ドリルにAIは必要?

こんにちは。某自治体の教育委員会でICT基盤整備を担当しています。
今回は、ドリルソフトについて考えてみたいと思います。というか、学習者用端末の更新で、ドリルソフトをどうするかという切実な悩みを抱えているので、例によって考えを整理するために書いています。
なお、今回、かなり個人的な見解のため、魔法の言葉を唱えておきます。

個人的な見解であり、所属する組織とは全く関係ありません

といっても、所属を明かしているわけでもないんですが。。。


現状

本市では、学習者用端末・指導者用端末にドリルソフトを導入しています。
が、その活用状況は芳しくありません。厳密には、小学校低学年は比較的使っており、学年が上がるにつれて使用率が低下、中学校はほぼ使っていないという状況になっています。
私は事務屋さんなので、正直、どうしてこういう結果になっているのかなという細かな原因はわからないのですが、いろいろ聞くと、以下のような感じではないかと思います。

  • 低学年は割と授業の空いた時間でドリルをさせている
    そういえば、子の授業参観、低学年だと足し算、引き算にすごく時間を使ってて、「これ逆に退屈しないのかな」って思った記憶があります。
    そういう時にドリルとかしてるのかな、って思いました。

  • 高学年はドリルの内容だけでは、宿題、自習内容として不足がある
    記述解答や証明などはドリルではカバーできずに紙の問題集を使いがちかと思います。

  • 教科ごとの研究会が作成する問題集を…(大人の事情で削除)
    これ、正答率や履修状況を把握できるドリル基盤を作って、問題を県とかの教科研究会とかから提供してもらってお金が落ちる仕組みを作ったら、デジタル化が進むのかな、と思ってた時期もありました。上記のドリルでカバーできる範囲のことを考えると無理かな、と思うようになりましたが。

今後の調達の方針

そういった状況の中で、今後ドリルソフトを全市的に導入すべきかという議論になるんですが、そもそも、ドリルをどのように活用したいのかというのがよく見えない状況です。現状維持はないとして、極端には以下のどちらかに振ると思います。

  • ドリルの全市導入はやめてしまう。学校がそれぞれ、紙、ソフトを好きに選択して導入する

  • ドリルを全市導入し、学習データをとって分析したり、学習者にフィードバックして好刺激を与える。

昨今、教育データの利活用が謳われている中では、後者にした方が良いのだろうなとは、思います。ドリルに限らず、理解度を定量化して、他の要因と関連づけて分析してフィードバックするのが良いとは思うので。

また、ドリルの種類も検討が必要です。

  • AI型のドリルをいれて、学習進度と深度に応じて、子どもそれぞれに個別最適化された学習ができるようにする。

  • 非AI型で、単元の確認テストや宿題、個人が学習内容を振り返るために用いる。

「個別最適」というキーワードをあえて使ってみましたが、文部科学省の「GIGAスクール構想の実現へ」のリーフレットや先日公開された教育振興基本計画、デジタル庁の教育データ利活用ロードマップのいずれをみても、「個別最適」とAIドリルを結びつけた記述はないです。(おそらく、見落としていたら申し訳ないです。)
一方で、AIドリル製品の謳い文句は「個別最適」がよくみられます。よく、ドリル内容から苦手とする単元を割り出し、そこを重点的に強化することにAIを活用していると聞きますが、ドリルの問題内容で単元間の相関関係が見えるのは算数・数学くらいで、あとは国語・英語の文法がわずかに関係するくらいではないでしょうか。記述や論述(証明)の正答判断が自動でできるくらいになり、それに対応した問題が搭載されないとAI型のドリルだけでは個に応じた学習はカバーできないのではと思ってしまいます。
むしろ、単元ごとの解説、問題に対する解説と関連する単元へのリンク、間違った部分の解説ができるような教材ソフトこそ、個に応じた学習には必要になってくるような気がします。

教育DXの観点から

ちなみに、記事を書くためにあらためてデジタル庁の教育データ利活用ロードマップを見ていたのですが、

デジタル庁 教育データ利活用ロードマップより

これ、現状の授業の形から大きく変わるんですが、本当に日常の学びをイメージできているんでしょうか。毎日の教科ごとの時間割(授業時数)に従った授業形態が取れない気がします。
ここに書いていることから日常の学びをイメージすると、

  1. 解説動画・スライドの履修と演習問題、確認テストの状況を学習データとして把握、その状況からAIを用いて履修カリキュラム個別に提示、それに従って知識の習得を行う。進捗状況が思わしくない子は個別にフォロー。

  2. 知識の習得状況から、事前にカリキュラムとして登録した探究的な課題を提示し、計画的に取り組む。

  3. 上記の履修状況から、AIでグループを作成し、協働型の学習を行う。

みたいな感じでしょうか。1の部分の演習問題や確認テストでドリル的なものが関わってくると思うのですが、どちらかというとAIが必要なのはLMS(学習管理)部分だと思います・・・ドリル部分、MEXCBTでいいのでは・・・。LMS部分は国で主導して開発した方が良いと思います。
せっかく、全国のこども1人1人に端末を配布するという他国の人が聞いたら信じてくれないようなことをしてるんですから、いっそのことここまで突き進んでくれればいいのにと思います。

最後に

ということで、大きく話が外れてしまいましたが、ドリルだけに過剰な期待はせずに、こどもたちの個に応じた対応ができる環境をICTだけでなく授業感(ここは指導主事の頑張りどころですが)含め整備できたらと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?