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FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選 Group.G ジブラルタル vs トルコ マッチレビュー

やあみんな!フットボールライフ楽しんでいるかな?

第5節のマッチレビューもこれで最後。今回はグループ6位のジブラルタル対1位のトルコのゲームだ。両チームの前節のゲーム内容を知りたい方は以下を参考にされたし。

どうやらこの試合は、次にオランダ戦が控えているトルコは戦力温存とテスト感が強め。一方のジブラルタルはホームでゴールを挙げることが出来るか、という構図のようだ。

蓋を開けてみるとホームのジブラルタルが漢気を見せトルコを苦しめ、そして儚く力尽きるのであった。

サマリー

読み取れる狙い

(〇上手くいった △半々 ×上手くいかなかった -無し)

【ジブラルタル】

ゲームメイク戦略(ポジショナルプレー志向):-
ゲームメイク戦略(非ポジショナルプレー志向):△
カウンター戦略:△

【トルコ】

ゲームメイク戦略(ポジショナルプレー志向):×
ゲームメイク戦略(非ポジショナルプレー志向):○
カウンター戦略:×

上記の状況になった考えられる理由

序盤はトルコが相手の裏を狙う振る舞いを強めて攻勢に出ていたが、開始早々に得たPK(失敗)の他はさほど決定機に繋がらない。前半はジブラルタルの後方に人を集めたコンパクトな守備を攪乱させるゲームメイクが出来ていなかった。

ジブラルタルはトルコの攻撃に順応すると徐々に巻き返し、幾度かの決定機も生み出した。しかし如何せんグループ攻撃の戦術とスキルに欠けていた。

ジブラルタルに勝機ありとの思いは後半投入されたチャルハノールが杞憂に終わらせる。ボール保持のスキルや、ラインの前や間でフリーになる動きはジブラルタルを攪乱させる。更には味方とのコンビネーションも1つ上のレベルに押し上げ快勝へと導いた。

気になった選手とその理由

【ジブラルタル】

デ・バル (FW ウィコム・ワンダラーズ)

ジブラルタル代表の若きエース。わりと高い攻撃スキルを武器に劣勢のチームをワントップで支えていた。頑張った。

【トルコ】

コクチュ (MF フェイエノールト)

いずれトルコ代表の中心選手になるであろうポテンシャルを秘めたOH。両利きで中盤の全てのポジションをこなせる万能タイプ。名前を覚えておいて損はないだろう。

しかしA代表ではチャルハノールが偉大すぎて陰に隠れてしまっている。今はレジスタ役に専念するのが良さそう。この予選で殻を破ることができるか注目だ。

考察 (オランダ主観)

1.相手ビルドアップの妨害について

ジブラルタルはセット守備に関してある意味システムレスな姿を見せた。

ジブラルタルは基本[5-4-1]であるが、立ち上がりは[4-4-2]とのミックスだった。状況に応じてムエリはCB⇔CH、またヘルナンデスがFW⇔MFへの移動を行う。特にヘルナンデスは中盤の空いたポジションならサイドにも中央にも入る。
1stディフェンスの目的は中央封鎖。トルコの攻撃を外循環させるのが狙いだった。しかし相手ビルドアップ隊の持ち運びに対する設計が不足していた。

トルコに関しては相手がほぼビルドアップを行わないため判断しがたい。このゲームでは[4-4-2]でセットしていたと思われる。対面するボールホルダーにアタックする傾向はやはり強めでグループ性は薄い。

2.第2ライン防御について

ジブラルタルはラトビア戦と同様、ボールホルダーが自分の守備エリアに入ったらアタックを仕掛ける。また外循環させた相手に対応するためボールサイドのセンターハーフが外寄りになる傾向があり、中央にスペースが生まれやすい現象も見られた。
他にもセンターバックの持ち運びや縦ポンにはやはり弱いようだ。

なおトルコが簡単に押し込むものなので、中盤は第2ライン防御というより自ゴール前にバスを停めるブロック守備の一部と化していた。

トルコの人に寄るスタイルは ハマる/ハマらない がはっきりしやすそうだ。つまり欠点も出やすい。例えば相手のSH落ちに対しSBが喰らい付くもカバーの受け渡しができず中盤もろとも突破される場面があった。
相手の引き付ける振る舞いへの対応に難があるのだが、なまじ上位レートのチームなので引いて守る戦略を用いない。あるいは備わっていない可能性がある。

なお[4-4-2]ブロックのトルコは逆サイドのサイドハーフがカウンターポジションを取る傾向が強いのでサイドチェンジを喰らいやすい設計でもあった。

3.ブロック守備について

ジブラルタルは[5-4]ブロックをベースに場合によりサイドハーフが更に降りる設計だ。
マークの受け渡しが雑なため相手の裏狙いのアタックに弱かった。トルコのMF位置からのラインブレイクあるいは定位置攻撃キャンセルからの裏抜けに手を焼いていた。

ただPK(失敗)を奪われた場面以外は致命的となる場面は少なく、3失点はむしろ第2ライン防御のフェーズで書いた欠点から引き起こされたものだった。MF-DF間やサイド→中央で空いたスペースをチャルハノールが見逃すはずはなかった。

トルコはやはりチャレンジ&カバーをベースとしたブロック守備だ。ただジブラルタル戦はアンカーを配置しない[4-4]ブロックなので、CBのカバーは抑え気味だった。そこからサイドが手薄になる構造だった。上位レート相手に通用するシステムとは考え難い。

