チャンピオンズリーグ22-23 バイエルン・ミュンヘン 考察

大事なものは 勇気 誠実さ 家族

(更新:2022/11/6)
今回はバイエルン。ナーゲルスマン自体をちゃんと見るのが初めてなのだが思ってたんとちゃう。まとめるのが難しい。分からんすぎて参考にとナゲ本買っちゃいました。

最後の章は2021-22シーズンのバイエルンでの適応や迷走について書かれていて今年のバイエルンを追う参考書というか答え合わせになると思います。おすすめです。

サマリー

基本フォーメーションは4-2-3-1。ボール保持での可変がナーゲルスマンの特徴なのだが、バルサ、インテル戦ではオーソドックスな4-2-3-1の位置移動を見せていて相手によって分けていると推測する。

また、複数のフォーメーションを使い分けるのもナーゲルスマン流であるはずだがCLではそれを見せていない。なお本人は今シーズンは慣れ親しんだシステムに回帰することが増えると言っている模様。

[UEFA.COM]
MD1 MD2 MD3 MD4 MD5 MD6
[Sofascore]
MD1 MD2 MD3 MD4 MD5 MD6

考察

1.相手ビルドアップの妨害について

奪取目的のサイド追い込み型プレッシングを振る舞うことが多い。相手ゴールキックからのプレッシングには6枚で対面する。相手の後方パスや深い位置でのビルドアップに対して第一プレスのスイッチが入るようで、誘導後は強度増しでボールを奪いにいく。

ナゲ本によると、前線がスイッチを入れるプレッシングは得意だがDF陣が指示を出しスイッチを促すのは課題とのこと。デリフト獲得の目的がそこにあるのかもしれない。

2.第2ライン防御について

サイドに誘導した後はサイドハーフの二度追いともう一名でボールを奪いにいく形を持つ。センターバックはアタッカーのマンマークに切り替え詰め寄る動きが速い。

ただし奪い取る能力はずば抜けている訳ではない。相手の進行方向から面で迎え撃たないのでボールが跳ね返り進まれる傾向が見られた。強度で誤魔化している感はあるのだがバルサでさえ引っかかるプレスの強さは厄介だ。

構造上、相手がビルドアップフェーズでコンドゥクシオンをしたときにウイング対サイドバックの1v1が生じる。そこを軸に起点にされるのか遅らせることが出来るのかは隠れた注目ポイントだと思われる。

その他、空中戦は無理に競らず相手のミスを誘導してセカンドボールを回収する原則があるようだ。

3.ブロック守備について

ボール保持で圧倒し主導権を握るチームであるがゆえ見ていて悩ましいフェーズである。

バイエルンのチーム構成は後方6人のチームプレイヤーと前線4人の個人主義者をベースに攻守バランスを保つ模様。前線4人はカウンターポジションの意識強めの位置取りを行う。それにより自陣守備は4-3ないし4-2ブロックを形成することが多く、分断が生じているようにも見える(それでも勝てている訳だが)。バルセロナ戦ではさすがに4-4ブロックとなることもあった。

またセンターバックの傾向として、守備ゾーンに入ったボールホルダーへのマークはボールが離れたあとも続く。そのためCB間が空くことがある。

速攻を喰らう場面では逆サイドの選手が中央のカバーに入るためサイドチェンジに弱い面を見せる。

4.ゲーゲンプレスの回避について

カットに合わせて前のターゲットを探していて素早く縦に供給またはコンビネーションを振る舞い相手に即時奪取の機会を与えないことが多い。

気になるのはビルドアップへ移行するときだ。自陣深くで浅慮な横パスからのコンビネーションを始めることがたまに見られる。狭い場面で4v4の状況を作られて先に進めないときがある。

5.ビルドアップについて

戦術的な振る舞いが多彩で面白いフェーズ。

DF陣とアンカーの2-3ビルドアップの形を基本としている。サイドバックの位置が重要と思われる。偽の振る舞い、つまりインサイド位置でボールを受ける動きはバイエルンの特徴だ。

