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ちょっと!お父さん!!⑧

「今に見とれよ!お父さんはなぁ、
一発当てて一棟大っきいビルを買ってやな!!
      、、、ナンタラカンタラ、、、」


父はよく、こんな感じでビッグドリームを聞かせてくれた。


 現実味があれば楽しい話ではあるが、全く現実味が無いので、家族全員 ノーリアクションで聞き流していたものだ。


父のそんな夢見る少年の様な志は、時に家族の大迷惑となる。


いや、ほぼほぼ大迷惑となる。

父と魔法の箱


「お父さんって本当に人の話聞かんよなぁ!!」

と、私が言うと


父は

「そうか?
お父さんは蓄膿症やからなぁ!」


と、全く理解できない返事をする父は


ある日 不思議な箱を持って帰ってきた。

「これはな、オーラが出る機械や。」

父によると、その箱からは何かしらのビームが出て、そのビームが人体に良い影響をもたらすらしい。

そのビームのことを父はオーラと呼んでいた。

「このオーラを当てるとやな!鬱病も治るんや!


お父さん鼻がわるいやろ?!


お父さんの鼻に当てるとやな、鼻水がダァーダァ出て止まらんくなったんや!!」


「お前も仕事でストレスあるやろ!お父さんがこれこうたれば(買ってやれば)おまえも疲れとれるし、お父さんの蓄膿症も治るし、ええこと(良いこと)づくめや!!」

私「ほんで、それ いくらしたん?」

父「40万や。」

「?!?!?!」

母「あほな!!そんなもん!はよ返してこい!!」

父「そやけど、これ誰かに進めてこうてもろたら(買ってもらったら)金も入るで安心しろ!!」



ねずみこうやないかい!!



その後東京にいる姉も含め、家族総出で父を説得するも、父は返す気は全くなく首を縦にふらなかった、、、


が、しかしさすが ウチの父


その魔法の箱のお金をまだ払っていなかった。


そりゃそうだ、そんなお金を父が持っているはずがないのだ!!

それから数日後、その魔法の箱が壊れて返品。


金を払うように言われてブチギレて帰ってきた。


家族全員 事なきを得て 安堵のため息をついた。



父が亡くなって、数年が経つ頃 父がよくお金を借りていた知人が 母を訪ねた。


 父が私や姉の進学などを言い訳にお金を借りていたらしい。

 我が家は父が亡くなった後すぐに遺産放棄をし、借金も放棄したのだが、


その気があったら少しずつでも良いから返して欲しいと言われたそうだ。


私は姉に相談した。


私たちの為に借りたお金は
返すべきなのではないか、、、と考えた。


数日後、姉から電話があった。


「○○(私)、よく考えたけどな?私や○○の為やとか言ってお父さん魔法の箱やら宝石やらなんやら買うたかもしれへんで?!」


「払わんでええでな!!」



とのことをだった。



それもそうだな、と思った。


魔法の箱以外にもうちにはよくわからないものがチラホラあったのだ。


その後 母とその方とで示談は成立したのでご安心を。


父からお金を借りた方には大変申し訳ない話なのだが、父も生前 お父さんが背負った借金はお前らには関係ない!! と一つだけいい事を言っていたので 有り難く受け取らせてもらうことにした。


誤解が無いようにだけお伝えしておくが、

私も姉も自分で借りたお金は奨学金にせよ、マイホームローンにせよ、ちゃんと返す人生を送っているので悪しからず、、、。







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