縮小する市場の大学を維持するマーケティング

私立大学 激減注意報

大学経営が、大変な時代を迎えましたね。

ここ10年で、30もの私立大学(や学部・学科)が無くなりました。1年に3つずつ消えた勢いです。羅列しますと(順不動)

  1. 大阪女子短期大学

  2. 南山大学短期大学部

  3. 京都聖母女学院短期大学

  4. 神奈川大学 大学院法務研究科

  5. 名城大学 大学学校づくり研究科

  6. 静岡大学 法科大学院

  7. 東洋大学 法科大学院

  8. 聖母大学

  9. 福岡国際大学

  10. 聖トマス大学

  11. 神戸夙川学院大学

  12. 駿河台大学法科 大学院

  13. 東京女学館大学

  14. 青森大学 大学院環境科学研究科

  15. 福岡医療福祉大学

  16. 姫路獨協大学 法科大学院法務研究科

  17. 専修大学北海道短期大学

  18. 京都女子大学短期大学部

  19. 東京リーガルマインド大学

  20. 愛知新城大谷大学

  21. 映画専門大学院大学

  22. 神戸ファッション造形大学

  23. 東和大学

  24. 群馬松嶺福祉短期大学

  25. 三重中京大学

  26. 瀬戸内短期大学

  27. 山脇学園短期大学

  28. 秋田県立大学短期大学部

  29. 文化女子大学室蘭短期大学

  30. 高岡短期大学

  31. 萩国際大


ここに載っていませんが、歌手で女優の酒井法子さんが入学して話題になった創造学園大学も、今や、ありません。

これから、もっと閉校します。なぜなら、少子化で、学生の数が足りないからです。

国公立は、二次募集でしのぎ、それでも足りなければ、大学・学部間の併合によって(平成の大合併と同じやり方で)閉校を避けると筆者は見ていますが、

私立大は、約600校のうち、半数ちかい43.2%が定員割れしていますので、これからも、私学は、減り続けること間違いなし。

稼ぐ力と、借りる力は、組織の実力

会社経営だろうと、大学経営だろうと、経営は、カネ(資金)が無くなったらお終いです。


その反対に、カネ(資金)さえあれば、売上金が無くても、やっていけます。

そのカネ(資金)を、企業経営では、稼ぐか?借りるか?してゲットします。

稼ぐか?借りるか?二つしか無いんですね。

これが、大学経営の場合ですと、稼ぐか?もらうか?してゲットします。

・稼ぐ … 学生が払う授業料や受験料

・もらう … 国からの補助金

もらうについては、どれだけ、もらえるか?が、大学の実力。

カネ(資金)集めは、組織の実力です。企業の場合、稼ぐ力と、借りる力です。


いわずもがな、経営戦略は、ヒト(人事)モノ(事業)カネ(財務)を動かす経営者の作戦で、

どう動かすか?は、経営者の判断に委ねられます。

とりわけ、カネ(財務)が最重要で、

・カネ(財務)…売り上げるか?借りるか?して、カネ(資金)を集める

・ヒト(人事)…より稼ぐ人材を増やすために、カネ(資金)を使う

・モノ(事業)…より稼ぐ事業にするために、カネ(資金)を投じる

経営戦略が功を奏せば、経営者は、それなりの報酬を受け取ることができますが、

失敗すれば、資金を出した投資家や銀行から糾弾され、最悪、クビになります。(株主は、経営者を解雇できます)

なので、多くの企業が、財務基盤の強化を、経営戦略に掲げています。

強みの分析(USP/コンピタンス/ケイパビリティ/ベネフィット)

企業経営も、大学経営も、経営戦略は一緒(ヒト・モノ・カネ。カネが最重要)であることは、おわかりになりましたね?

では、あなたが、左前の大学の経営者だったら、どうやって立て直しますか?

もらう(補助金)は、構造的に入り組んでいますので、自力で、何とかできるものではありません。

となると、稼ぐ(学生の数を増やす)しかありませんが、高校生の数は減少中。

そこで、各大学は、社会人コースを設けているわけですが、抜本的な解決には、ほど遠い模様。

その理由は、社会人であれば、わかりますよね?


その他に、マンガ学部、危機管理学部、ワイン科学など、各大学ごとに特色を出しています。

ユニークな売りを提案するUSP(ユニーク・セリング・プロポジション)ですね。

これ(USP)で学生が集まるかどうかの判断は、お任せします。

USPと似て非なるものとしては、コア・コンピタンス (スキルとしての強み)

これを提唱したハメルとプラハラードが、お手本として、液晶技術のシャープを例示したのは、シャープが身売りした今となっては、皮肉なものです.

そのコア・コンピタンスと、似て非なるものとしては、ケイパビリティ(組織としての強み)


コア・コンピタンスの(たとえば、液晶を生産する)技術、特許、工場、設備といった資源に対して、

上手い、効率的、詳しい、速い、後継者を育成できる等の組織の能力です。

・経営資源としての強み = コア・コンピタンス(たとえば、石工の大工道具)

・組織能力としての強み = ケイパビリティ(腕のいい大工さんたちと、棟梁)

と理解しておけば、たとえば、液晶のシャープは、

・液晶を生産する特許や工場がある = コア・コンピタンス

・液晶に詳しい技術者や営業マンが集まっている = ケイパビリティ

二つ合わせての強みであったことが分かります。


シャープの身売りによって、経営は、それ(強み)だけじゃダメなんだという証左にもなりましたが.

