね」ボタンでリアクションができるような仕組みになっています。
なお、プライバシーにかかわる内容などについては、運営チームだけが見られるエリアを設けるなど工夫しています。

授業日報アプリ

別所:私たちのスクールも毎日同じスタッフで運営していないため、スタッフ間の連絡伝達に役立ちそうですね。あと、保護者の方にもお知らせできるところもいいですね。

②子どもの名簿

子どもの名簿アプリ

前田:子どもの名簿アプリで子どもに関する情報をすべて管理しています。このアプリをベースにほかのアプリ(授業日報アプリや、収支計算アプリなど)とも連携しながら活用しています。これは、実証実験を一緒に行っていた大日向小学校や、中村さんがプライベートで支援している「ぴおねろの森」というフリースクールでも同じ方法で運用されています。

③在籍校との共有:安否確認システム

安否確認システム(在籍校との共有)

中村:私がプライベートで支援している「ぴおねろの森」での活用事例になります。現在ぴおねろの森に在籍する子どもたちの出席状況を各在籍校へkintoneのゲストスペース機能を活用しながら連携を行う仕組みを作っています。仕組としては、子どもの入室記録アプリに子ども毎の在籍校に閲覧権限を付与して安否確認システムとして活用することを提案しています。

ぴおねろの森:
https://blogs.itmedia.co.jp/freiheitjob/2024/04/kintone_dx.html
https://blogs.itmedia.co.jp/freiheitjob/2024/04/kintone_dx_1.html

「ぴおねろの森」

別所:これ実現できたら本当にいいですね。私たちのスクールでも保護者の方から出席認定の扱いについて対応の依頼をお受けすることが多いのですが、学校によって認定方法がバラバラのため試行錯誤しているところです。学校によってはフリースクール登校を登校扱いにすることはできないという学校もありますし、電話で必ず連絡してくださいとか、紙での提出のみ受け付けますといったふうになかなか足並みが揃えられず対応が難しい部分ですね。

中村:先日デジタル庁の方にこのあたりの課題を聴いてもらう機会があり、ちょうど視察に来られる予定があります。私たちは社会をより良く変えていくことが目標なので、ぜひこのあたり改善していきたいと考えています。

別所:アナログのいいところも沢山あるけど、デジタルで補完していく必要がある部分もあると感じています。ここは使う側の考え方をアップデートしていく必要があると日々感じている部分です。

フリースクールを卒業したあとの子どもたちの未来について

別所:僕たちは、子どもたちがすこしずつ成長していったときにどう育っていくのかということをイメージしていくことが大事だと考えています。単純に高校生の受入れを始めるだけでいいのか、サテライトキャンパス/サポート校のような位置づけとしていくのかも含めて検討しているところです。サイボウズさんではどのように考えていますか?

前田:私たちもどういう子どもたちの育ちをめざしていくのかまさに言語化していく必要があると考えているところです。できることを増やしていくだけでなく、どこを目指しているのか保護者からの期待もあるので、こたえていきたい。それが安心して通ってくれることへつながっていくと考えています。

中村:サイボウズの楽校では「旅」をテーマにした授業があり、「OH旅」という宿泊を伴う遠足のような授業で今度箱根に出かける予定です。別所さんはロマンスカーを運転したりすることはありますか?

もう一つの事業に携わることでの気づき

別所:ロマンスカーの担当乗務員になるための試験は合格しているので、乗務することもあります。AOiスクールの生徒が電車に乗りに来てくれることもあります。以前子どもの一人が、「運転士さんと友達感覚でふれあえるところがいい」と話してくれたことがあって、「友達感覚じゃなくて、友達だよ」と話したことがありました。そうすると、小田急線に乗るときに「べっしーのってるかな?」とか何かあったときには頼ればいいっていう安心感につながったりします。鉄道業務は安全を守るために業務をしっかり行っていかなければいけない大変さもありますが、いい意味でいつどこで誰に会うかわからないという緊張感が改めて「しっかりやろう!」という意識につながり、普段の仕事を別に抱えているからこそ感じるやりがいみたいなものがあります。

前田:それらしさとしていいなと思いました。サイボウズという会社員としてサイボウズの空気感であったり、一緒に携わっている人たちも「IT×ものづくり」の塾を経営している方たちなので、経営者の視点が入ったり、コラボしているからこその視点が入ることもできる点が特徴的なのだと改めて思いました。
 
別所:小田急の人とフラットに話ができるっていうのはAOiスクールだけの価値かなと思います。逆にサイボウズさんだとCMでやっている会社の人と出会える機会ってなかなかないし、会社を経営している人と子どもが出会う機会もあまりないと思うので、すごく大きな価値なんじゃないかと思います。僕が不登校のころに出会いたかったです。
 
前田:とってもいいですね。新しい視野が開きました。

中村:AOiスクールさん、サイボウズの楽校、ぴおねろの森と三者三様のモデルがあって、それぞれの特徴に沿った保護者からの期待がありますね。学校にはその特徴から選ぶことができないので、学ぶ場所が選べるようになるといいですよね。沢山意見交換させていただいたおかげで、いろいろな気づきを得ることができました。本日はありがとうございました。

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