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FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選 Group.G オランダ vs トルコ マッチレビュー

やあみんな!フットボールライフ楽しんでいるかな?

アタクシのワールドカップ欧州予選レビューも第6節に突入。執筆中に10月になってしまったがとにかく9月3連戦の大詰めだ。

まずはオランダ×トルコのビッグゲームからお届け。トルコは予選のはじめにオランダとノルウェーを撃破し首位に位置するものの、下位レート相手に勝ち点を伸ばしきれなかった。そのためオランダが勝利すれば首位が入れ替わる。トルコを引きずりおろすにはここを決戦の地とするしかない。両チームとも連戦のなかこのゲームに照準を合わせてきた感はある。

両チームの前節までのゲーム内容を知りたい方は以下を参考にされたし。

オランダ 4節(vsノルウェー) 5節(vsモンテネグロ)
トルコ 4節(vsモンテネグロ) 5節(vsジブラルタル)

サマリー

読み取れる狙い

(〇上手くいった △半々 ×上手くいかなかった -無し)

【オランダ】

ゲームメイク戦略(ポジショナルプレー志向):〇
ゲームメイク戦略(非ポジショナルプレー志向):ー
カウンター戦略:〇

【トルコ】

ゲームメイク戦略(ポジショナルプレー志向):-
ゲームメイク戦略(非ポジショナルプレー志向):×
カウンター戦略:×

上記の状況になった考えられる理由

ギュネシュがオランダ対策に出した答えはノルウェーが行ったコンパクトな[4-4-2]ボール非保持だった。前節ジブラルタル戦でも同システムを試していたが、ちぐはぐな感は否めなかった。案の定、オランダ相手では1分で失点しプランは崩壊してしまった。ボールホルダーに寄せがちな特性とアンカー非配置が仇となったとも言える。

ファン・ハール体制以後のオランダからするとノルウェー、モンテネグロ戦に続いて同じ策で挑まれた形となる。しかしトルコはコンパクトオーガナイズという意味では先の2チームの劣化版だった。対策万全なポジショナルプレー志向のゲームメイクで前半3得点とトルコをメタり退場者まで出させ、後半も得点を積み重ねた。

気になった選手とその理由

【オランダ】

メンフィス・デパイ (FW FCバルセロナ)

トルコ相手に3ゴール1アシストはえぐい。クラーセンとのコンビは高次元だった。スピードとテクニックを兼ね備え、浮き球のパスやキープにより時間を操ることも可能とかなり優秀。ただその際にボールロストすることがあるのが玉に瑕。

ちょっとアンリっぽく見えてきませんか。

【トルコ】

ソユンク (DF レスター・シティFC)

PKを与えてしまい、後に2枚目警告で退場してしまうセンターバック。どちらもプレミアリーグっぽいレイトタックルで判定止む無しだったが、トルコのボールの奪い方がオランダに全面的に剥がされてツケを払わされたという印象だった。

泣きっ面に蜂イケメソである。

考察 (オランダ主観)

1.相手ビルドアップの妨害について

ゲームプランが崩れたトルコがポゼッションでゲームメイクを行う機会を増やしてくれたおかげで、オランダの守備フェーズの振る舞いをそこそこ伺うことができた。

トルコの[2-2]ビルドに対し[4-5-1]をセットしてからプレッシャーを仕掛けた。CFは平常通り縦ポンをさせる目的の遮断の動きを行う。トルコが縦でなくサイドから繋ぐ展開を見せればマンマーク気味のグループ守備を行い縦ポンを出させる。その際、ボールと逆サイド側のウイングは中央に寄り相手センターバックをマークしていた。キーマンの移動範囲が大きいトルコに対して有効的な守り方だった。

ただし、インサイドハーフのプレスを外されると次のフェーズで不利となっていた。また、リスタートなどワイドにセットしなければならない状況からセンターバックにボールを運ばれると脆さを見せた。

他にはサイドでのプレッシング強度が落ちるとU字パスで回避されていた。その後スライドするも相手CBの持ち運びで守備の基準点がずれやすくなるようだ。

割と脆さも伺えるオランダの1stディフェンスだが、このGグループでは致命的な場面を露呈することはあまりなさそうではある。蛇足だがGKビルドアップや[5-3-2]への対策を見ることが出来なさそうなのも残念である。

2.第2ライン防御について

基本はボールサイドでマンマーク気味の守り方を継続する。アイソレーションにはサイドバックが対応する。ユルマズのサイドや下に降りる振る舞いやチャルハノールとコクチュなどの入れ替わりにはマーク交換をしながらプレッシャーとパスコース遮断で対応する。
トルコは途中から左サイドのカラマンが中央レーンのライン間で受けようとするが、オランダはセンターバックがマークに付いていき、空いたスペースをサイドバック+ウイングがカバーしていた。

気になるのはユルマズのビルドアップ位置まで降りる振る舞いに多少のマークの戸惑いを見せていたのと、30分辺りからワイナルドゥムのマークが緩むことがあったことだ。

ハイプレス時にアンカー脇のスペースを使われるとリトリートする。またモンテネグロ戦でも見せていたが、セカンドボール回収を利用して前進を図ってくると中盤が乱れスペースが生じやすい。ワンツーへの脆さも垣間見た。

3.ブロック守備について

ベースは[4-5-1]ブロックを固める。トルコのサイドハーフの大外のドリブルに対してサイドバックが対面しつつ、デ・ヨングがチャルハノールへのパスコースを遮断しつつヘルプに入る。その際エリア内は3DF+2IHでブロックを形成していた。