そして、ご存じ、ベネフィット(便益)

大学のコア・ベネフィットは、専門的で高度な教育ですから、これを強化するのが正道でしょう。

ノーベル賞の山中教授の講義には、立ち見(!)が出たそうです。

専門的といえば、その道のプロを(客員として)招聘する大学も沢山あります。

客寄せのようにも見えるタレント教授は結構いますが。

次に、機能的便益。


大卒(学士)

中卒や高卒よりも就職しやすい(大卒以上と指定している企業もあり)

教員の免許を取るには、大学の単位が必要

等々でしょうが、これは、何の差別化にもなりません(どこの大学も一緒)

そして、情緒的便益。「東大卒!すげ~」ってやつです。

各大学の強みを見てみると

当然、各大学も「これが当校の強みだ」とサイトに公開していますので、その検索結果をランダムにピックアップしますと、

【日本歯科大学】

2つの歯学部を有する唯一の歯科大。

【東京電機大学】

就職に強い。19学科ある。実験が充実。

【千葉商科大学】

実学・進化・サポート・特長ある教育・アクティブラーニング・社会との連携・キャリア教育・情報基盤・国際交流・教育改革の取組(GP)

【東京富士大学】

GMT企業訪問プログラム。実務IQ。インターンシップ。奨学金・スカラシップ。
TFUアップデート。TFUビジネス研究塾。

【桜美林大学】

プロフェッショナルアーツという総合大学ならではの強み。

だそうです。


各大学が一生懸命に考えたUSPであり、コア・コンピタンスであり、ケイパビリティであり、ベネフィットでしょうから、

これらについて(門外漢は)論評する立場にありませんが、

『神主になるなら國學院』

は分かりやすいですよね。國學院大学は一言も『神主になるなら』とは言っていませんが,

『○○になるなら当校へ』

と訴えている大学は、

「こちとら、専門学校じゃねーんだ」

というプライドがあるためでしょうか?ちょっと調べてみた限り、ありませんでした。

強みを見つける5つ目の方法『覚醒』

ここまで、強みを見つける(見つからないなら作る)方法、

1)USP … ユニークな売り

2)コアコンピタンス … スキルとしての強み

3)ケイパビリティ … 組織としての強み

4)ベネフィット … お客様にとっての便益

を、4つを挙げました。

マーケティング・リサーチで調べ上げても、SWOT分析のS(ストレンクス)が見つからない時は、以上の4つに照らし合わせてみるとよいでしょう。


それでも見つからない時は、覚醒を促すことです。覚醒とは、気づきのこと。

1)その手があったか

2)ありそうで なかった

3)ああ わかる わかる

の3つ。この覚醒は、拙著の処女作に書きましたが、おさらいますと、

社会の求めに応じた価値を届けるのがマーケティングで、社会の求めに応じるには、

1)ニーズ(必要なもの)

2)ウォンツ(欲しがるもの)

以上の2つは、お客様が、何を買いたいか?分かって い る 場合。

以下の2つは、お客様が、何を買いたいか?分かって い な い 場合。

3)シーズ(技術から生まれるもの)

4)アウェイク(気づき)

呼称は「気づき」「覚醒」「アウェイク」なんでも構いませんが、要するに

・まだ誰も気づいていない

それに代価を支払うと言わしめる価値です。


それを見つけるには?

徹底的にリサーチすることです。絶対的な価値(主観)のみならず、相対的な価値(客観)も含め。

アイデアは、リサーチから生まれる

アイデアは、リサーチから生まれます。

翻せば、リサーチなくして、アイデアは生まれません(キッパリ)

では、中小零細大学が、経営を維持するための筆者の案を(徹底的にリサーチしたわけではなく、少々検索しただけなので、粗削りながら)披瀝しましょう。ご笑覧あれ。

・公務員養成学部

を設けます。その名の通り、公務員を養成する学部です。


1~2年で、憲法や自治等の基礎を学び、3~4年で、学科に分かれます。

  • ・警察学科

  • ・防衛学科

  • ・税務学科

  • ・教職員学科

  • ・消防士学科

  • ・国家公務員学科

  • ・地方公務員学科

『公務員になるための学部』ですから、国家試験に通るための学問を集中的
に教授します。

予備校よろしく「国家試験に何人が通ったか?」が、実力のバロメーターになります。


ライバルは東大、防衛大。日大、東海大、国士舘大等のマンモス私大。

学問のみならず、もちろん、現役や退役の公務員を招聘し、体験談を語って頂きます。

職場を見学に行くのも楽しそうですね。自衛隊や警察は過酷そうですが。

公務員になりたいという社会の求めに応じる大学の事業は、親御さんからも支持されるでしょう。

筆者の説く経営戦略(左袒布略)の顧客戦略における間接客です。たとえば、

親「あんた、高校卒業後の進路、決まった?」

子「まだ」

親「なら、公務員学部へ行っときな。気が変わって、民間へ行く気になったとしても、国家試験に受かっときゃいいんだから」

ってナもんです。学費を出すのは親ですからね、

「将を射んと欲すればまず馬を射よ」

です。


もしも、学部を新設できなければ?

・経営学部という大括りではなく、運送会社の経営学(運送経営学科)

・経済学部という大括りではなく、営業部に配属された時の営業学(営業学科)

という具合にセグメンテーションします。

少子化といっても、恐るるなかれ。マーケティングを使えば、まだまだ、起死回生の名案が出てきそうですよ?


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