がんばったね、えらかったよ

息子が2歳の時の話だ。

3歳になった今でも写真を撮る時など「笑って〜」と言うとしてくれるクシャッとした笑顔がある。
ある日、いつものように保育園に迎えに行くと、息子が出てきて一瞬この”クシャッと笑顔”をしてくれたのだが、直後に顔は崩れ、ワーッと泣き出してしまった。
後ろから出てきた担任の先生が、「玄関で靴がうまく履けなくて、お友達が先に履いて出ちゃったので…」と。
確かに息子より少し先に、息子と仲良しの女の子が出てきていた。息子より4ヶ月ほどおねえさんの、いつも私にもニコニコ寄ってきてくれる可愛い子だ。
つまり、うまく靴を履けなくて先を越されたのが悔しかったらしい。私の負けず嫌いが似てしまったのか。
そんなふうに「負けて悔しい」とか「うまくできなくて悔しい」という感情がいつのまにかできあがっていたのにも驚いたし、何よりあの一瞬のクシャッと笑顔。
おかあさんに向かってがんばって笑おうとしたんだと思うと、胸がギューッとなった。
先生に挨拶をして、抱っこして駐輪場へ行き、しばらくなだめたが息子はなかなか泣き止まなかった。もしかしたら彼の人生ではじめての悔しさだったのかもしれない。
「がんばったね、えらかったよ」
「大丈夫大丈夫、すぐできるようになるんだから」
そう繰り返して、息子の背中をさすりながら私も泣いた。

この時のことは、子育ての記憶の中でも大切なものになるだろうと思う。
いつか息子にも話してあげたい。
いや、どうかな。嫌がるかな。

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