選択理論

選択戦略

シャッター通りと称されるようになった商店街を挙げるまでも無く「選択なきところに成長なし」、成熟社会におけるマーケティングの4P(4C)とは、

          A 価格で選ぶか?/選ばれるか?

          B 品物で選ぶか?/選ばれるか?

          C 店舗(チャネル)で選ぶか?/選ばれるか?

          D プロモーションで選ぶか?/選ばれるか?

          E それらを複合して選ぶか?/選ばれるか?

ということなので、

「あなたが売りたい商品だけを売り込むことで、選択者から選択権を奪ってはいけない(=売り込んではいけない)。選ばせよ」

と説いた。選択戦略である。

購入はマイナス。選択はプラス

あなたは「売りたい」のかも知れないが、選択者は「買いたい」のではない、選びたいのだ。

当然のことながら、買うには対価が求められる。支払いという行為である。

すなわち、それは財産を失うマイナス行為である。誰だって、財産を失う行為は避けたい。

しかし、選ぶだけなら財産が失われることはない。逆に、楽しみにもなる。

ところが、選び抜いている段階で既に「擬似購入」になるため、ナチュラルに購入へ進むことができ、購入後の不協和も少ない。


分りやすくいえば、選んでいて、つい、

「これ、手に入れたら、イーだろうなあ」

と思い、そして、

「手に入れたいなあ」

と思い、そして「買おう」と判断する。(泥棒は、買わずに、盗む)

選んで買ったものだから、買った後になって、

「ああ、失敗したなあ」

とは後悔しにくい…ということである。これは、高級車も牛丼も同じ。

ならば、あなたが売りたい商品を選ばせるように準備しておいて、

「さあ、どうぞお選び下さい」

と示し、あとは堂々としていれば良い。コメつきバッタよろしく、下げでもの頭をペコペコ下げる必要はない。


「頭を下げるな」と申し上げているのではない。

お買い上げ頂き「ありがたい」「ありがとうございます」と感謝したときに、自然と頭が下がる、感謝できる人間であるよう品性を高めておくことが肝要。

下げでもの頭をペコペコ下げるコメつきバッタになるのと、感謝できる人間であろうと務めるのは、まったく別次元の話である。

選択理論

この選択戦略を体系化しようと、経営者連邦の「機密ファイル」を書いていたところ、偶然にも、選択戦略を裏付ける選択理論なるものがあることが分った。

精神科医のウイリアム・グラッサー博士が提唱する「選択理論」によると…

あなたの行動は、あなた自身が選択した結果であり、人は、

             1 生存
             2 所属
             3 力
             4 自由
             5 楽しみ

という5つの基本的な欲求を満たすために、遺伝子により、すでに、内側から動機付けられているという。

選択理論 10の原則

選択理論には10の原則があり、

  1. 私たちがコントロールできる行動は、自分の行動だけである。

(中略)

  1. 私たちは、遺伝子に組み込まれた5つの欲求によって駆り立てられている。

  2. 私たちは、上質世界に入っているイメージを満足させることによってのみ、欲求を満たすことができる。

  3. 誕生して死を迎えるまでにできることは、行動することである。あらゆる行動は、分離できない4つの構成要素

             1 行為

             2 思考

             3 感情

             4 生理反応
によって成り立っている。

  1. すべての行動は、動詞、あるいは不定詞、動名詞によって表現され、最も認めやすい要素によって呼ばれる。

例えば,私は「落ち込んでいる」ではなく「落ち込む行動をしている」または「落ち込む選択をしている」と表現する原理である。

選択を動詞で表現することが重要である。

  1. すべての全行動は、選択されたものであるが、私たちが直接コントロールできる要素は、自分の行為と思考だけである。

選択戦略の心理学的バックボーン

グラッサー博士の選択理論は、成熟社会における選択者の傾向を見事に体系化している。

たとえば「イメージを満足させる」という選択理論の原則は、拙著にも書いた「シーンを売る」という成熟社会のマーケティングに通ずるものがある。

あなたがビジネスにマーケティングを採り入れているなら、選択をキーワードに考えてみると良い。財布の紐を開くのはイヤだが、選ぶのは好きなのが選択者である。

選択理論のグラッサー博士は、こう続けている。

「選択理論は、全世界のほとんどの人が今まで使ってきた心理学、外的コントロール心理学に、とって換わるものである」

私も拙著に「全てのマーケティングを包括する」と書いたが、心理学とマーケティングの違いはあれども、選択なるキーワードをもとに同じようなことが書いてあるとは奇異なものだと思った。


もちろん、私の選択戦略は、グラッサー博士の選択理論からパクったわけでは断じて無い。

グラッサー博士の選択理論

を見てもらえれば分るが、拙著の出版のほうが早い。(早くて良かった)

心理学者であるグラッサー博士の選択理論を、そのままマーケティングにあてはめるのは乱暴だが、かなり相通ずるものがあると思う。

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