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#5-5 3年目の取組―学校教育力向上プログラムの実践⑤

この記事で紹介する内容

手だての成果と課題の確認、改善策の検討と共有―第2回学校教育力向上研修

夏季休業中に実施した第2回向上研は、2つのパートで構成しました。

最初のパートでは、教職大学院から教員を招聘し、ファシリテーションについての講義を受けました。ファシリテーションとは、グループによる活動の際、参加者の発言を促したり、話の流れを整理したり、また、参加者の認識が一致しているかを確認したりすることを通して、相互理解や合意形成、問題解決を支援することです。

この講義を実施した理由はふたつあります。1点目は、改良のポイントで挙げた、新しい知識や技能を学び、習得する機会を提供するための方策として実施しました。2点目は、ファシリテーションを講義内容に選んだ理由にあたるのだが、筆者が第1回向上研の様子を見た限り、発言者に偏りがあったり、合意形成が不十分であったりする様子が散見したため、グループでの活動をより円滑にし、かつ、質の高い議論ができるものにしようと考えたことです。つまり、教員集団の組織化を進展させるための方策として実施しました。

次のパートでは、教員個々の観察とボイスキャッチ・アンケートⅡの結果から、自分たちが考えて打った手だての成果と課題を洗い出し、改善策を考えるというプロセスを踏みました。なお、ひとつめのパートでは、新たな知識、技能を獲得できるように、専門家からの講義を受ける機会を設定しましたが、ふたつめのパートでは、このプロセスの中で保護者の思いや考えに触れることで、気づきを得られるように、保護者アンケート の結果を確認する機会を設けることで、試行的実践で明らかになった課題の克服を目指しました。

このパートは、各学年部に分かれ、以下の手順で進めました。

① 教員個々の観察と、第1回ボイスキャッチ・アンケートⅡの集計結果、生徒が書いた感想、保護者アンケートの結果などから気づいたことの内、成果は赤の付箋に、課題は青の付箋に書く。なお、付箋1枚につき、内容は1つとした。この作業は各自で行い、時間は5分間とした。
② 順番に、付箋に書いた内容を説明しながら、ワーク用のシートであるマデカラシート(以下、Mシート。図1)の「生徒のあらわれ」の欄に貼っていく。他の人の考えを聞いて、思いついたものがあったら、追加しても構わないとする。親和的な内容はグループにしていき、各グループに名前をつけ、Mシートに記入する。グループ同士の関係性が見えれば、それも書き込む。この作業は15分間で行う。
③ 次に、第1回向上研で決めた手だての内、実際に打てたもの、打ったことで得た気づきなどを挙げ合ったあと、Mシート中の「やったこと」と「わかったこと」の欄にそれぞれ記入する。
④ ①~③の内容を踏まえて、第2回向上研以降に取り組むことを検討し、Mシート中の「次にやること(アクションプラン)」欄に記入する。
⑤ 学年部ごとに、①~④を通して話し合ったことやアクションプランにまとめた内容を全体の前で発表、質疑応答をしながら、互いのものを共有する。

図1 マデカラシート

Mシートは、「Y(やったこと)」、「W(わかったこと)」、「T(次にやること)」の3つを明らかにしながら、取組の振り返りを行うフレームワークであるYWT(注1)に基づいて作成しました 。

先述した通り、前年度に実施したボイスシャワー研修では、振り返りのためのフレームワークとしてKPTを採用しました。KPTは、実践を「Keep(継続すること)」と「Problem(改善すること)」に振り分け、それらを踏まえて、「Try(新たに挑戦すること)」を検討していくように、実践自体の改善に重点を置かれています。

一方、YWTは「Y(やったこと)」から「W(わかったこと)」を挙げる、つまり、個人やチームの経験から学びを得ることに重点が置かれています。そのため、このフレームワークに従ってワークショップを進めていくと、自分たちの経験の内省し、内省から得られた学びを概念化するという経験学習が成り立ちやすくなります。

改善策を検証するためのデータの収集―第2回ボイスキャッチ・アンケートⅡ

第2回ボイスキャッチ・アンケートⅡは、第1回と同様の形式で、10月中旬に実施しました。このアンケートの目的は、第1回からの変容を見取ることです。なお、第2回向上研で作成したアクションプランへの意識を再度高めるため、このアンケートを実施する前の10月上旬に、研修だよりに各学年部で検討・決定した質問項目を一覧にまとめ、発行しました。

アンケートは、学級ごとに実施し、時間は15分程度でした。学級担任が回収後、筆者が集計を行い、表とグラフにまとめました。まとめたものは、第3回向上研で配布し、改善策Ⅰの成果と課題を把握し、改善策Ⅱを考えるための資料として活用しました。

#5-6 に続く

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注1 「YWT」は、日本能率協会コンサルティングが提唱したものです。

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