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「映画かよ。」の解説かよ。 Ep51 ペイ・フォワード|レイド・バック・セッション

(写真は全て駒谷揚さんから提供)
 3シーズン目に入っている、駒谷揚制作・監督によるYouTube短編映画シリーズ、「映画かよ。」。Ep51「ペイフォワード」が配信されている。

Ep51「ペイフォワード」

 「ペイ・フォワード(Pay it foward) 」とは、映画「ペイ・フォワード 可能の王国」で、トレバー少年が学校の授業の課題で考えた、世界を変える方法。受けた善意を、別の3人にわたすというもので、簡単なようだが、すんなりと成功せず、映画でも苦労しながら実践する姿が描かれる。

 「映画かよ。」エピソード44「パルプフィクション」でピンチに陥った、映画オタクのミノル(伊藤武雄)が、「ペイ・フォワード」の話を持ち出して、善意の人の助けで危機を脱した。今回は、そのときに受けた善意を誰かにわたすという話。まずは、映画オタク仲間のアミ(森衣里)からの、「借りたVHSを代わりに返す」という願いをかなえることに成功。さらに、エピソード29「パーソナルショッパー」で登場した、起業家のヒバリ(七味まゆ味)のお願いを聞くことになるのだが、そこには妙なトラブルの匂いが漂っている…。

 毎回、いろいろなキャラが登場するのが楽しい「映画かよ。」。今回は、七味まゆ味が好演する、ちゃきちゃきで、面倒見のいい起業家、ヒバリが再登場する。「映画かよ。」のキャラの中でも、ちょっと異質な彼女と、ミノルをはじめレギュラーメンバーを対比で見ていると、あらためて、主要キャラたちは、のんきというか、イージーゴーイングというか、英語でいうと「レイドバック(laid-back)」な人多いことに気づいた。

 監督の駒谷揚さんとは、カリフォルニア・サンフランシスコで学生生活を送っていた際に知り合っているのだが、かの土地、われわれも含めて、穏やかで、常に「まー、なんとか、なんじゃね?」という雰囲気を漂わせている人が多い印象がある。

 カリフォルニア、特にサンフランシスコ近辺のベイエリアは、アジアに近いこともあって、新しいもの、考え、文化が入ってきやすく、異質なものをすんなり受け入れる、あるいは古いものにあまり固執しない気風があるように感じる。ヒッピー文化もここからだし、ヨガや東洋思想のブーム、近年では日本のマンガ、アニメ、ポケモンブームもここから発信されている。

 つまりは、おおらかで、懐が深いというか、視野が広いというか、それ面白いんじゃね? とりあえずやってみたらいいんじゃね? というか、嫌なことは2、3時間後には忘れているというか、物事はなるようになるというか、つまりは、「まー、なんとか、なんじゃね? 」という感じの人間が多くなるわけで、ニューヨークに来てから自分がよく形容されるのが、「レイドバック」という言葉だ。

 逆に、ヒバリは、ニューヨークにいそうなキャラクターだ。移民大国のアメリカの都市はどこも多かれ少なかれ、ほかの国から移り住んでいるきている人がいる。中でもニューヨーク市は、その割合がかなり高く、ほとんどの人がここの生まれではないので、結構助け合いの精神が強い。

 ニューヨーカーに対して、私が、私が、という主張が強すぎて、自分本位で不親切で冷たい、なんてイメージがありそうだが、確かにそういう人もいるけども、それだけの人は、そのうち淘汰されていく。生き残るために、エネルギッシュで、ビジネスの中心地なので、前に前に出てくる人は確かに多いが、だが実は前記したように、自分も助けたられているので、人を助けることを厭わず、面倒見が良く、心根が優しく、人に親切なのが真のニューヨーカー。ヒバリは、そういうイメージに近い気がする。

 今回、彼女とレギュラーメンバーの対比、東海岸キャラと西海岸キャラという要素を見て、これまで「映画かよ。」に出てくる人たちに親近感を持っていたのは、オタクだからということだけでなく、サンフランシスコにいそうー、という要素もあったからなのかと、あらためて思った。

 毎回、無駄に深掘りをしているが、今回、駒谷監督のサンフランシスキャン気質が結構出ているという深層に行き当たってしまった。登場人物たちもそうだが、「映画かよ。」というシリーズ自体、監督の「まー、なんとかなんじゃね?」という気質なしには、これだけの突発的な発想、キャスティング、脚本、撮影が必要な作品は生まれないだろう。まさに、新しいものを生み出す気質なのがよく出ている。

 80年代の学園もの、ジョック(大体が学校のスポーツチームのスターで、無駄に意地悪。主人公にやたら絡んでくる)にナード(冴えないオタクだが、意外な才能を持っていたりする)が立ち向かう映画の雰囲気がシリーズ通して漂っているという話はさらに長くなりそうなので、また別の機会に。

「映画かよ。」のリファレンス

【「映画かよ。」公式YouTubeサイト

「映画かよ。」ウィキペディア

【「映画かよ。」note】

駒谷監督はこんな人↓

駒谷揚監督インタビュー(Danro)

「映画かよ。」に関するレビュー↓

トリッチさんによる
カナリアクロニクル」でのレビュー

Hasecchoさんによる
「映画かよ。批評家Hasecchoが斬る。」
YouTube「映画かよ。」のコミュニティーページで展開

おりょうSNKさんによる
ポッドキャスト「旦那さんとお前さん」











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