チャンピオンズリーグ MD1 グループB アトレティコ vs ポルト マッチレビュー
大事なものは 勇気 誠実さ 家族
DAZNでポルトガルリーグが放送されているので見たところポルトに恋しそうです。正確にはポルトの4-◇-2システムへの恋です。
2018年に町田ゼルビアが見せたような圧縮戦術はどのような発展を遂げるべきなのか?の妄想旅の答えがポルトを通して見えそうな気がする。理由はそんなところだが、ポルトには他の4-◇-2使いにはないピーキーさがあって面白かった。
過去形なのは4節の格下リオ・アヴェ戦でピッチコンディション要因により大敗してしまい、その後はおそらく従来スタイルである4-4-2に戻しているからだ。それでもピーキーで面白いので、圧縮マニアや否応なしに応援するクラブが圧縮スタイルを取っているサポーターはポルトをぜひ見てほしい。
そしてチャンピオンズリーグのグループリーグも追うことにした。初戦の相手がかつて圧縮スタイルで名を馳せたアトレティコ・マドリーと言うのはアタクシの中で運命的なものがありそうではある。またアトレティコは圧縮を卒業したチームとしても参考になりそうだ。
サマリー
【得点者】
ATM:エルモソ 90+1' グリーズマン 90+11'
POR:マテウス・ウリベ 90+6' (P)
【退場】
POR:タレミ 81'
考察(ポルト視点)
1.相手ビルドアップの妨害について
ポルトは縦横ともに圧縮された4-4-2もしくはサイドハーフが上がり4-3-3気味のプレッシングで相手に圧を押し付ける。外誘導しボールを奪うのが狙いだが、1stプレッシングでボールを奪おうとする意思も見せる。
アトレティコはウイングバックがトップの高さまで上がり3-4-3の形で試合を組み立て外循環で様子を伺い、後半はアトレティコがトマ・レマルとデ・パウルを入れて2-4や3-1-4の形で圧縮スライドを行うポルトの心を折ろうとする。しかしポルトは全く折れることなく圧縮守備を続け実にタフだった。
2.第2ライン防御について
外循環に対してポルトは逆サイドを放棄してスライドでボールサイドに寄せてくる。アトレティコが大外でボールを受けた場合は3人グループで圧力をかけ侵入を許さない。
ときおり大きなサイドチェンジを喰らうがブロック守備のフェーズで落ち着いて対応する。あとアトレティコは意外にもサイドを変えるロングフィードの精度は高くないので祈れば通らない。後半は通ってしまいネットを揺らされたが祈ったのでオフサイドが取れた。
ジョアン・フェリックスが左サイドハーフ位置に降りる動きがニクい。それに対する巧みにマーク交換をするポルト守備との対決は見物だった。スライドを強要されていないときはポルトが、されているときはアトレティコ側が優勢で、ジョアン・フェリックスの侵入をファウルで抑える場面が幾度もあった。
横圧縮でサイドバックがプレッシング突撃をした場合はセンターバックが大外までスライドしてカバーするのは基本ではあるが、世界レベルの戦いでも見られるとそのピーキーさに心震えるものがある。ボール保持志向へと変貌を遂げつつあるアトレティコだが長所とは言うまでにはいかないので、ポルトのコンパクトに手を焼いてやがて試合は硬直していく。
3.ブロック守備について
ポルトは撤退後の守備でもアトレティコに圧縮を押し付ける。大外から侵入された場合、スライドでピッチの横半分近くまで密集する。ボールサイドでのグループ守備も整っている。サイドの2人がマークを強め、ボランチがセンターバックとの間のスペースをカバーしセンターバックを飛び出させずクロスに備えさせる。逆サイドのサイドバックもほぼゴール中央でクロス対応を行う。
ポルトのブロック守備はDF-MF間が狭いのが特長である。相手がライン間で受けたり縦のワンツーを入れさせないなど、横移動で生じる致命的なスペースに対応することを優先にしていそうだ。ゆえにマイナスクロスや跳ね返り、そしてブロック外の平行パスからのミドルシュートなどは外すのを祈るのみとなる場合がある。終盤に退場者が出て守備の基準点を設定できなくなったポルトはこの形で失点してしまう。
4.ゲーゲンプレスの回避について
基本的にはサイドでの平行パスでゲーゲンの突破を試みるが、アトレティコが即時奪還を振る舞う際はツートップとコケを含む5+1が形成されておりロングボールでの一時的な回避の場面が多かった。
速攻阻止からの速攻返しでサイドバックがそのままドリブルで縦突破して前線とポストワークを図るパターンはらしい振る舞いなのかもしれない。
5.ビルドアップについて
ポルトはセンターバックが左右に開きGK、アンカーとの菱形ビルドアップを基本形としている。サイドハーフがインサイドで上下動し、サイドバックはかなり高い位置を取る。4-4-2と4-◇-2での違いはアンカーのサポートが縦か横かのそのまんまの違いのようだ。
アトレティコによる2+3の超攻撃プレッシングはポルトのビルドアップを効果的に妨害していた。マンマーク気味でロングボールを出させる狙い。逆サイドのウイングバックはボランチ位置によりポルトのサイドハーフ降りを封じていた。
立ち上がりのポルトは基本型を出せず4-2+GKでボールを回してサイドからロングボールを入れざるを得なかった。ただしセカンド回収ができなくともそのままゲーゲンプレスへの移行でアトレティコを押し下げる術を持っていた。
アトレティコがプレッシングを仕掛けない状況のときは基本型ビルドアップからのアタックを開始するが、セットされたアトレティコのブロックを剥がすのは容易ではなかった。
6.相手中盤の突破について
