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フィートとインチの計算にイライラして電卓アプリを作ってしまう話 #2:「かっこよくて使いやすい…ってApple公式アプリじゃん」要件定義と設計

欲しいアプリがある。そしてそのアプリを自分で作ろうと決めた。

よし、作ろう。そうなりゃ実際に作り始めるんでしょ?そう、あのコーディングってやつだ。イメージ的にはプログラマーと名乗る人たちが複数のモニターを駆使してめちゃくちゃ速いスピードでひたすらカチカチして文字を書き込んでいくやつ!何やってるかわからないからカッコいいぜ、まったく。

iOS 向けのアプリを作成する場合は Xcode というエディターを利用するということはわかっている。よし、すぐにこのアプリケーションを起動して書き始めよう…。一応できなくはない。しかし、実際にいきなりコードを書いてみると決まってないことがたくさんあることに気づくだろう。思っていたデザインや機能から追加したり変更したりしたくなる。そしてすぐに手詰まりになる。どうしたものか。

これは調べてみるしかない。もっと効率の良い方法があるはずだ。これまでたくさんのアプリやアプリケーションが世の中に公開されてきた。それらの知識と経験が山ほどあるに違いない。ということでインターネットで軽く調べてみると、アプリを作るには「要件定義」や「設計」というフェーズが必要らしいことに気がついてしまう。

うーんわかりにくい。ということで実体があるものに例えてみよう。例えば建物だ。建物を造る時はこれらの作業は必要だということは明白だ。まずその建物はどのような用途か、そしてそれにはどのような機能が必要か、そしてそれにはどのような部屋が必要かを知らなければならない。これが要件定義にあたる。その後、設計によって建物がデザインされる。建設業の世界にあっては最も有名な部分かもしれない。設計会社や、いわゆる「建築家」と言われるような人が必要な要件を踏まえながら建物をデザインする。それらのフェーズが終わってからやっと建物の施工は行われる。やっとここがコードを書いたりする開発だ。

もちろん建築の世界だっていきなり施工をすることもできるかもしれない。建築家の資格を持っているので個人で適当に家を作っちゃいました、なんて話を聞いたことがある。少し不恰好ではあるものの、最低限の「住む」という機能はあるという代物だ。まあそれも趣はあるし、少し惹かれるものもある。しかし今回のプロジェクトはそうじゃない。正直なところ、洗練されていて多くの人が使いやすいものが欲しい。

この「要件定義」と「設計」は思いっきり頭を使う。アプリの画面や機能のデザインを決めるといった部分はアプリ作成における醍醐味だ。

では少し今回の電卓アプリの画面や機能のデザインについて考えてみよう。人が使いやすい電卓とはどんなものだろうか。幸い多くの人が実体のある電卓を使ったことがあるのではないだろうか。昔から使われてきたし、カシオやシャープといったような有名な会社も販売している。これは一度確認した方がいいだろう。ちょっとインターネットで検索すればヒットする。ちなみにシャープの電卓は以下のようなものだった。

Casio ホームページ: https://www.casio.com/jp/basic-calculators/

見るからに使いやすそうだ。入力内容と結果を表示する場所が上にあり、その下に同じ形のボタンが配列されている。カシオとシャープでは少し配列は異なるようだが、大まかな構成に関しては違いはそこまでない。ひとまずこれを踏襲すべきだろうという考えがすぐに浮かぶ。

いや、でも本当にそうか。最近は先ほど述べたようなあの電卓にお目にかかる機会は少ない気がする。なんなら若い人は使ったことがないなんてことになるのではないだろうか。なぜか。もちろん全てスマホに代替されているからだ。確実に iPhone ユーザーであれば実際の電卓より以下の画面のやつを使ったことがあるだろう。

iPhone 「電卓」の画面デザイン

安心する。これならどんな人でも画面を見れば使い方が分かるし、説明書なんていらない。本当に必要な機能しかついていない。そして画面のデザインがめちゃくちゃまとまっている。形にしても色にしてもほとんど基本的なものしか使われていないのにカッコいい。であればこれを改良した方がいい。

このように少しずつ行ったり来たりしながら進めていくのが良いだろう。ただ、一度立ち止まって考えると、このような「要件定義」とか「設計」とかいうフェーズが本当に必要かという問いもあるかもしれない。なんか仰々しく名付けられているが、今回のプロジェクトのような個人のアプリ制作に必要なのだろうか。

いやいや、やりましょうやりましょう。なんかツウっぽいじゃん。ワインだってみんな訳もわからずクルクル回す。挙げ句の果てに「うーん、そろそろ開いてきたな」なんて言ったりする。形から入って何が悪い。それをやった方が良い、と考えられているような基本的なことは一度やってみて損はない。それが効率的だと考えられているのだから。

そこで、これ以降の有料部分ではこのアプリを作成する上で実際に行なった「要件定義」と「設計」のフェーズについて具体的に記載しよう。大体のアプリ制作の本では、「作り方」にフォーカスが当てられてこのようなことは軽視されてきたように思う。アプリ制作をしたことのない初心者にはわかりづらいからだろうか。しかし、この記事はアプリ制作をしたことがほぼなかった筆者が記載しているのだからそんな人にも分かりやすいだろう。

ちなみにこれは「フィートとインチの計算にイライラして電卓アプリを作ってしまう話の第2話である。第1話は、アプリを作成しようとした着想と、どうやって勉強するかをまとめたものだ。こちらもぜひ読んでほしい。

それでは早速「要件定義」と「設計」を始めよう。


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