トルコのアタックに対して1v1では強さをみせたが、3人で囲むようなグループ守備はあまり相手を止められず上手くいっていない気はした。

4.ゲーゲンプレスの回避について

セカンドボール回収時に寄せてくるゲーゲンに対し、背中キープとバックパスで逃れる。追撃してくるトルコに対してGKへのバックパスは標準装備である。GKからのビルドアップもしくはミドルパスによりトルコの1stディフェンスを剥がしにかかるのがオランダだ。

5.ビルドアップについて

ベースは2CB+アンカー(デ・ヨング)が降りてのボール保持。トルコは1stディフェンスが縦関係ベースの[4-4-2]/[4-2-3-1]をセットしMFへのパスコースを遮断してからサイド誘導目的のプレスを振る舞う。

オランダのビルドアップの目的は、始めのうちはサイドバックを押し上げだったが、トルコが失点を重ねハイプレスを増やすと自陣で相手の中盤を突破するアタックを増やす。オランダはバックパスからGK+2CB+アンカーの菱形ビルドでトルコの1stディフェンスを引き付け、サイドにボールを運びながら前進を狙っていた。

トルコは二度追いから2v1の形成が可能と判断した場合にハイプレスを仕掛けていた。オランダはその際にパスや受け手の体制が悪く捕まることもあり、世界を狙えるレベルと言うには物足りなさを残す。

ちなみに相手を誘うドリブルを振る舞うデ・ヨングとデ・フライを見ているだけで勉強になるというか何か楽しい。

6.相手中盤の突破について

サイドバックがボール保持に絡み、トライアングルを軸としたローテーションや相手の守備の基準点を撹乱する立ち位置でスペースを引き出す攻撃を主とする。
オランダの中盤突破パターンは高さに応じて定位置攻撃にもなるし、速攻にもなるのが特徴だろう。

1点目の基点にもなったビルドアップ隊からの縦/対角ロングフィード。
U字パスでサイドハーフを引き付けたスペースにメンフィス・デパイが降りるポストワーク。(たまに他ポジと被る)
サイドバックが内レーン移動し相手を寄せてのウイングへのボール供給。
トルコのハイプレスをGKビルドからサイドで回避し、逆サイドのIHがトルコCHが空けたスペースで受けて速攻。

そして裏狙いなど、相手を攪乱する振る舞いの多さは流石で、トルコからすれば的を絞って守れなかったことだろう。

7.フィニッシュワークについて

オランダの定位置攻撃はウイング起点から、カットイン、サイドバックのオーバーラップ、インサイドハーフとのコンビネーションなどによりゴールを狙うのがベースだ。

ファン・ハールの志向するサイドアタック通り、逆足配置のウイングからのマイナスクロスで先制。パスを受けたクラーセンがゴール前でヒールのワンツーを選択する可能性など誰に想像できただろうか。

メンフィス・デパイとクラーセンは距離が近すぎてもコンビ良し、離れていても入れ替わり良しとオランダのポジショナルプレー志向を昇華させていた。2点目のコンビネーションはトルコがボールホルダーに寄せてくるのを利用したワンツー突破。天王山と思われた試合を15分で決着させた。

トルコは全体的にパスコース遮断が緩かった。そしてアンカーを配置しなかったためMF-DF間が空くことが多かった。オランダがその隙を見逃す訳が無かった。

多彩なフィニッシュワークを見せたオランダであるが、メンフィス・デパイが流れる動きがウイングやサイドバックとポジションが被ることがありゴール前の枚数が不足していることもある。この移動が良いのかどうかはもう少しレートの高い相手と当たったときに判断しよう。

8.トランジションについて

ファン・ハールのチームが始動してから既に高いレベルにあるサイドでの即時奪取が立ち上がり早々の先制点をもたらした。サイドでのゲーゲンに怪しさを残すトルコのワンツー経路を遮断しショートカウンターから得点を挙げた。

ロングカウンターは始めのうちはトルコのエネルギッシュなリトリートにより不発となるが、トルコを押し下げる意味で効果的だった。10人となり大量失点でトーンダウンした相手に交代出場のマレンが6点目をたたき込み破壊した。

ネガトラではトルコのハイプレスからのショートカウンターに対してもMFが致命的となる中央のパスコースを防ぎ、幾度か難を逃れるのは見事だった。
ただ中央のゲーゲンが怪しいオランダに対し、中央からサイドに回避するのは割と良いトルコ、の展開が何度かあったのでどげんかせんといかん局面となるだろう。

立ち上がりの先制から最後にGKビルドアップをしくじり失点してしまう最後までオランダらしさが溢れんばかりの試合だった。しかしそれはトルコの迷走によるものと言えるだろう。オランダやノルウェーを撃破できるポテンシャルを持ちながら沈没寸前となるのはムラがあると言われるトルコの国民性なのか。切なすぎる。

何はともあれトルコに借りを返し、欧州予選の折り返し時点で首位に立つファン・ハールのオランダ。ワールドカップ出場を大きく手繰り寄せた。残り4節。下位レート相手に取りこぼすことなく最終節のノルウェー戦(H)に臨むことができるか。10月以降も目が離せないのである。

それではご一読ありがとうございました。TanaLifeでした。あなたの心(ハート)に平戸に祈る🙏

試合結果

2021.09.08
FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選 Group.G 
第6/10節 オランダ 6-1 トルコ

【得点者】
オランダ:1' クラーセン 16' 38' (P) 54' メンフィス・デパイ
80' ティル 90' マレン
トルコ:90+2' ウンデル



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