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産まない選択をした私に、区長は優しかった

授かった赤ちゃんが無頭蓋症の場合、夫婦には産むか産まないか選択肢がある、一応は。

こんな難しい選択、今までの32年の人生でしたことなかった。多分これからもあんまりない。

以前noteに書いたように、私は11w6dで無頭蓋症の赤ちゃんを見送った。人工妊娠中絶したのだ。

答えはないと思いたい

正直、診断された日に「手術する」と判断したのが正しかったのかどうか、わからないし、多分答えは、ない。

お医者さんはおそらく私(妊婦)を迷わせないように、「人工妊娠中絶を勧めます」と言った。産めるオプションについての話はなかった。でも「保険適用外になります」とも加えた。

そう、無頭蓋症の場合、頭蓋骨ができていないこと以外はいたって健康な赤ちゃんだから。手術直前まで、心臓だってめちゃめちゃ元気に動いていた。

亡くなっていないから、保険適用外の中絶手術になるのだ。

倫理上そういう判断になるのは、理解したくないけど理解できる。でも「医師が唯一進める中絶手術」なのに自己負担って、どういうことやねん。

無頭蓋症について、診断された病院ですぐに調べるわけにもいかなかったから、自宅に帰っていろいろ調べた。InstagramもTwitterも検索した。

調べてみると、無頭蓋症と診断された赤ちゃんを産むと決意をしたカップルのニュースがいくつか見つかった。予想をはるかに上回る日数生きた赤ちゃんや、以下のように臓器提供を決意して産んだお母さんの話。

産める(生まれることができる)のに産まない判断をした私に、罪悪感を覚えるしかなかった。

でも、もし産むと決断したとして…

お腹が大きくなるにつれて、周りには当然元気な赤ちゃんが生まれるんだろうと思われるプレッシャー。または説明しなければいけないという苦痛。そしてなにより、数時間しか生きられない赤ちゃんを産む悲しみと、私と旦那が精神的に耐えられるかどうかに、自信が持てなかった。

記事を読んで考えたけど、やっぱり自信が持てなかったし、答えはわからなかった。

保険適用外だからもちろん支援はない

手術費は、コロナの特別給付金10万円 x 2で まかなった。まさかこの給付金を、こんな用途で使うことなるとは思わなかった。時の安倍総理もきっと思ってもみなかっただろう。

だから実際保険適用外で100%自己負担でも、貯蓄からマイナスにならなかった。

でもそういうことではなく、やっぱり保険適用外ということにモヤモヤした。念のため保険会社にも電話したけど、電話に対応した明らかに若そうなオペレーターに無頭蓋症について説明しなければいけなかったし、何度も聞き返されたのが苦痛だった。まぁ、こんな問い合わせ受けたことなんてないよね…。

結局、保険適用外の手術には保険金も出なかった。そりゃそうだ。

区長宛に意見メールを送ったら返事がきた

どうしてもモヤモヤが消せなくて、手術後、何を思ったか住んでいる区の区長宛にメールを送ってみた。

区のホームページを見たら、「区政に対するご意見があれば送ってほしい」と書いてあったから。「私に何かサービスを提供してほしい」という意味ではなく、もしかしたら知られていないこの症状は1/1000の確率で起きること、おそらくこの区にも同じ診断をされている妊婦はたくさんいること、そして手術が保険適用外できっとみんな悩みながら決断しているのではないかという情報も書いておいた。

一週間ほどしたら、担当の区役所職員さんから電話が来た。

電話がくるなんて思ってなかったから、びっくりした。

とても優しい女性の職員さんだった。

最初に私の身体のことを気遣ってくれた。そして、区長宛のメールを対応している職員でも、無頭蓋症について知らなかったこと、今は保険適用外の手術に対して区でできることがなくて申し訳ないこと、最後に妊娠に関する電話相談窓口があることを教えてくれた。

相談窓口のことは知っていたけど、保険のオペレーターに話したように説明しても理解されない悲しみを味わいたくなくて、避けていた。

でも区役所職員さんが電話してくれて、共感してくれただけで心がかなり救われた。何なら、電話しながら「こうやって返事がもらえると思わなかった」と泣いてしまった。区長にまで話が通っているのかはわからないけど、もうどうでもよかった。

私は、だれかに話を聞いてほしかったんだなぁ。

「つらかったね」と言ってもらいたかったんだなぁと思った。

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今回のような診断で、産む産まないが夫婦に委ねられることもある。

どう判断しても、「あの時他の方法を選ぶこともできたのに…」という後悔は必ずやってくると思う。

でも「答えはない」と考えて、時には他人(今回は区役所職員)に助けてもらいながら、前を向くしかないなぁと思った。

もし悩んでいる人がこのnoteを見ていたら、話を聞くだけしかできないかもしれないけど…もし私でよければ相談相手になりたい。なります。

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