ただしややワイドなままでオーソドックスな4-2-3-1のボール保持の形となる試合も多い。プルゼニ戦とインテル・バルサ戦とでかなり違う笑。右サイドバックのマズラウィに託される戦術タスクでチームが特殊なことをするのか普通に振る舞うのかが分かる。

ゴールキックからのビルドアップはワイドに組み立てる。アンカー役のキミッヒの周囲でもう一人のボランチ(ゴレツカまたはザビッツァー)が出口役となることが多い。

センターバックの運ぶドリブルからの相手の急所を突くパスも原則として仕込まれている。

縦方向の距離感はわりと縮まるようだ。確かにGKからの相手プレッシングをスキップするパスなどわりと通る。縦のパス交換で相手を引き付けてからスイッチを入れる振る舞いもよく見られる。

6.相手中盤の突破について

狭いんですか?広いんですか!?答えは相手によるとしかアタクシには言えない。

主原則はセントラルオーバーロードに特化した内容のようだ。2-3ビルドアップからの流れでインサイドハーフ化する片方のボランチとトップ下。ミドルエリアでの中央集結アタックが面白い。

センターバックとアンカーのビルドアップ隊とゴレツカ+マズラウィの流動的な動きそしてパス交換は相手の同数プレッシングを誘う。その結果、相手はセンターハーフが引き釣り出される。空いたスペースでサネがパスを受けたらもはや決着と言っても過言ではない。ブロックを破壊した上で始まるスピードに乗ったアタックはクリティカルだ。

トップ+トップ下のスルーを交えたコンビネーションも加わるので厄介すぎる。

バイエルンはこのフェーズで前方に効果的なパスを供給する意識が強い。そしてアンカーよりもサイドバックが起点となることが多い。レイオフ、ポストワークを軸に、斜めのパスでアタッカーに当てる。センターサークル付近から大きく縦やサイドチェンジする展開がわりとある。

無理に通さずサイドハーフに当ててビルドアップ隊に一度落とさせキャンセル、落とした後はキミッヒやセンターバックの出番で、トップ下を優先ターゲットとして縦の展開を狙う。

プルゼニ戦では次の振る舞いも。

センターバックが次第に不規則なローテーションを行い始める。そして何の偽なのか分からないマズラウィにはロールの域を超えた流動性があった。持ち上がったセンターバックがパス&ゴーして中央エリアでトライアングルローテーションを突発的に行う不思議さも併せ持つなど。おそらく決勝トーナメントではあまりお目にかかれないと思う。

こんな感じで色々と仕込まれているのだが、中央アタックより副とか副々的な原則と思われるポストワークと、ターゲットとなる4人の個人主義者をミックスさせたサイド変更気味のアタックがバイエルンの強みとなっていそう。ナーゲルスマンが選手側との綱引きをした結果による普通の4-2-3-1可変アタックが単純にえぐい。

ただし弱みもある。パス、キープともにロストは少なくない。ダイレクトでのパス交換は少ないがチャレンジパスのためにキープに時間をかける。そのためかパスの精度が若干落ち気味な印象だ。またキープは罠張りのためコントロールを大きくしているとナゲ本にあった。その影響なのかロストに繋がっている。

7.フィニッシュワークについて

戦術的な振る舞いと、札束で殴る輩が揃っていて羨ましい笑

4人の個人主義アタッカーにチームプレイヤーのゴレツカやアルフォンソ・デイビスを織り交ぜることにより、5トップあるいは1+5での5レーンアタックを形成する。その相互作用が上手く言っているね。と知ったかぶりたくなる。

前線のアタッカーは入れ替わりでマークの攪乱を図ることが多い。ミュラーがセンターフォワード、トップ下、そして右サイドと入れ替わる判断の根拠は何なのか。また、ゴレツカやアルフォンソ・デイビスのハーフスペース突入が目を引く。

マネに預けてのアタックが強力。とりわけカットインからのワンツーアタックは脅威だ。アタックを始める前に味方がスペースを作る動きが面白い。アルフォンソ・デイビスが偽SB位置から大外に流れる動きで生じたライン間スペースにインサイドハーフ化したゴレツカが待ち受けてパス交換をして、試合の流れガン無視でゴールを奪っていた。

