【書評】マイク デイヴィス『スラムの惑星―都市貧困のグローバル化』
西暦2006年にLAは第一世界のスラムの首都になった。その時点で世界労働人口の三分の一が失業状態にあった。労働過程に組み入れられるのを待望する産業予備軍ー何も持たないルンペン・プロレタリアートーは、経済にも社会にも包摂できない過剰な重荷になっていた。世界的な資本主義の崩壊期がやってきたのだ。
ところが、LAの貧民たちは立ち上がらなかった。騒乱は起こったが、局所的なものにとどまった。巨大スラムこそ革命の発火点になる。CIAもランド研究所もそれを危惧していたのだが、肩すかしとなった。
1030年代のナチは過小評価された。西ヨーロッパの小さな圧力釜が破裂しただけだと世界は思った。当時のドイツも失業とインフレに苦しんでいて、若者たちの前途にはふたつの選択肢しかなかった。多くのものはダサい共産党よりイカした制服のナチを選んだ。
1991年にソ連邦が消滅した時、職なき物たちは闇稼業に走った。バザー経済で金をつかみ取ることが誰しもの目標となった。内乱を革命に転化せよというレーニンのスローガンが甦ることはなかった。プロレタリアートはまたも敗北したのだ。
そしていま、世界は老いた。アメリカにもヨーロッパにも死相が見える。階級闘争は死語になり、世界は命令と専制のサイバー・キャピタリズムに覆われようとしている。誰がこの状況に抗しているのか?継続する闘争はあるのか?
著者のデイヴィスには『要塞都市LA』という別の本もある。その書き出しは次のとおりだ。
「次の千年期のロサンゼルスを見るのにいちばんいいのは、そのありえたかもしれない未来の廃墟から眺めることだ」
スラムの惑星―都市貧困のグローバル化― 単行本 – 2010/5/20
Amazon.co.jp: スラムの惑星―都市貧困のグローバル化― : マイク デイヴィス, 酒井 隆史, 篠原 雅武, 丸山 里美: 本
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