4.ゲーゲンプレスの回避について

回数は多くなかったが、ジブラルタルでも並行パスからのワンツーで回避できる場面はあった。トルコは人に寄る傾向が仇となり、相手のワンツーを意識した遮断を行わない。チャルハノール然りである。

トルコ側も回数が多いわけでは無かったが、ジブラルタルのセカンドボール回収戦略にイーブンと言った感じか。中央からサイドにはたくのは手慣れているが、サイドでゲーゲンされた場合は難がある模様。

5.ビルドアップについて

ジブラルタルはトルコに押し込まれることが織り込み済みのため縦志向を選択。つまりGKからのロングフィードかカウンターで陣地回復を図る。ビルドアップによるゲームメイクはほとんどなかった。

トルコは[2-2]がベースだ。2CBと2CHで構築し、低い位置ではSBがサポートする形だった。相手の1stプレスが機能しないため、2CBで事足りつつ次のフェーズへと進んでいた。しかしGKを交えたビルドアップは不得意だ。

6.相手中盤の突破について

ジブラルタルはバルの単騎突破、あるいはスローインやセカンドボール回収から前に進むケースが何度かあった。GKからのロングフィードの受け方は設計されており、トリラがターゲットとなり、ヘルナンデスが自陣側で、他の2MFとFWが前線で受け役となる。

トルコはジブラルタルをゴール前でバス停めさせるようにボールを運び、中盤突破をフィニッシュワークと直結させていた。

7.フィニッシュワークについて

ジブラルタルはバルの単騎突破しかないが二度ほど良いシュートを見せた。他にはゾーン3ではロングスローを振る舞うようだ。

トルコはビルドアップ隊からの裏抜けアタックの他、CHを起点にサイドアタックベースの定位置攻撃を仕掛けるが前半は上手くいかない。期待されるコクチュにパウサが足らずスペースや周囲への相互作用を生み出すことができないのが原因だろう。

しかし後半、パウサを操るチャルハノールが機能し始めると、ジブラルタルのMF陣はチャルハノールに関係なくボールホルダーに寄せる傾向が強くなり、MF-DF間に綻びが生じる。そこをポスト役やチャルハノールが受け手として待ち構えるとジブラルタルのブロック守備を容易く破壊した。
そこからのトルコの3得点は流石と言える。

8.トランジションについて

トルコの押し込みに対しジブラルタルは何度かカウンターで押し返すことがあった。守備時にボールが足元に残りつつ奪取できたときは有効なカウンターへと繋がった。

トルコはボール保持の流れでビルドアップ隊だった3名が後方で予防的マーキングの位置取りをすることが多い。即時奪取を剥がされるとジブラルタルにサイドから進まれるためリトリートせざるを得ない状況が発生する。
なお、トルコの即時奪取については相手の受け手を考慮せずボールホルダーに寄るので交わされるケースもあった。

その他、トルコはモンテネグロ戦で見せたようなカウンターを見ることはなかった。

ジブラルタルは上位レートのトルコ相手に押し込まれるものの勇敢、つまり選手がチーム戦略通りに戦えていたので、なかなか見ごたえのある試合だった。

試合を総じると、チャルハノール恐るべし!

というわけで第5節のレビューもようやく完了。最後にモンテネグロ戦に向けたファン・ハールのプレスカンファレンスから学べるものがあるか確認しよう。

ファン・ハールは基本的にはプレスカンファレンスでシステムやスタメンについて話し合うことを拒否するようだ。理由は相手に情報を与えたくないため。しかし今回は少し口を滑らしてしまった模様(笑)

オランダのシステムについては今のところ[1-4-3-3]だと述べる。ファン・ハール自身はブラジルW杯で結果を出した[1-5-3-2]がベストのシステムと捉えている模様。当時は6週間あったが、今はチームを始動させ1週間なので仕込まない。今後チームと話し合うつもりとのこと。

モンテネグロはノルウェーのようにコンパクトな守備重視の戦略で来ることを想定しており、解決すべきこととしてトレーニングを行った。ただモンテネグロの選手は能力が高いのでノルウェーよりワイドにプレーするかもしれないと、ボール保持/非保持いずれを強めようがどちらも準備万端だったようだ。

その他、国際サッカーの傾向として非常にコンパクトで守備的なプレーをすると捉えており、あえてサッカーをして正しいボールスピードを使わなければならないだろう、と考えている。

また、チームとしてのバランスを見つける必要があると述べ、ビルドアップ時のバックの前進の仕方に着手しているようだ。

以下は、動画に無いモンテネグロ戦後のコメント。

最初の20分は良くなかった。以降の70分はずっと良かった。パスの精度が高まり相手を上回った。もっとゴールを決めることができたと思うが、正しいポジションでプレーしていない選手もいた。例えばガクポはもう少し深くプレーすべきだった。それでもこのような守備チームに対して4つの美しいゴールを決めることができたことを嬉しく思う。これは確実に自信に繋がる。

次回いよいよオランダ×トルコ。乞うご期待である。

それではご一読ありがとうございました。TanaLifeでした。あなたの心(ハート)に平戸に祈る🙏

試合結果

2021.09.05
FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選 Group.G
第5/10節 ジブラルタル 0-3 トルコ

【得点者】
トルコ:54' デルビソグル 65' チャルハノール 83' カラマン

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