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不耕起水田の生き物たち


 いきなり耕すのをやめると、驚くようなことが次々と起こります。トンボやタニシ、藻などが爆発的に発生し、「生き物がいっぱい!」と嬉しくなります。それまで、生物相の乏しかった田んぼに何かの種が放たれると繁殖し放題の状態になるのでしょう。何年かすると、一見静かさを取り戻したように見えます。よく調べてみると特定の種の数は減りますが、生き物の種類が増えていることに気づきます。これが、食物連鎖の上に成り立った、生き物たちの絶妙なバランスなのだと思います。


 このような世界では、「害虫」の存在も生物多様性の一部であることが、実感できます。耕すのをやめ生物多様性を実現し、殺虫剤がいらないと言えるまでには、数年の年月が必要なようです。


植物プランクトン 植物プランクトンが田んぼの生物多様性の出発点です。多くの生きもの達にエサや酸素を供給してくれます。顕微鏡で観察するのに、大した苦労や特別な道具はいりません。普通に田んぼの水を汲み取るだけで、たくさん見えます。








藻類 不耕起水田の大きな特徴は、藻類が大発生することです。10aの田んぼに何トンも発生し、不耕起水田の力の源になります。サヤミドロ・アミミドロなど種類も数え切れません。藻類が発生する大量の酸素は、多くの生きものを育む力となります。





動物プランクトン 不耕起水田のミジンコの多さには驚かされます。しゃがんで覗き込まなくても、うごめいているのが見えます。手ですくえばご飯のフリカケにできるほどです。他の動物プランクトンで写真の撮影に成功したのはあまり種類が多くありません。何せ激しく動き回りますから。







エビと呼ばれる生き物 田んぼを象徴する生きものといえば、カイエビ・ホウネンエビ・カブトエビです。これらには地域性があるようで、農家の方に尋ねても3つとも知っておられる方は少ないようです。特にカブトエビは、移植しても育たないという話を聞きました。




貝類 タニシもそうですが、モノアラガイの多さはこの上ありません。特に水口では藻類にひっついて重なり合うようになっています。刈り取りの後を歩くとパリパリと音を立てます。




アカムシ・イトミミズ アカムシやイトミミズは土を食べて糞を田んぼの表面に排泄します。冬季湛水水田ではこのトロトロ層が数㎝にもなるそうです。雑草の発芽を抑え、稲の肥料になるこのトロトロ層が今注目を集めています。




昆虫の幼虫 ガムシなどの幼虫です。自分より大きなオタマジャクシに噛み付いている姿をよく見ます。




水生昆虫 ガムシやゲンゴロウが田んぼの中を泳いでいるのを見ると、何かホッとします。希少種のコオイムシやタガメを見かけると、自然はまだ生きていると実感できます。







昆虫 バッタやイナゴがイネの葉をバリバリと食べていると、この野郎と思いますが、害虫を食べてくれる虫も沢山います。トンボが群れて飛ぶのを見ると、刈り取りが近づいているという季節感を感じます。











クモ類 8月にもなると多くの虫達が田んぼから飛び出してきます。昔から農家はクモを大切にしてきました。害虫を食べてくれるムシの中の一つですから。農薬を使うようになって数が減りましたが、クモがいなくなったら害虫は増え放題になってしまいます。











チョウの幼虫 大きな体で稲の葉を沢山食べてしまうのでしょう。しかし、稲もまた食物連鎖の中の一つです。食べられるよりも生きもの達からの恩恵の方が大きいのです。食物連鎖の中のどれか一つでも欠けてしまったら、鎖はつながらないのでしょう。





鳥類 田んぼにおける食物連鎖の頂点が鳥類です。エサの多い田んぼには鳥達が多く集まります。中干しをしない不耕起水田では、生命が途絶えることがありません。カモの夫婦も稲の中で安心して子育てをし、8月には子ども達と共に飛び立ちます。写真には撮れませんが、ツバメが多く集まるのも不耕起水田の特徴です。低空飛行で不耕起水田の上空を旋回し、虫を捕らえるのです。




小動物 シマヘビは畦の中の野ネズミやモグラをねらっています。野ネズミやモグラはミミズを食べています。畦の中にも食物連鎖と生態系があるのです。お陰で畦は穴だらけになりますが。


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