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コロナで大変な時期だからこそ考えたいIR

こんにちは。
株式会社スペースマーケット 財務・IRを担当している田中と申します。

9月に入り、日が落ちると涼しくなることが増えてきており、出来るだけクーラーを付けずに窓を開けて寝たい僕にとっては、絶好の季節が近づいてきています。

ただ、ふとした時に感じる秋の訪れに騙されてはいけません。まだ誰も気づいていないですが、今年も結局10月まで暑いです。季節の変わり目に翻弄されないよう、気を引き締めていきたいと思います。


さて、

スペースマーケットは8月13日、2020年度第2四半期の決算を発表しました。
第2四半期(2020年4月〜6月)は新型コロナウイルスの拡大に伴う、緊急事態宣言がなされた時期であり、それは漏れなく弊社の業績にも大きな影響を与え、決算は厳しい結果となりました。

※弊社の決算内容については、下記をご覧ください。
スペースマーケット IRページ

昨年12月に上場をした弊社にとって、今回の決算のように厳しい結果に直面するのはもちろん初めてであり、IR担当者としては、「このような状況の中でどのように弊社が信じる成長を、投資家の皆様にお伝えすればよいのか」という考えで頭がいっぱいでした。

そこで、個人的にこの機会に"そもそもIRとは何か"という、判断に迷った時に立ち返るべき原点について考えてみたので、思考の整理も兼ねて本記事にまとめていきたいと思います。


そもそもIRとは何か

IRとは"Investor Relations"の略であり、投資家との関係づくりを意味します。

IRでは制度的な開示である決算短信・四半期報告書や 、投資家と直接コミュニケーションを取る場であるIRミーティング決算説明会を通じて自社の業績や事業の状況を投資家に発信していきます。

中でも、ルールに従って作成する必要のある制度的な開示とは異なり、自由度の高い表現で企業の色を出すことのできる"決算説明資料"は、伝えたいメッセージを投資家に届ける絶好の機会です。

制度的な開示である決算短信や、四半期報告書は、主に”過去から現在まで”の情報をまとめたものであるのに対し、決算説明資料は結果をもとにどのように成長していくかという”未来”を表すものとも言われます。

しかし、自由度が高いだけに、どのようなことをどのように伝えれば良いのか悩ましいのも事実です。実際に、IR担当者が決算説明資料を作成する際には、細かい表現の仕方まで考え抜いて、思考錯誤して悩み抜いて作成されていることと思います。

ここからはより具体的に、IR担当が迷った時に拠り所にするべき基本的な考え方について、個人的に整理したものをつらつら書いていきます。


1.IRは株価を上げることが目的じゃない

まず、間違ってはいけないことは、IRは株価を上げることが目的ではないということです。

「とにかく良い情報を開示して株価を上げることができれば、投資家も自社もみんなハッピーじゃん」と思ってしまいがちですが、そんなに単純なものではありません。

IRは株価を上げることが目的ではなく、自社が想定する株価(理論株価)と実際の株価の差を埋めることが目的となります。

自社が想定する株価を考えず、ただ株価を上げるためにIRを行なっていると、適正な評価がなされず、評価が激しく変わったりします。(これをボラティリティが大きくなると言います)

IRは市場に信頼されることが非常に重要です。市場から信頼されることで、株価のボラティリティを抑えられ、結果、資本コストの減少につながり、その後の資金調達に役立つという効果もあります。

そこで得た資金をもとに、さらに大きな利益を上げることで企業価値を向上させ、さらに魅力的な企業となるという良い循環を作用させることが理想です。IRは、投資家とのコミュニケーションにとどまらず、IRを起点として経営を支える効果をもたらすこともあるのです。

市場に信頼されるためにも、まず自社の想定する株価を念頭に置き、そこに織り込んでいるリスク要素や、計算の根拠を明示し、分かりやすくロジカルに投資家へのメッセージを組み立てていくことが重要です。

コロナ禍では、今までにないリスクが顕在化した企業も多いと思いますが、そのリスク要素を投資家が納得する形で説明できていないと、市場の信頼が得られず、最悪の場合資金繰りにまで影響するということもあります。
不安定な状況だからこそ、想定する株価を見極め、正しく説明することが必要で、たとえ一時的に株価が大きく下がる結果になろうとも中長期的には、市場の信頼を得ることを第一に発信をすることが重要であると思います。


2.流動性を意識する

流動性とは株式が市場に出回る数を意味し、要するに"買いたい時に買えるか、売りたい時に売れるか"を表すものとなります。

IRでは、この流動性を意識することも重要です。なぜ流動性が大事なのでしょうか。

IRの考え方には、株価を安定させたいという理由で、短期的に売買を行う個人投資家ではなく、中長期的に株式を保有する機関投資家に株式を購入してもらいたいというものがあります。

しかし、機関投資家は流動性に懸念がある銘柄には投資を行いません。機関投資家にとって"売りたい時に売れない"のは、大きなリスクとなるので、流動性の低い銘柄はそもそも投資対象に入らないのです。

また、流動性が低い場合、"売りたい時に売れない"魅力のない銘柄として、株価がディスカウントをされてしまい、市場での価格が安くなってしまいます。自社が想定する株価と実際の株価に差がある場合には、この流動性ディスカウントが原因の可能性もあります。

このように流動性は、投資家が重視するかなり大事な要素であるため、流動性をつくるための立ち回りをすることもIRにとって重要です。
自社の株式が活発にやりとりされるために、戦略的に積極的に情報を市場に投下をすることも必要なのだと思います。


3.投資家の目線に立つ

IRは株価を上げることが目的ではなく、自社が想定する株価(理論株価)と実際の株価の差を埋めることが目的と書きましたが、なぜ自社が想定する株価と実際の株価はずれるのでしょうか。

会社の成長を考えるともっと株価が高くても良いはずなのに、なかなか株価が上がらないという時には、成長のスピードの考え方や、リスクに対する考え方が自社と投資家とでずれていることが考えられます。

どう成長するかという道筋や理論株価を算定する際に置く変数に、自社と投資家で違いが生じ、自社が想定する株価と実際の株価がずれるのです。

そんな時には、そのずれを擦り合わせるため、IRミーティングなどで機関投資家の考え方を聞くなどし、自社に対してどのような意見が多いか傾向を掴み、納得感を得られるための説明の仕方を考えると良いと思います。

また、その機関投資家がどのような銘柄への投資を好むのかも知っておくことも大事です。
バリュー型(割安な株式に投資することを好む)のか、グロース型(成長性のたかい株式に投資することを好む)のか、CSR活動を重視するのか、IoT銘柄を中心に見ているなど、相手の視点に立つことで、最良のメッセージの伝え方が変わってきます


不安定な状況だからこそIRに向き合う

コロナ禍で不安定な状況だからこそ、誠実に情報を提供することで、市場に信頼され、長期的に応援してもらえる会社になっていくと思います。

また、IRは発信するだけでなく、投資家からの様々な意見を聞くことができる立場でもあるので、その意見をIRにとどまらず、自社の状況や戦略を見直すきっかけとするという目線を持つと、さらに上のIR担当者となれるのではないかと思います。

まだまだ、自分でもできていないことが多いですが、迷った時にはこの記事で書いた考えに立ち返り、より良いIRを模索していきたいです。

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