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“In Flanders Fields” 抄訳


訳文

フランドルの野に

フランドルの野に ヒナゲシそよぐ
我らをしる
墓標の狭間に 列をなし
そして空には
ひばりの吶喊とっかん いまだしも
銃火のもとに ほのかに聞こえ

我らはむくろ
ひと日ふた日の前までは
おのが身をもて
朝陽をおぼえ 斜陽に探る
愛し愛され そして今
フランドルの野に 横たわる

従容しょうようとして師旅しりょにつく
かそけし手から
烽火ほうかと為しうる ともしび渡す
我らが願い
けぶと消えれば 安んぜず
フランドルの野に ヒナゲシ咲くも

注釈

吶喊とっかん・・・ここでは突撃時の叫び声
むくろ ・・・死体
従容しょうよう・・・焦らず、ゆうゆうと
師旅しりょ・・・戦争
かそけし・・・かすかで、今にも消えそうな
烽火ほうか・・・のろし
けぶ ・・・けむり

原文

“In Flanders Fields” by John McCrae

In Flanders fields the poppies blow
Between the crosses, row on row,
That mark our place; and in the sky
The larks, still bravely singing, fly
Scarce heard amid the guns below.

We are the Dead. Short days ago
We lived, felt dawn, saw sunset glow,
Loved and were loved, and now we lie,
In Flanders fields.

Take up our quarrel with the foe:
To you from failing hands we throw
The torch; be yours to hold it high.
If ye break faith with us who die
We shall not sleep, though poppies grow
In Flanders fields.

後書き(言い訳)

第一次大戦の休戦発効日である11月11日は、いくつかの参戦各国で"Remembrance Day"「戦没者慰霊日」となっています。
そのうちイギリス、カナダでは退役軍人・戦没者協会への募金者に対してヒナゲシの花飾りが贈られ、身に着ける風習があります(日本では赤い羽根募金を連想してもらうと分かりやすいかと思います)。そのヒナゲシの花飾りの由来とされているのが本詩です。

本記事の注意点としては、相当な意訳をしており、意味よりも語感を優先しています。同じ理由から地名も英語読みのフランダースではなく現地読みのフランドルとしました。

ちなみに本作を扱う際、問題となる三節"Take up…"は通説である「戦い続けよ」的な意味が好ましいように感じます。作成されたとされる1915年時点では厭戦気分の蔓延が疑わしい点、"Take up"のみがシェイクスピアからの引用であるとも考えられない点(引用なら普通は一文ごと持ってくる)、同様に"Take up"のみを古英語として訳す点で合理性が無いと思料します。まあ今回の記事ではどっちつかずの訳に逃げてますが。

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