書評『技術者のためのテクニカルライティング入門講座』

はじめに

コロナ禍になり、リモートワークが増えるにつれて言葉の重要さを痛感することが増えてきまして、書き方に関する書籍を幾つか読んでみました。
今回その中の一冊を紹介したいと思います。

皆さんもこういった本だけでなく、仕事の中で先輩や上司の方から文章の書き方についての指摘を受けたことがあるかもしれません。
例えばよく言われるのが「結論を先に書く」であったり、「箇条書きを(効果的に)使う」であったり、文章を書くにあたってのテクニックに関するものが挙げられます。
この本では「入門講座」だけあってそういったテクニックももちろんなのですが、さらにもう一歩踏み込んだ実際の仕事に使える実践的な内容についても触れられており、非常に参考になりました。
私自身の経験からも共感もしくは納得した内容について幾つか紹介させてく
ださい。

障害報告書を書くにあたっての注意点

障害報告書。できれば皆さん書きたくないと思いますが、ITの仕事に関わっているといるといつか書く時がくるかもしれません。
原因をわかりやすく書くというのはもちろんなのですが、その時に障害を起こした立場としては、そして、お客様の怒りを軽減できるのではという思いで言い訳めいた表現を「意識的」もしくは「無意識に」書いてしまうかもしれません。
そういった言い訳的な表現はできるだけ避けましょうということをこの本では書いてます。
よくテレビなどで謝罪会見を目にしますが、少しでもその言葉の中に言い訳めいた表現を見つけてしまうと「本当に反省してるの?」と思ったことがあるかと思います。障害報告書もこれと同じで、極力そういった言い訳は書かないように気を付けないといけないですね。

エモーショナルな表現を加える

内容を簡潔に。。といったところは提案書や仕様書でも同じことが言えます。
そして、メールの場合も相手が忙しい中でわざわざ目を通してくれているわけなので、やはり簡潔にかつわかりやすくというのは大事なのですが、それだけでは難しい部分も出てきます。
例えば、スケジュール延期を連絡したい場合、「スケジュールを延期します。申し訳ありません」という最低限の内容ではお客様が納得されない場合が出てきます。
お客様の性格にもよりますが、例えばそれまで色々と親身にお付き合いいただいた場合であったり、お客様が更にその上長の方に報告しなければならないといった、「経緯」「背景」がそこに存在します。
その場合は「お忙しい中色々とプロジェクトの推進にご協力いただきながらご期待に沿えず非常に心苦しく。。」といったエモーショナルな表現も必要になってきます。
こういった経緯、背景を踏まえて、であったり、その場の空気を読むことに関しては今流行りのChatGPTでもまだ難しいかと思います。
単なるテクニックにとどまらず皆さんの人間力が試される部分にもなりますが、そういったところについてもこの本では触れられています。

英語翻訳ツールの利用

あとはちょっとした日本語の添削テクニックとしてここ2、3年海外の人たちと英語でのメールのやり取りをしていたときに学んだことをここで紹介させてください。
私はそれほど英語に自信はありませんが、最近はDeepLといったツールがあるのでそれほど苦労することなく英語に翻訳することができます。
ただその時に気づいた点として、主語や目的語を日本語では省略しがちなのですが、そうすると英語では意味が違ったり、通じなかったりといったことが出てきますのでそれを直すことでより良い日本語になる場合もあります。
例えばとあるツールの画面の説明として「このボタンを押すとCSVファイルが出力される」といった簡単な文章を書いたとします。
日本語としてはそれほどおかしくはないのですが、誰がボタンを押すのか、CSVファイルを出力するのは誰なのかといったことが省略されているので英語に翻訳する前にそれをちゃんと書いてあげる必要があります。
余談かつ時事ネタですが、芸人の「とにかく明るい安村さん」がイギリスの番組で大ウケしていたニュースを先日見つけて、私もYoutubeで観ました。
決め言葉の「安心してください。はいてますよ」で目的語であるパンツを言っていないので審査員がツッコミの意味か、補足の意味かはわかりませんが、「Pants!」と叫んでましたね。コール&レスポンス的な感じになって非常によかったのですが、これも目的語を略しても日本語では通じるという一例でした。

AIの普及と言葉の重要性

先ほどChatGPTについて触れましたが、現時点においてChatGPTを利用する場合はChatGPTに対してうまく説明することが求められます。
先ほど挙げた主語、目的語を明らかにするということもそうですし、人間に説明するとき以上に言葉を尽くして説明することで的確な回答が得られます。
人間相手の場合でも同じで、相手が感情を持っている以上は同じように、あるいはAIに対して話す以上にちゃんと説明してあげる必要があるんじゃないかなと思います。
私がDeepLを通じてそれに気が付いたように、今後AIを使う場面が増えていく中で言葉を尽くすことの大事さに皆さんが改めて気づいてくれると嬉しいなと、本を読み、この記事を書きながら思った次第です。

最後に

上に挙げた内容以外にも、箇条書きの最後に「。」を付けるかどうかについてであったりとか、プレゼン資料における箇条書きの最大数であったりとか、細かいテクニック等も含めてその日から早速使えそうな内容が盛りだくさんでした。
内容的にも読みやすく、仕様書やプレゼンだけに限らず一般的な「文書」もしくは「文章」を書くにあたって非常に役立つ一冊です。
是非興味を持ってくれた方は読んでみてください。

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