味方が増える戦略を布く-9

Marketingを直訳すると、市場化(3文字)

「マーケティングとは(商品を)市場化すること」

で、

経営の視点から意訳すると、製販在(3文字)

「マーケティングとは(商品を)製造し、在庫し、販売すること」

でしたが、この意訳だと、プロダクトアウト・マーケティングへ傾く危険性が
ある…

…というところで前回は終わりました。


ちなみに、生産したり、販売する事業は、実業ですから、製販在がMarketingのように意訳してしまうと、

高校野球で有名な早稲田実業学校は、早稲田マーケティング学校になりますし、

マーケターは、実業家ということになりますので、どう見ても、変。

よって、実業や製販在の意味からしてもMarketingを製販在と意訳するわけにはいきません。

では、次なるMarketingの意訳は?

前々号で一週間 + 前号で一週間 = 一生のうち、二週間だけ考えてみませんかということでしたね?

で?考えてみましたか?

Marketingを意訳する材料その弐「歴史的な背景から考える」


未来を知るなら過去を知れ…ということで、ちょっと、歴史的な背景へ寄り道してみましょう。

100年前に米国でマーケティングが誕生するまで、マーケティングの概念は、

・トレード(売買、取引、交換)
や、
・コマース(商業、交易、商学)

だったそうです。要するに、商売のことですな。

そう考えると、Marketingの意訳は「商売でいいじゃん」ということになりますし、


かのコトラー教授も、マーケティングの起源は、日本の越後屋に発すると分析していますので、

商売の二文字が、マーケティングであるかのように意訳することもできますが、

「マーケティングとは、商売のことである」

とすると、商品開発や、技術開発のニュアンスが含まれませんので、

主にマーケティングを取り入れているメーカーの皆さんからしてみれば大反対でしょう(笑)

よって、Marketingの意訳が「商売」は成り立ちません。

売買、取引、交換、商業、交易、商学とは異なる単語が求められます。

Marketingを意訳する材料その参「実務の視点で考える」

では、マーケティングの実務の視点で考えてみましょう。

「マーケティングは、アイデアを出すところから始める」

というウィキペディアの書き込みは、さすがに消えたようですが、
(アイデア・アウトから始めるのは、マーケティングではなく、発明)

現在のウィキペディアに書かれてあるマーケティング・プロセスには、

「マーケティングは、環境の分析から始まり」

とあるように、

「分析から始めるのがマーケティング」

であるかのように解説しているサイトが数多く見受けられます。


おそらく、電通リ○ーチ(現・電通マクロミルイン○イト)のような調査会社にリサーチを外注できる企業へ向けた解説でしょう。

自分で調査しなくてもいい(外注できる)企業でしたら、調査レポートを参考に、分析から始められますが、

調査を外注できなければ、自分で調べる他ありません。

なぜなら(当たり前なことですが)

調査なくして、分析は、あり得ません。

食材なくして、調理が、あり得ないように。

よって、マーケティングは、分析から始まるのではなく、

調査から始まる

のが現実。マーケティングは、リサーチから始まります。


なるほど、調査と分析は、併せて、調査分析のように使われますので、

分析から始めるのがマーケティングであるかのように思われるかも知れません。

そうして、SWOT分析の表を見つめ、

「S(強み)が見つからない」

と悩んだり、3C分析の円を見つめ、

「KSF(成功要因)が見つからない」

と、頭を抱えることになるわけですが、分析のフレームを見つめたって答えは出ません、

足で動いて、目で見て、耳で聞かなくちゃ。それが、調査(リサーチ)です。

分析から始めるのは、リサーチを外注できる企業であって、外注できなければ、
調査分析を一緒くたにせず、時系列で分けて考えることです。

調査と分析は別。

まず、調査ありき。

次に、分析です。

feasibility study(フィージビリティスタディ)


分析後のプロセスも、マーケティングの専門家や、プロによって、さまざまで、

1)分析

2)セグメンテーション

3)ターゲティング

4)ポジショニング

5)マーケティング戦略(4P'sのマーケティングMIX)

と、コトラー教授の唱えたR-STPが、マーケティング・プロセスのように解説しているサイトが多く見受けられます。


なるほど、自動車を作るような、アメリカ型(大量生産・大量販売・大量消費)のマーケティングならば、R-STPになるのかも知れません。

が!

Rは、Research(調査)のRであって、Analysis(分析)のAではないことが一つ。

それと、大量生産で作り出される商品に、一生ものはありませんので、

少量生産・少量消費の時代になると、高価でも一生ものを作り出すヨーロッパ型のブランディングへ傾きます。

これからの日本が、そうですね。人口が減っていますから、一過性の顧客より、一生涯にわたる顧客を大切にする方向性。

マーケティングとブランディングの融合です。

これが、筆者の考える、日本型の(中小企業の)マーケティングです。

(詳しくは、いずれの機会に)


第三に、マーケティングの現場の中で、プロセスを手探りで構築してきた筆者からしてみると、R-STPは、メーカー向きで、非メーカー向きではありません。

既述の通り、分析から始まるのではなく、調査から始まるという実際も、一つ
の理由ですが、

決定的なのは、フィージビリティスタディ ※ が含まれていないことです。

フィージビリティスタディは、マーケティング戦略の中に含まれるという解釈かも知れませんが、

だとしたら、

STPも、マーケティング戦略の中に含まれますので、

わざわざ、STPとマーケティング戦略を、分けて順序立てる必要ありませんね?


Feasibility Studyとは、わかりやすくいえば、

「その商品を売り出せば、ナンボ儲かるんじゃ?」

「それはナゼじゃ?」

という問いに答えるための調査のことで、

悪くいえば(笑)、捕らぬ狸の皮算用のことで、

正確には『事業化の可能性を探る調査』

略して F/S といいます。

その調査報告書(F/Sレポート)を経営陣が見て、進めるか?やめるか?決まる、重要なマーケティング・プロセスで、

これ(F/S)なくして、マーケティングは先へ進みません。

ちなみに、初動のリサーチが、既にプレF/S(予備的実現可能性調査)になっていて、

定量的かつ定性的に充分な調査を行っていれば肌感覚で(暗黙知で)売れるかどうか掴めてくるものです。


とはいえ、売れないと分かっていても、マーケターの利己的な思惑やバイアス(思い込み)で、先へ進んでしまうことも結構ありますケドね(苦笑)

まとめますと、マーケティングは、その商品を市場へ導入して、儲かるように事業化すること。

マーケティングを、一言で意訳するとしたら、事業化の三文字になると筆者は考えました。

直訳は、市場化。

意訳は、事業化。

あなたは、どう意訳しましたか?

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