ChatGPTとはじめる「人類滅亡会議」
私の好きな作品の一つに、品田遊さんが書かれた「正しい人類滅亡計画 反出生主義をめぐる物語」があります。
この作品を簡単に説明すると、全能の魔王が現れ、10人の人間に人類を滅ぼすか否かを話し合う「人類滅亡会議」をさせる、という物語です。
今回は「ChatGPTでこの人類滅亡会議をシミュレーションさせたらどうなるのか?」という実験を行なってみたいと思います。
「人類滅亡会議」とは?
物語の序章で、人類を滅亡させるために誕生した魔王は「なぜ自分はそんな使命を背負っているのだ?」ということに疑問を持ちます。
その魔王が「人類を滅ぼすべきか、存続させるべきかを当事者である人間同士に決めさせよう」と考え、招集された10人によって行われたのが「人類滅亡会議」になります。
「人類滅亡会議」の各登場人物の主義
作品の序盤で、全能の魔王は人類の命運を決めるために別々の主義を持つ10人の人間を招集します。
本作では各主義についての説明は省かれていましたので、それぞれの主義について簡単にまとめてみました。
あなた自身はどの主義に当てまはるでしょうか?(ちなみに私は懐疑主義でした)
ブルー:悲観主義
「この世界は悪と悲惨に満ちたものだ!」という人生観を指し、このような思考を持つ人物をペシミストと呼ぶこともあります。
悲観主義はしばしばうつ状態に伴って現れ、自分自身・世界・将来についての悲観的考えが支配的になる傾向が強いです。
イエロー:楽観主義
悲観主義とは逆の「この世界は善なるものに満ちたものだ!」という人生観で、このような思考を持つ人物をオプティミストと呼ぶこともあります。
ドイツの哲学者、ライプニッツが唱えた予定調和を主張する最善説が由来であるとされ、哲学的な観点から考えると、プラトンやアウグスティヌスも楽観主義と言えます。
レッド:共同体主義
20世紀後半のアメリカを中心に発展してきた、共同体(コミュニティ)の価値を重んじる政治思想のことを指します。
簡単にいうと、「人間は特定の性質や機能を備え、それゆえに人間に相応しい固有の目的を持つのだ!」という思想です。
パープル:懐疑主義
単なる信念や教義とみなされる知識の主張に疑問を投げかける態度や信念のことを指します。
懐疑主義者は、哲学が誕生した古代ギリシャの時代から現代に至るまで過去の哲学者と格闘した歴史があるとされています。
オレンジ:自由至上主義
「他者の身体や正当に所有された物質的、私的財産を侵害しない限り、各人が望む全ての行動は基本的に自由である」と主張する思想です。
経済的な自由を重視する新自由主義と似ていますが、自由至上主義では個人的な自由をも重んじるという点で異なっています。
グレー:??主義
本書で唯一、何の主義を持っているかが明かされていません。
ここでは言及しませんが、このグレーは作品の大きなキーマンであり、議論の要所要所でのグレーの発言が物語の展開を動かしていきます。
シルバー:相対主義
経験ないし文化の諸要素やその見方が、その他の複数の要素や見方と相互依存関係にあるという主義です。
例として、「背が低い人」というのは「背が高い人」がいなければ想定しえず、この場合に「背が高い人と背が低い人とは相互依存関係にある」と考えるのが相対主義になります。
ゴールド:利己主義
自己の利益を重視し、他者の善行を軽視し無視する考え方で、英語のegoism(エゴイズム)に近い考え方です。
簡単にいうと、ブルーロックの登場人物みたいな感じです。
ホワイト:教典原理主義
ある信条や教義を絶対視し、そこからの逸脱を許さない思想的姿勢を指す宗教の原理主義の一種になります。
キリスト教や仏教、イスラム教などの様々な宗教に原理主義が存在し、宗教間での紛争や対立の温床になることが多いと言われています。
ブラック:反出生主義
本作品の副題にもなっている反出生主義ですが、簡単に言うと「辛いことや苦しいことが多いこの世の中に、新しい命を産み落とすべきではない」と考える主義です。
本書では触れていませんが、反出生主義には「自分は生まれてこない方がよかった」と考える誕生の否定と、「人間は生まれない方がよいので生まない方が良い」と考える出産の否定の2種類があります。
「人類滅亡会議」をChatGPTで再現する
というわけで、実際にChatGPTを用いて「人類滅亡会議」のシミュレーションを行ってみました。
※本作のネタバレを一部含みます。
議論開始
会議の設定は本作に遵守し、以下のプロンプトを用いてシミュレーションをはじめます。
さっそく議論がはじまりました。各参加者が人類を滅亡させるかどうかについての自分の主張を述べています。
面白いことに、各参加者の賛成・反対の意見が本作とほぼ同じ結果になりました。
この後、本作では滅亡賛成派と反対派に分かれて議論を進めていきます。
今回のシミュレーションでもその流れを遵守し、以下のプロンプトによって進めたいと思います。
それでは、議論の結果をみてみましょう。
賛成派と反対派がそれぞれ譲らず、保留派が両者のメリットとデメリットを冷静に評価しています。
一方で、この結論には重大な要素が抜けています。それは、「いつ」「どうやって」人類を滅ぼすのか?という点です。
追加ルール:「いつ」 「どうやって」
本作でも同様の指摘がありましたが、人類滅亡会議の最初のルールには、「いつ」「どうやって」人類を滅ぼすかの指定がありませんでした。
というわけで、本作と同様にこのタイミングで追加ルールを書き加えます。
さて、議論はどうなっていくのでしょうか。
追加ルールを踏まえて、滅亡賛成派であるブルーとブラックが人類滅亡の詳細を語っています。
かなり的確かつ具体的に、滅亡させる時期と手段を挙げていますね。
(ちなみに私をこのChatGPTの回答を読みながら、非常に説得力がある意見だと思ったのと同時に、何か薄寒いものを感じたのを覚えています。)
議論のまとめ
ここまでの議論の結果をまとめましょう。
上記のように、各登場人物が自分の主義に沿った主張をし、滅亡賛成派・反対派・保留派に別れる形になりました。
最終的に、本作で別れた派閥と全く同じ結果になったのが個人的に興味深かったです。(一般的に考えるとこの分け方になるということでしょうか)
また、実際に現実で人類滅亡会議が行われても、各人物が同様の主張をしそうなところに、ChatGPTのシミュレーション能力の高さを感じましたね。
今回はここで終わりにしますが、人類滅亡会議の結末が知りたい方はぜひ本作をご覧ください。
終わりに
先日、孫正義さんが「ChatGPTを壁打ちやディベートの相手にしている」と発言して大きな注目を集めました。
孫さんはこの会見で「ものすごい有益。部下と議論するよりもみていたら面白い、やりだしたら止まらない」とおっしゃっていましたが、今回のシミュレーションを行ってみて私も全く同じ感想を持ちました。
「ChatGPTと一対一で話すことはあっても、ChatGPT同士で議論させたことはない」という方は、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。
今後もこのようなChatGPTを用いた面白いアウトプットを発信していく予定ですので、ぜひともチェックしていただけたら嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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