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器について

 ベーシックなものが好きだ。デコラティブで奇をてらったものはあまり好きになれない。
 器でいえば、波佐見焼。
 磁器の硬質な美しさだけ。有田焼や九谷焼のような華麗さはない。いや、有田焼も九谷焼も地味なものはあるし、地味なものの中には「欲しい!」と思うものもある。
 でも、自分で使うなら波佐見焼がいい。形も柄もベーシック。

 数日前に、ネオ波佐見焼とでもいうべき器を発見した。
 形はベーシックなのだが、全体に色が施されている。和色の名前がそれぞれ付いていて、薄ピンクや薄紫のような薄色から濃い緑や鮮やかなブルー、そして炭のようなグレーもある。
 これは、あり。
 柄がなく、盛り付けた料理が映えるから。
 でも、自分では使わないかな。カフェするなら、これを使う。私の料理の地味さを補ってくれそうだから。

 有田焼の豆皿が好き。
 大きい平皿も美しいけれど、料理を盛り付けるより飾っておきたくなる。それは私が思う器としての役割から外れているので、なし。
 でも豆皿は、小さいから柄が派手でも気にならないので、あり。
 お醤油を入れる”のぞき”として、箸置きとして、お漬物をちょっと取ってのせる用として持ちたいなと思う。そもそも豆皿の柄の楽しさは、コレクション魂をくすぐる。日常に使うからというよりも、収集癖を満足させるために買い集めてしまいそう。

 私の住んでいる福井県鯖江市には、河和田塗という漆器がある。
 河和田塗を製作販売している漆琳堂が中川政七商店とコラボした「食洗機で洗えるお椀」。入れ子にしてしまえる朱と黒のお椀なのだが、昨年、一番大きいもの(黒)と、その次の大きさのもの(朱)を購入した。
 蒔絵は施されておらず、ただ単色で塗られている。それが美しい。
 食洗機で使えるくらい堅牢なので、日常使いができる。とはいえ、食べ終わったらすぐに洗わなくてはならない気持ちになるので、毎日は使えない。食べ終わってもだらだらしたとき、あるじゃんか。
 深い色合いで、どんなものを盛り付けても映える。しかも、ごはんをこのお椀に入れると、いつ何時も新米のように輝く。最高。

 器が好きだ。磁器も、漆器も。
 ベーシックな形で、デコラティブじゃないものが好き。料理を盛り付けたときに、料理が主役となるような器が好き。器を引き立てるための料理とならないようなものが好き。
 道具も好き。
 無機的な電動工具も好きだが、手仕事で仕上げられた調理器具はもっと好き。燕三条で工場(こうば)をめぐりたいくらい、好き。人間工学に基づいたのではなく、職人が試行錯誤して作り上げた道具で料理したい。そんな道具が並ぶ台所に立てたら、至福のときをすごせそう。

 好きな道具で、自分がおいしいと思うものを作り、よりおいしく見せてくれる器に盛る。
 それを誰かに「おいしい」と言ってもらえたら。(いや、自分で「おいしい」と言えたら十分だけれども)



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