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【霊魂譚】はじめに

【霊魂譚】はじめに
私の家では、日常的に非日常な話をする。通常、我々生きている人間から隠されているものが身近な存在として扱われ、ネタの一つとして会話に登場している。

内容は、幽霊や未来、過去について。
家のリビングで、くつろいでいるとき。「あ、今そこにおじさん(幽霊)がいたよ。こっち見てたけど、通りすがりだから~」
温泉に入っているとき。「さっきあがった目の前にいたおばさん、透けてたから、あと半年くらいで亡くなる。」
車を運転しているとき。「さっき通り過ぎたところ、事故の現場に故人立ってらっしゃったね。」
あとは、「昔、家でうとうとしてたらさ~、突然草むらの中に自分がいて、武士の恰好した集団にぼこぼこに蹴られたことがあってさ~。なんでこんなところに女がいるんだ!って言いながら蹴られて、そのまま走って行っちゃった。痛くはなかったけど、人違いなら謝ればいいと思わない!?むかつく!!」

などなど、エピソードを挙げればきりがないです。
上記のエピソードは全て母の実体験である。私の母は視える人だ。生まれつきもって生まれた才能だ、と私は思う。

私は霊能力がないので、少しでも上げようと特訓している段階だ。特訓といっても、大したことはしていない。なんとなく、場の雰囲気を感じるようにすること、幽霊の存在を信じること。あと効果的なのは、母に直接霊力を身体に送り込んでもらうこと。手のひらを介して、電気のような冷たいエネルギーが指先から肘、二の腕の裏へとすうっと細く流れてくるから、身体で感じるよう感覚を研ぎ澄ます。

大して霊能力は上がっていないけど、そのような生活を続けて分かったことは、視えない世界がとても豊かで魅力的で、分からないことがたくさんある、ということだ。アンテナが増えたのかもしれない。

私たち生きているものたちの行為は、死者の行為を内包していると思う。母の話を聞いていると、死者の世界と、生きているものたちの2つの世界がパラレルに存在している感覚がある。その境界を曖昧にすることで、肉体をもち生きているということについて改めて考えるきっかけになるのではないかなと思う。幽霊の切実さがただ好きなだけかもしれないけど。。

その一つの取り組みとして、数多くのエピソードを現在の事実の霊魂譚として、書き記していきたい。


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