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発信し続けることで夢を掴む。パデル日本1位『富田一輝』の挑戦

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▲写真:Shunsuke Hirano

1974年にスペインで誕生した「パデル」が、日本へ上陸したのは2013年のことだ。世界的に見れば、競技人口は1,200万人を超え、新興スポーツの中では勢いのあるスポーツといえるだろう。しかし、日本国内の競技人口は、1万5,000人とまだ少ない。

そんなパデルを日本でもっと広めるべく、世界へ飛び立つ男がいる。彼の名前は、富田一輝。パデル歴は2年とまだ浅いものの、瞬く間に日本ランク一位を手にした期待のルーキーだ。

彼は2019年の冬からスペインへ渡り、現地のプロリーグへ挑戦する。数年前までは、会社員だった彼が、なぜプロスポーツ選手として世界へ羽ばたけたのか。その秘訣は、『発信し続けること』にあったという。

今回は、『パデルの魅力』、そして『夢の叶え方』について、富田選手に伺った。

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富田 一輝(とみた かずき)
東京国際大学卒、24歳。
卒業後は一般企業に就職するも、仕事の傍でパデルに心血を注ぐ。
2018年、2019年のパデル日本代表選手。
2019年に日本ランク1位を獲得後、単身本場スペインへ。
※現在ランキングは更新されております。
instagram:padel_tomikazu

パデルの魅力は戦術の幅が広く奥が深いところ。

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パデルの魅力は、戦術の幅が広いことですね。パデルはコートがガラスの壁に囲まれていて、それに跳ね返ったボールも打ち返すことができるんです。様々な角度から飛んでくるボールを、直接打ち返すのか、壁にバウンドさせてから打つのか、自由に戦術を組み立てられる。だからプレースタイルも人によって全く違います。常に「そんな戦術あったんだ」と新しい発見があるのも楽しいんですよね。

そしてパデルにはダブルスしかないので、パートナーのプレーによって自分も柔軟に対応する必要があります。綿密なコミュニケーションを取らなければ勝てない分、うまく息があったプレーができたときは気持ちがいいですね。

あとは、ラリーが続きやすいのも魅力だと思います。やっぱりボールを打ち合うのって楽しいじゃないですか(笑)。

きっかけは友人の誘いから

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学生時代はテニスに打ち込んでいたのですが、社会人になってからは足が遠のいてしまいました。何か新たに打ち込めることはないかと悩んでいた時期に、友人から「一緒にパデルをやらないか」と誘ってもらったんです。

最初は、「ラケットを使うし、コートの雰囲気もテニスと似ているから、すぐに上手くなれるだろう」と思っていました。そしたら勝つどころか、ポイントすら取れなかった(笑)。本当に悔しくて、絶対日本で一番強くなってやる!って思ったんです。

持ち前の「負けず嫌い」と「パートナーとの出会い」で日本一へ

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それからは、週に3日は会社が終わり次第、すぐにコートへ行って練習していましたね。あと本当に恵まれていたのですが、パデルが上手い方から「一緒に組まないか」って誘ってもらえたんです。その方と組んでからは、大会で優勝することも増えていきました。やっぱり上手いパートナーと組むと勉強できるし、良い刺激をもらえるので、成長スピードも各段に早いと思います。今、僕がパデルでここまでこれたのは、彼のおかげですね。

でも、パートナーが上手いだけでは勝てないのがパデルなので、僕もめちゃくちゃ練習しましたよ(笑)。

会社員を続けながらパデル選手としてのキャリアをスタート

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もちろん、パデルだけでなく仕事とも両立させないといけない。その点は本当に苦労しましたね。まず時間とお金が圧倒的に足りなかった。

パデルは、仕事が終わってから練習するので、家に帰る頃には日をまたぎます。それでも次の日は会社へ行って働かなくてはなりませんから。毎日寝不足で疲れもとれない状態でした。

あとパデルってお金がかかるんですよ。国内はパデルコートの数が少ないので、コートのある遠方まで行く必要があります。交通費だけで片道1000円かかる上に、そこにコートの利用料もかかってくるんです。それが週に3日となると、社会人になりたてのお給料ではかなり苦しいですね。

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あと僕の場合は、関西で月に一度開催される大会があるので遠征費として5万円くらい追加でかかってしまう。計算すると、月10万円近くかかってしまうんですよ。本当にきつかったです(笑)。

