家具って家の中心だったっけ?
日本の住まい
ちょっと疑問に思うのですが、「家具の存在」です。ほとんどの家のショールームって、部屋や建物の見学じゃなくて、家具の展示会のようになっています。「こんな素敵なソファーを置いて」とか、「ベッドルームにして」とか考えるだけの。でも本来の日本の住宅はそうできなかったのです。
なるべく室内に何も置かないようにしていたのです。寝るときは寝具を出し、起きたら押し入れに布団をしまう。ちゃぶ台があっても食事が終わると畳んでしまう。基本的に“何もない空間”をめざしていました。何かを出しても使い終わると片づけたのです。そう考えると今の家の空間利用には疑問を覚えます。
家具の存在感
ベッドルームはベッドを置いたらその部屋は寝る以外に使えません。ダイニングテーブルを置いたら椅子に座って食べる以外に使えません。せめてみんなでテレビを見たり、宿題したりすることぐらいです。そして現在の「一家団欒」は、みんなで同じ番組を見ることぐらいしか意味しなくなりました。ソファなんか置いたなら、勉強はしづらいし、ゆっくり座っている時間もないからただの「素敵な部屋」にしかなりません。
「ベッドルーム、ダイニングルーム、リビング」などと素敵な名前の付いた家具ばかりがのさばる空間に支配されます。いっそ部屋の住人であるベッドやソファ、ダイニングテーブルやクローゼットから家賃を取りたいぐらいです。だってそれだけのために占有されてしまう空間なのですから。そうやって家賃で計算してみると、家は「自分たちのためのものではなく、単なる家具の住まい」になってしまいます。
多機能な部屋づくり
焼き物やガラスの器が好きで見に行ったのに、そこに盛られているパフェや果物に感動して買ってきてしまうようなものです。付帯する設備は後からでいい。建物自体や部屋自体で選んでほしいと思うのです。
そして今、天然住宅ではベッドを使い終わったら壁に収納できるような、多機能な部屋作りをしたいと進めています。家具は部屋の機能でいい。必要なのは建物空間や空気感そのものだと思うからです。
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以上、天然住宅の田中優コラムを編集しました
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