トップ下サネを起点とした前線3枚の縦のアタックも圧巻だ。相手MFラインが引きずり出されたスペースでサネが受けたとき、長めのスルーパスを受ける側が斜めの3oLでマネまで届かせる振る舞いは戦術的だ。そこからの速攻、とりわけ誰よりも早くゴール前に入り込むミュラーの判断は感銘を受ける。

リズムチェンジやセントラルオーバーロードからの速攻コンビネーションも得意だ。チーム全体でレイオフ、ポストワークに長けていて、ゴール前でも再現ある形で振る舞われる。ナーゲルスマン流だとレイオフは"シュタイルクラッチ"と言うらしい。

定位置攻撃になるとエリア内で待ち構える人数が多いのが特徴のようだ。一旦アタックをキャンセルしサイドチェンジをしてからの再アタックも備わっているが、そこら辺との関わり方についてはもうちょっと調べてみる。

クロス含め、MF-DF間へのラストパスの意識は高い。

8.トランジションについて

ボール保持フェーズは基本的にゲーゲンプレスに移行できる設計となっている。マネが大外アタックするときのチームプレイヤーたちの予防マーキング意識が高く、片方のセンターバックも高い位置に入りプレスをサポートする。プレスを外された場合でも最悪サイドに誘導させる。

中盤からボランチ背後にチャレンジパスを出すところもゲーゲン設計が仕込まれているとナゲ本には書かれている。

"最小限の幅"と"狭いポジショナルプレー"に必要不可欠なゲーゲンプレスの設計を学ぶのにバイエルンは最適なチームかもしれない。狭くないし。

ただ、敵陣でアタッカーがロストした後のリトリートが遅い。悪癖でもあり逆カウンター狙っているとも言える。結果的に攻守の分断現象が起きて自陣ブロック5枚1ラインで耐える瞬間がある。

その他、カウンターがめっちゃえぐい。どうやら後の先を原則としているらしく、結果的にフィニッシュトライアングルの速攻が成り立つ。

9.セットプレーについて

コーナーキック守備はゾーンとマンツーのミックス。相手がボール周辺にキッカーのみだと10人全員をエリア内に初期配備する。ストーン配置が無さそう。

困ったときのセットプレー。無慈悲である。基本的にはショートコーナーなし、エリア内に6枚、カバー3枚の模様。エリア内は4枚が密集から横並びでゴールに迫り、2枚がリバウンドポジション。

エリア内3枚(ゴール前2、PKマーク付近1)とエリア外4枚でスタートするパターンもあった。

おわりに

バイエルン追うの大変だった笑 なるべくナゲ本に引きずられないように書いたつもりなのでみんなのご意見を聞きたいし本も読んでほしい。

今回バイエルンを追ってみた理由としてはインテルとバルサがいるグループにも関わらず無双していたのと、もしかしたら我が軍にナーゲルスマン要素が入るかもしれないのでお勉強を兼ねてと言った所だった。

ただ、ナーゲルスマン要素と言えそうな中央アタックや可変しまくりみたいなのはバイエルンでは薄目に思える。どうやら昨年やりすぎからの調整を施しているらしい。その結果、普通じゃね?みたいに見えることがよくある。

格を得たナーゲルスマンが調和を求めるのは興味深い。ペップとアンチェロッティを足して割るみたいな。むしろアンチェロッティ寄りに見えなくもない。

強豪ひしめくグループで全勝通過したバイエルンはとても強い。首位通過が決まっていたMD6はWOWOWが実況解説を付けないほどだ。優勝候補と言っていい。

しかし問題もあると思う。前線4人の個人主義者が自陣守備で緩くなるもしくは不在なこと。そしてそれを許容できるセンターバックの理不尽さに物足りなさがあること。そこでトーナメントの怖さが出る気がしている。

今後のナーゲルスマンのリスクマネジメントに注目です。

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