味方が増える戦略を布く-4
ドラッガーやコトラーのマーケティングが普及しない理由-2
もしドラのヒットで、一般的に知名度が高まったドラッガー教授や、
現代マーケティングの第一人者といわれるコトラー教授は、
「企業にとって、最も重要なのは、顧客である」
と論じています。
ところが、企業の99.7%を占める中小企業の経営者は(その一部か?大部分か?わかりませんが)
経営で最も重要なのは、顧客よりも、
・仕入れ先であったり、製造元であったり、
・技術であったり、研究開発であったり、
・社員であったり、人材であったり、
・株主であったり、銀行であったり、
します。
「経営には、顧客以上に、重要な価値がある」
これこそ、ドラッガーやコトラーのマーケティングが普及しない第一の理由であると三回目で述べました。
そして、それは、すべての経営者に一致するものではなく、上記の通り、
「経営者によって、重要な価値は、異なる」
これが、ドラッガーやコトラーのマーケティングが普及しない第二の理由です。
つまり、顧客以上に重要な価値(大切なもの)があり、それは経営者によってバラバラで、
両巨頭が唱えたように「顧客である」と、一義に統一できません。
人は、イワシの頭だろうと、信心だろうと、信じるものに依り動きますから、
「ドラッガーやコトラーは、顧客が第一だって言ってますよ~」
と、泣けど叫べど、それぞれの経営者が重視する価値とは異なる場合、
「違う」
と鎧袖一触。もう先へ進みません。
そりゃそうですよね?経営者それぞれの価値観で経営し、利益を出していますので、
経営価値が顧客でなくても、それはそれで(経営者によって)正しい。
この現実解へ辿り着くまで、マーケティングのアドバイザーとして、十余年の現場経験を要しました。
この事実、おそらく、大学で教える教科書には載っていないでしょう。
ドラッガーやコトラーのマーケティングが普及しない理由-3
これでは、当然、顧客優先(マーケティング)が、社内に浸透するハズもなく、
浸透しないのですから、自ら率先して学んでいる優秀な社員を除き、
ほとんどの社員に、マーケティングは、理解できるハズありません。
「マーケティングってナニ?」
ってナもんです。「そんな学問があるらしい。自分の仕事には関係ないケド」
と理解されませんから、一生懸命、マーケティングに取り組む社員がいれば、
「なにやっとんじゃ」「余計なコトすんな」「ウチにはウチのやり方がある」
と潰される社風になります。
あからさまな邪魔が入らなくても、マーケティングの効果が出ている様子を見、
「アンタらばっかり、ずるい」
と嫉妬されることもありますし、
「ウチは特別だ。他のやり方ではダメだ」
と、頑なな拒否に遭い、そこでマーケティングは、お終い。
滑稽なのは、長期接触営業戦略を取り入れている営業2課へ、総務部から、
「2課の郵便代が、異常に高いですね。ハガキを使い過ぎです。抑えて下さい」
と(総務部の若き女子社員に)止められる哀しさ(本当)
驚くことに、マーケティングに馴染みのない企業文化ですと、マーケティングに取り組むのが、役員であっても、取締役会で、
「無用の長物」
と横やりが入る始末(上場企業の実話)
社長が旗を振っても、従業員がついてこない例なんて、枚挙に暇がありません。
マーケティングに精通している大企業や、全社を挙げてマーケティングに取り組んでいる中小企業ならばともかく、
マーケティングに馴染みのない企業は、社員がマーケティングをつぶす。
これが、ドラッガーやコトラーのマーケティングが普及しない第三の理由です。
ドラッガーやコトラーのマーケティングが普及しない理由-4
振り返れば、筆者がマーケティングの実務を請け負っていた頃のクライアントは、
マーケティング部門があるクライアント(大企業や中堅企業)か、
もしくは、
広告代理店関係だからこそ、マーケティングの仕事を請け負ってこれたわけで、
それは、マーケティングの価値観を、語らずとも共有できていたからであって、
マーケティングの価値観(顧客が第一)を共有できなければ、マーケティングの理解など、到底おぼつきません。
平たくいえば(ドラッガー教授やコトラー教授の)「顧客の創造」が通じないわけです。
顧客の創造が通じない企業はダメなのか?というと、そうではありません。
その企業の経営者なりの経営価値で売り上げ、利益を出しているのですから。
では、何が問題か?というと、
ドラッガー教授やコトラー教授の定義が 古 い(時代に即さなくなってきた)のです。
ドラッガー教授が、精力的に本を著したのは60年代以降。
日本は高度経済成長の真っ只中。
新幹線が開通し、オリンピックが開かれ、GDPは世界2位、経済成長率は10%を記録。
ここ数年の、バブル真っ最中の、中国のようなものです。
コトラー教授は現在もご活躍中ですが、代表作のマーケティングマネジメントが出版されたのは1967年で、やはり、日本は高度経済成長期。
その後も、マーケティング1.0~3.0へ進化させて来たとはいえ、顧客が中心の根幹は変わらず。
これこの通り、日本も米国も、人口や企業が増え続け、テクノロジーが進化し、交通手段から冷凍技術まで、あらゆる可能性が発達し、
次々と新製品が市場導入できていた頃ならば、ドラッガー教授やコトラー教授の「顧客創造」は通じたのでしょう。
それから50年も時代は移り変わり、無いものはなくなり、顧客を創造するのが難しい時代になりました。
少子高齢化の社会では(顧客の母数が減るのですから)、顧客の維持が精一杯。
そんな中、顧客の創造といっても、ピンと来ないのが現状ではありますまいか。
決定的なのは、インターネットの登場です。
アマゾンに代表されるような流通を変え、価格を比較できるようになり、
四大メディアの一角を占め(広告ではテレビに次いで第二位)
フェイスブックやスマートフォンのような新商品が誕生しました。
商品・価格・流通・プロモーションが変わったのですから、マーケティングが変わったといっていいでしょう。
マーケティングどころか、アラブの春のように、インターネットは、世界情勢まで変えました。
このように、ドラッガーやコトラーのマーケティングが普及しない第四の理由は、
「時代が変わった」
からです。
味方が増える戦略を布く-5へ続く
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?