それでも僕は恵まれていた方だと思います。大会シーンで活躍できるようになってからは、スポンサーがついてくれたので、ラケットをいただけるようになったんです。

パデルのラケットって、新しいモデルだと定価で4万くらいするんですよ。僕のような練習頻度だと、3ヶ月くらいでひびが入って割れちゃう。テニスのように張替えることができないので、まるっと新品を買わなくてはいけないんです。スポンサーになってくださった企業には感謝してもしきれません。

仕事を辞めてスペインへ

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スペインで自分の実力を試したいと思ったのは、パデル仲間の「世界に挑戦してみないか」という言葉でした。それから僕も「世界のトップレベルのなかで戦って、もっと上手くなりたい」と思うようになりました。

でも、いざスペインへ行こうと思っても、ビザもないしスペイン語も話せない、お金もツテもないという状況でした。「でもとりあえず、行ってみるしかないか」と思いました。それまでは、安定志向だったので自分でもびっくりしましたね。人って変われるんだなって(笑)。でも調べても渡航する方法がなかったんです。観光ビザをとるにもお金がないことには始まらない。

諦めずに発信し続ければ手を差し伸べてくれる人が現れる

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どうにもならないので、スペイン語で「仕事ください、パデルができる環境を探しています」ってInstagramに投稿したんですよ。文章だけじゃなくて動画も投稿しました。片言のスペイン語なので、伝わらなくても大丈夫なように字幕もつけて。

そしたら想像以上に多くの人が見てくれました。何十通もメッセージをいただいて、そのなかにorven(オルヴェン)という企業からのメッセージもあったんです。orvenは、「仕事先やパデルをする環境、生活面のサポートをしたいと思っています。君の夢を応援させてくれませんか」と言ってくれて。一気に道が開けたような感覚がしましたね。

自分がやりたいことを、ちゃんと声にして発信するのは本当に大切なんだなと思いました。あのときInstagramに投稿してなかったら、今の僕はいないわけですから。

もちろん、ただ発信すればよいというわけでもありません。できるだけ多くの人に届けられるように、フォロワー数を増やす必要がありました。

尚且つ、自分が届けたい層にちゃんと届かせなくてはいけない。僕の場合は、パデル関係者の目に留まってほしかったので、パデルに関する投稿や、スキルを解説するトリック動画とか、自分にしかできないような内容の発信を続けました。

それぞれ、スペイン語、英語、日本語の字幕もつけて、世界中の人に見つけてもらえるような工夫もしましたね。

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というのもパデルはマイナースポーツなので、ネット上に情報がないんです。だから、海外の人がYouTubeに投稿している数少ない動画を見よう見まねで真似してみるしかない。僕が始めたころなんてパデルの細かいルールすら、ネットに上がっていませんでしたから。

これからパデルがメジャーなスポーツになっていくためには、パデルの正しい情報をしっかり伝えていくメディアが必要なんですよね。そういった面でも、これからは僕が現地で得た情報を世界に向けて発信していきたいと思っています。

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ただ、発信する上で気を付けてほしいのは、みんながみんな応援してくれるわけじゃないということ。時には批判や懐疑的な意見をもらうこともあります。自ら発信することで、今回のようにチャンスをもらえたり、あとに引けなくなって覚悟を決められたりするメリット、批判されるデメリットだってある。それぞれを理解したうえで上手く活用してほしいなと思います。

まずは世界大会で結果を残す。そしていつかパデルをオリンピック種目へ。

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今後の目標としては、WPTというパデルの世界大会があるので、その予選に出ることですね。大きな目標としては、パデルがオリンピックの種目になったときに、日本代表として出場することかな。
あとは6日後にはスペインへ行くので、現地でちゃんとスペイン語を使ってコミュニケーションをとれるようになることと、現地で本場のスペイン料理をおいしく食べることですかね(笑)

取材後記

パデルnoteを始めてから、最初の取材記事ということで、スペインへ渡航する数日前のトミカズ選手にお時間をもらいました!

本当は出発の日に景気付けで公開したかったのですが、力及ばず…。

記事ではまとめていますが、もっとたくさんのことをお話しいただいていて、すごく面白いし応援したくなる人だなぁと改めて感じる取材でした。

今回の記事は友人でライターをしている菊地誠(@yutorizuke)に全面的に協力してもらい実現した記事です。
(ライターお探し中の方、ぜひ彼にお仕事依頼してください。ぶっ飛んでいるところもありますが、めっちゃいい仕事します。)

今後もマイナースポーツ「パデル」を広めるべく、こういった“人”でパデルを紹介する記事を作っていけたらと思いますので、引き続き読んでいただけると幸いです。

そして単身スペインへ挑戦するトミカズ選手も、ぜひ応援していただけたら嬉しいです!

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取材・編集・撮影:菊地誠
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