ポゼッションで相手を剥がすよりもカウンターやロングパスによる回避しながらの突破が目立った。ビルドアップに加わるGKからロングボールによるパスも標準として備わっている。GKのディオゴ・コスタは若くしてカシージャスから後継者と指名された逸材のようだ。
ポゼッションに関してはパスの受け手による平行もしくは斜めのサポートが魅力だ。キープで時間を操作し、細かいパスで相手を誘い出し立ち位置の軸をずらした上で瞬間的な2v1を生み出し突破ないしボールを保持する。さらに大小のパスを使い分けるのでアトレティコと言えどボールを奪うのが難しい。ブラジル代表に見られるような平行を重視したグループアタックは圧縮型縦志向とのシナジーも高くハイブリッドなアタックを生み出している。
参考となるので圧縮マニアや否応なしに応援するクラブが圧縮スタイルを取っているサポーターはポルトをぜひ見てほしい。
7.フィニッシュワークについて
アトレティコのビルドアップ奪取またはゲーゲンプレスからのカウンターでシュートまで運ぶシーンを何度か作っていた。良いミドルシュートを放ったカナダ代表のセンターハーフ、ステファン・エウスタキオは覚えておきたい。
ポルトは左サイドからのアタックが多い。ガレーノやタリミはわりと縦突破で無理を通そうとするタイプのようだ。とりわけ4-4-2に戻してからスタメンとなっているガレーノは何代目かのフィーゴの後継者になるのかもしれない。
そこに逆サイドのオタビオがボールサイドまで寄せてボールを受けることもあれば、攻め上りを自重してサイドバックに追い越させてチャンスを生み出す振る舞いが絡むと面白い。車で運ばれるほどの負傷交代をしてしまったのが心配だ。
試合を通してみるとアトレティコのブロック守備は今も強固だったわけで、フィニッシュワークからの決定機はそこまで多くなかった。
8.トランジションについて
圧縮スタイルとトランジションはセットなのは言うまでもない。特に威力を発揮していたのは自陣ビルドアップでの切り替え。
前述したとおりアトレティコのプレッシングが効いていてポルトのボール保持が妨害されることが多かった。それでもいつの間にかポルトの速攻となっている。パス出し後の動き受け手のサポートの動きが密集への移行と繋がっている。その結果、ビルドアップでロストした後にアトレティコに攻撃の時間を与えず、こぼれ球を拾ってカウンターができる。ポルトガル王者が中3日で見せる高強度の振る舞いはとても勇敢だった。
相手陣内からのネガトラ。縦ポンからのゲーゲンはポルト最大の長所であるが、ボールに行く傾向が強くCLの高レート相手となると流石に裏返されることも多いようだ。今後も注目ポイントとなるだろう。
アトレティコのカウンター対応としてジョアン・フェリックスの単騎突撃をリトリートしながら抑えるペペ(ご存じの方)は神がかっていた。圧縮スタイルはとりわけセンターバックがスピードに乗った相手と対面するし、ワイドな可変ビルドアップからのロストも含め一触即発な場面が多く、防ぐために理不尽さが求められるのだが、39歳が世界レベルで応えるとか意味が分からない。
9.セットプレーについて
ポルトのセットプレーはスローインも含めデザインされた形が多く、かなり得点源となっていそうなので今後勉強して分析したいところ。
キックオフもセットプレーの一部。大外右を駆け上がるペペにロングボールを入れてセカンド回収から急襲するデザインを見せた。
ポルトのスローイン守備はワンサイド圧縮。密集のなかの奪い合い、ボールが空中を飛び交う様はアタクシが町田でいつも見ていた光景。母数が少ないのもあり、逆サイドに抜かれることはあまりなかった。
スローイン攻撃ではロングスローを備えている。フェイクからのクロスもあり相手を攪乱させる。
コーナーキック守備はマンマークだった。退場者が出てからはゾーンとのミックスを敷くのだが、ファーで待ち受けていたフリーのグリーズマンに劇的なゴールを決められ沈むことになる。
おわりに
試合は互いの術で相手を消し合うなか、前後半ともに序盤はアトレティコが主導権を握っていた。前半は攻撃的なプレッシングで、後半は大きなサイドチェンジから押し下げられてあわやの場面を作られた。しかし祈りが通じて失点までに至らなかった。ジョアン・フェリックスしか配置で撹乱させることができないのは今後厳しいのでは?
しかしアトレティコの強度が落ち着いてからはポルトが主導権を得る。その握り方はビルドアップでロストしても連続するゲーゲンプレスやハイプレスだった。そこに平行サポートが巧みなグループ攻撃が加わりアトレティコを押し下げるも、アトレティコは最後の部分で流石の硬さを見せていた。
試合が動いたのはタレミのダイブによる退場の後だった。ファーストプレスおよびターゲット役を失った圧縮チームは根性で時間を消費させていくもののアディショナルタイムまで祈りは通じず、シュートの跳ね返りがGKの頭を越してゴールに吸い込まれた。
それでもロングスローのクリア処理でハンドからのPKを得て同点に追いつく幸運も持っていたのだがラストプレーでグリーズマンに漢を見せられて敗れた。
試合には敗れたけど最後まで貫く圧縮+ハイプレスの縦志向をベースに、平行を意識したポゼッション志向が合わさったハイブリッドなスタイルは良かった。圧縮チームが次に進むべき形のひとつと言って良いのではないだろうか。理不尽な強さを見せるセンターバックは必須です。
と言うわけで、今後のポルトに乞うご期待。
ただ、ベンフィカの方が皆さん好みのスタイルでかつ強そうです。
(アトレティコ視点の記事があったのでリンク)
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