「映画かよ。」の解説かよ。 |Ep36 トレインスポッティング|怪優たち
2022.12.17 update
(写真は全て駒谷揚さんから提供)
YouTubeショートドラマシリーズ、「映画かよ。」3シーズン目の第2話、全体で36話目となる「トレインスポッティング」の配信が12月17日に開始される。
Ep36 トレインスポッティング
財布を盗んだスリを追い詰めると、なんとミノル(伊藤武雄)の旧友クボタケ(吉橋航也)だった。7年ぶりに再会したクボタケに話を聞くと、落ちぶれたのは、ミノルと一緒に観た「マッドマックス 怒りのデス・ロード」が原因だと知る。いい映画を観た後の余韻を失うのが怖くて次の映画を観られない、「余韻喪失不安症候群」を解決するため、ミノルとアミ(森衣里)、そして相談を受けたアミの未来の息子、カイル1と2(山下拓朗、神田智史/Ep18、19)も奔走する。現在と未来が交錯するストーリーは、「LOOPER/ルーパー」を彷彿とさせる。
怪優たち
「映画かよ。」の楽しみの一つは、バイプレーヤーたちの存在だ。一癖も二癖もある役柄が多く濃い面々だが、その中でもさらに強烈な印象を放つ怪優たちがいる。例えば山﨑雅志(氏神神父/Ep26)、太田和成(シガー/Ep32)、すがおゆうじ(タイラーD/Ep10、15、28)、もとき(くりす☆ちゃん/Ep23、31)。今回のクボタケを演じる吉橋航也も間違いなく、この「怪優の系譜」に名を連ねるだろう。
劇団東京乾電池の役者というだけあって、演技力とインパクトの確かさがあり、冒頭から吉橋の演技に引き込まれる。さらに、今回はシーズン1、2でもお馴染みの謎の情報屋、スズカ(Ep3、7、9、17、27、31、34)を演じ、やはり「怪優の系譜」に名を連ねる、佐々木しほの存在も相変わらず光っている。前回の「解説かよ。」で、主人公の一人だったオト(谷口亮太)が今シーズン登場しないため、クセの強いバイプレーヤーたちがその穴を埋めると予測したが、早速その流れを予感させる展開となった。
存分に楽しむには…
クリエーターの駒谷揚さんは、自身もそうだが、出演する役者たちが活躍の場を広げる、あわよくばハリウッドからも声がかかるようなシリーズにしたいと当初から語っていた。実際に世界各国の映画祭で上映され、数々の賞を受賞してことで、世界各国の映画好きな観客に対する露出を高めているが、目標達成のためには、映画オタクのみならず、多くの人にこのシリーズを観てもらって、バズらせて話題にしていきたいところだろう。
シリーズ3は、バイプレーヤーたちが見どころ、というのは間違いない。ただ、シーズン1、2からの流れをくむ役も多く、100%楽しむためには、前シーズンを観てほしいところだ。今回のシーズン3のEp35、36だけみると前回以上に、前作からの続きを新作で観せる「クリフハンガー」の要素が強い。これまで観てきたファンに狙いを絞りすぎてはないか、非オタを遠ざけているんじゃないかと感じた。
しかし、駒谷さんいわく、「前のシーズンを見てもらいたいけど、知っていることを前提にすると、単独で楽しめないし、新規開拓できないから、設定やキャラもいちいち毎回説明していて、それが説明セリフになりすぎないように苦労している」とのこと。逆かよ。
なるほど。映画監督としての成功と並んで、「映画オタクの王に俺はなる」と人生の目標を掲げる駒谷揚という人物を知っているだけに、オタクからの共感を得るのはお手のものだが、非オタへのサービスはできるのか、と気を揉んでいたが、どうやら取り越し苦労のようだ。ならば、駒谷さん、いや駒谷の代わりにあえて言おう、シーズン1、シーズン2も観てくださいと。
それが映画への愛なのか(ネタバレあり)
とはいえ、やはり、オタクの熱量が高いのがこのシリーズの魅力。「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の余韻を消したくないクボタケの気持ち、「映画なんて見なくても死なない」という言葉に激しく反応し、「映画なかったら死ぬよね」と叫ぶアミとミノルには共感してしまう。
さらに、クボタケを救うために手に入れた未来の余韻症の薬は、半永久的にどんな映画をみても面白く感じてしまう副作用があると知った二人が、「映画の良し悪しを感じる能力」は捨てたくないと、その薬を捨てるところも、オタクにとっては感動ポイントだ。
一般的な意見に迎合して基準を誰かに決められて生きるのか、酸いも甘いも嚙み分けて、自分にとって本当に大切なものは自分で決めたい。映画への愛とオタクの覚悟がうかがえる。
最後に思わず突っ込む。
「マトリックスかよ」
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