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美とはなんぞや 川端康成の視点

民藝とか古いものとか、美しい手仕事が好きです。作者が誰とかいうことはあまり気にならないけれど、ハッとするような大胆さや、大らかさを、細やかな仕事の中に見出すと、なんというか、体の血液が沸々と煮立ってくるような、泡立ってくるような感じもしますし、脳内からなにやら分泌されているような気もするのです。

いいなぁ、と思うものにはふた通りあります。買えるものと買えないもの。予算だったり、売り物じゃなかったり。でも、いいなぁと思うだけでも大切なのです、と言い聞かせています。目は良い物を見ることで肥えてくる。それを今更ながらに再確認しています。

先だって、東京ステーションギャラリーに川端康成のコレクションを見に行きました。川端のコレクションに興味を持つようになったのは、銀座にある日本で最初のセレクトショップ「サン・モトヤマ」が所蔵する“お客様”川端康成の写真。商品(腕時計)が陳列する棚を、腰をかがめて目線を揃え凝視する姿に、彼のモノを見る時の気迫を感じたからでした。

川端のコレクションは、ルノワール、ピカソ、マチス、ロダンなどの西洋美術から、親交もあった東山魁夷、渡辺崋山(これすごく良かった)など多様。中でも目玉は浦上玉堂の国宝です。その絵も素晴らしかったのですが、ググッと惹かれたのは土偶でした。そしてその土偶と2ショットで写るポートレートにも強く惹きつけられました。

撮影したのはカナダの写真家ユーサフ・カーシュ。柔和な川端の顔はとても新鮮で、誰が撮影したのか知りたくてギャラリーのキュレーターに問い合わせました。

他にも、李朝の香炉とか、書斎で使われていたらしい染付の灰皿とか、心に残るものはありますが、数日経っても思い出すのはあの土偶。ご機嫌な様子で一緒に写真に収まる川端の気持ちが少しわかる気がします。ノーベル文学賞作家である文豪は、三島も太宰も安吾も彼に敬意を払っていた。その「眼」が何を見て、何を感じたのか。コレクションにはその手がかりがあるように思いました。

「知識も理屈もなく、私はただ見ている」 川端康成

#川端康成 #骨董 #土偶 #ロダン #展覧会





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