人の顔に著作権があるかもしれない

人の顔は著作権ではなく肖像権で保護される.

そしてこの肖像権は有名人だけのものではなく一般人にも認められている.

肖像権は、日本国憲法第13条に規定される「生命、自由 及び幸福追求に対する国民の権利」の下に保護されている権利.

自分の知らない間に撮影された顔写真がインターネット上に公表されて嫌な気分を味わった.

そんな場合は有名人と同じように肖像権の侵害を理由に写真の削除を求めることができる.

有名人の肖像権と一般人の肖像権の違い

肖像権には、財産権に基づいた側面と人格権に基いた側面とがある.

有名人の顔写真を勝手に商品や宣伝に使うと、肖像権のうち財産権的な側面が問題になる.

人格権に基づいた側面とは、人の精神を逆撫でさせるような行為.

自分の顔写真が勝手に世間に公表されれば精神的に腹が立つ.

財産権に基づいた側面とは、金銭的に損をさせるような行為.

自分の顔写真を勝手に商品や宣伝に使って大儲けしているのに、自分には一銭の見返りもなければ金銭的に損したと思う.

現在は誰でも簡単にインターネットを介して他人の顔写真を世間に公表して他人の肖像権を侵害してしまうと同時に、だれでも簡単に自分の顔写真が世間に公表されて肖像権が侵害されてしまう時代.

人の顔にも著作権

人の顔が著作権ではなく肖像権で保護されている理由.

それは人の顔が創作的に表現されていないから.

人の顔は意図的に創られたものではないというのが理由.

しかし現在では自分の顔を意図的・創作的に表現している人がいる.

顔の創作、つまり顔の整形やメイク.

人体に表現したものだからという理由で顔の著作物性を否定することはできない.

入れ墨著作権事件(東京地判平成23年7月29日 平成21年(ワ)第31755号)では、人体に描いた入れ墨の著作物性を肯定している.

メイクと著作権

顔やヘアスタイルのメイクを施せば人の顔に簡単に創作性をもたせることができる.

ただし顔に著作権が認められると厄介なことが起こる.

自分以外の人にメイクをしてもらうと、顔の著作権はメイクを施した美容師やスタイリストに帰属する.

自分の顔であっても迂闊に外を歩けば公表権の侵害となり、証明写真を撮れば複製権の侵害、メイクを落とせば同一性保持権の侵害.

美容師やスタイリスト、さらには整形した医師から著作権侵害で訴えられる.

実際、ヘアメイクをした後に写真撮影したときの著作権が誰に帰属するのかということを争った裁判がある.

これからの時代、メイクをしたら著作権の譲渡と著作者人格権の不行使の契約をしておいた方がいいかもしれない.

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